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フランスの構造主義文化人類学者、クロード・レヴィ=ストロースの神話分析に関する著作です。
レヴィ=ストロース後期の主著『神話論理』の上梓された後、北部・南部のアメリカ先住民族の神話のヴァリアント(異文)を分析するかたちで、先行する大著の補完を目的に刊行された単巻の著作になります。
内容は主に、タイトルに示されるとおり、北部・南部先住民族神話に登場する『やきもち焼き』を象徴する人物およびエピソード、『土器製作』の物語、また動物のナマケモノやバク、鳥のヨダカ、流星と排便、地底の小人のモチーフをレヴィ=ストロースの変換理論でそれぞれの含意する関係性をあぶり出し、一見支離滅裂に思えるヴァリアント同士の結びつきや神話の有する思考を読解してゆきます。
また、上梓の意図にはフロイトの「エディプスコンプレックス説」への反論が含まれており、終盤において、エディプス~説の引用元であるソフォクレスの戯曲とある別の戯曲を対照させた上でストーリーの構造分析を行い、ソフォクレスの件の戯曲が聴衆の関心と心理を惹くのは、決して『抑圧された母との近親相姦の欲望』の為ではなく、純粋に作品の構造のもつミステリー的展開のためだと断言する。
この分析は、レヴィ=ストロースのフロイト批判の意図を離れて、鋭い文学批評になっています。本書の著者の意図からははずれた読み方になりますが、神話分析で快刀乱麻の如く活躍する『変換』の理論は、小説のアレゴリーの読解装置としてもたいへん優れています。
この著作は間違いなく名著です。(他人の評価の引用になりますが)過去には社会学者の橋爪大三郎さんが書評で本書を絶賛したそうで、橋爪さんの言うとおり、この著作の文章は驚くほど読みやすい。ニューアカ系思想家の文体は読みにくいのが大半なのに、この著作に関してはまったくの別物。
本当に、入門の新書ばりに読みやすいです。
また、学術書に親しんだ人間だけではなく、これからレヴィ=ストロースや構造主義の理論や思想を知りたいひと、また、小説や漫画が好きなひとにも最適な一冊だと言えます。文学批評のための理論装置や、創作のためのモチーフやエピソード、人物関係の実用理論としても十分に役立つはずです。
優れた神話論の専門書として以上に、後期の大著の陰に隠れがちなこの名著はさまざまな示唆を与えてくれる、贅沢な内容の一冊です。
(ちなみに本文で分析されるマチゲンガ族の神話のエピソードは、バルガス=リョサの『密林の語り部』に出てくるものと同じです)