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給料はあなたの価値なのか――賃金と経済にまつわる神話を解く
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日2022/2/10
- ファイルサイズ2.5 MB
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商品の説明
著者について
(Jake Rosenfeld)
ワシントン大学セントルイス教授(社会学)。先進民主主義国における格差について、政治的・経済的な要因を中心に研究している。プリンストン大学で社会学の博士号取得。著書にWhat Unions No Longer Do(Harvard University Press, 2014)がある。《ニューヨーク・タイムズ》《ポリティコ》《ロサンゼルス・タイムズ》などに寄稿している。
川添節子
(かわぞえ・せつこ)
翻訳家。慶應義塾大学法学部卒業。訳書にレヴェック『天体観測に魅せられた人たち』(原書房、2021)、スミス『データは騙る』(早川書房、2019)、グリーソン・ホワイト『バランスシートで読みとく世界経済史』(日経BP、2014)、シルバー『シグナル&ノイズ』(日経BP、2013)ほか。
登録情報
- ASIN : B09RZG8KR1
- 出版社 : みすず書房
- アクセシビリティ : 詳細はこちら
- 発売日 : 2022/2/10
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 2.5 MB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
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- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 384ページ
- Page Flip : 有効
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著者について

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格差是正のために年功序列と職階制の復活を訴える
2022年3月30日に日本でレビュー済みアメリカの賃金は「職務給(パート3)」で決まりと思っていたのだが、それだけでなく「成果主義(パート2)」でもある。著者のローゼンフェルドは、どちらをも否定する。そして、世界一大きいアメリカの賃金格差を縮小するためには、年功序列と職階制の復活を提唱する(第9章)。
ローゼンフェルドの説からすれば、日本はその昔、年功序列と職階制を採用していたために賃金格差が小さかったが、近年はそれらが成果主義の名の下に崩壊する中で格差が拡大したとも解釈できる。格差の拡大は資本主義のせいだと言うばかりで、それ以上の分析がなされない中、本書は企業内の賃金決定プロセスに立ち返り考察されているので、その説には説得力がある。
【賃金決定の4つの要因】
アメリカ人が年功序列と職階制の復活を唱えるのは驚きである。その研究スタイルは、マクロ経済的な上から目線ではなく、賃金決定の現場の観察を重ねるというものである。ローゼンフェルドは、経済の背後に隠れた構造を探したり、市場のメカニズムで説明しようとしたりはしない。あくまでも経済は人間の行いなのであり、人為的な手段によってしか動かないと考えているようだ。
その研究の結果、賃金決定の要因は、権力(power)、慣性(inertia)、模倣(mimicry)、公平性(equity)と結論した。なかでも権力が一番影響力があるとしている(第1章)。「組織の賃金構造は理にかなっていると思わせる能力は、正当な権力の核をなす(p.7)」とあり、面白い指摘である。
この四つをいつも念頭に置いて、以下の章を読むのがよい。考察に供される材料が既知のものであろうとも、賃金決定の4要因がからむと新しい意味が付加され、新鮮な議論が展開される。
【成果主義について】
日本では、能力主義と成果主義は別物と認識されているようだが、本書での成果主義は能力主義を含んでいる。なぜなら、成果主義の論拠としてベックの『人的資本』が挙げられているからである。これは一般に能力主義の論拠ではないだろうか。ただ、成果とは「組織の収入に対する個人の貢献――見込まれるものと実現したもの」とあり(p.16)、見込まれるものは能力にあたるので相違はないということになる。
日本はもともと成果主義的な要素を賃金に組み込んでいたことになるが、年功序列的な要素が本人給や年齢給などに残っている。このことが、ローゼンフェルドの理論からすると幸いしたことになる。
取り上げられる証拠資料はアメリカを中心としたもので、直接の役に立たないかもしれないが、日本の事情に置き換えながら読めば、賃金のこれからを考えるためのヒントが隠されている。
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フェティシズムとしての貨幣を映すものとしての給料
2024年5月5日に日本でレビュー済み論旨は以下の通り①給料は成果や能力が反映されたものであるべきだということを私たちは信じている②しかし、特定の成果や能力を測るのは難しいし、ましてやそれを複合化・属性化させて、厳密な数値化・序列化することはほぼ不可能に近い③結果として私たちは、逆転した形で社会を理解する。すなわち、給料が高いということは、その人はそれにふさわしい成果や能力を出しているのだろう、と④その結果、私たちの社会には不当なまでの社会格差や、給与の高低が許容されることとなる。給与についてオープンに話し合うべきではないという規範は、この状況を強化する。
著者はアメリカの社会学者。そのせいか、あまり左派的な話はしないのだけど、これは基本的にはマルクスのフェティシズム論の延長線上に理解されるべき本だと思う。さらに言えば、この本はグレーバー『ブルシット・ジョブ』のアイディアを、実証的に検討したものとしても読める。今でもインターネットの海を泳げば、容易にカネを稼いでいることで自分の価値を誇る人々(その多くはその発言のバカバカしさに内心気づきながらも、レピュテーション経済の圧に押されているだけのように見えるが)に遭遇することができる。私たちはまさに給与を物神化することで、この社会を生きており、だからこそ肩書やブランドも副次的に物神化されるのである。
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アメリカ給料事情と底辺労働の状況への批判
2022年3月23日に日本でレビュー済み本書は、給料を決める要因とその正当性、それを取り巻く諸問題を扱った本である。
タイトルや記述の雰囲気はかなり一般的な話を書いているように見えるが、アメリカの(特殊な)賃金慣習・労働慣習の話が多めであることには注意が必要である。
「給料はあなたの価値か」という問いそのものは、前半であっさりと否定的な回答が与えられる。
筆者はまずアンケート調査で、労働者も雇用主も(そして学者も)実際の賃金の決定要因および賃金で考慮すべき要因として「個人の成果」を挙げているというデータを紹介する(もちろん経験や職種など様々な要因が効いているともアンケートでは回答されている)。しかし筆者は、個人の成果は必ずしも給料に反映されていないとする。
筆者の挙げる論拠は色々あるが、一つは労働者の交渉力が様々な理由で削られる一方、株主の権限が強くなりすぎており、利益を奪い取られているという点が指摘されている。労働組合の組織率低下は分かりやすいが、同業他社への転職禁止を含む契約を最初に結ばされるなど、交渉力の源泉を最初から封じられてしまうといった問題も指摘される(厳密には違法なものも多々あるが、実際に訴訟に持ち込むには時間がかかりすぎ、実効性がない)。
また、給料秘密保持により同じポジションの同僚の賃金を知れないので、同じポジションで働きながら女性というだけで圧倒的に低い給料にされているという差別事件(レッドベター訴訟。2007年というごく最近の事件の上に最高裁で敗訴しているというから驚きである)さえ起きているという。これは日本ではまず起き得ないようなタイプの差別である。しかし同量の賃金が分からないのでは会社への交渉力は弱まる。
また、成果を数値で測ろうとすると、必ず歪んだ指標になり、指標のための抜け穴的行動が跋扈してしまう。「量的指標が社会的決定に利用されればされるほど、指標がゆがめられる」という指摘は社会心理学者ドナルド・キャンベルが50年以上前にしているものである。
続けて、製造業、運送業、小売業、清掃業、介護などの仕事が、その危険さや肉体的負担にもかかわらず給料が削られ、その代わりに株主の懐に入っているという実態が示されていく。
これらの指摘、これらの仕事が不当に低い待遇にされている点への批判は全くその通りだと思うが、わりとありきたりな批判でここでそれを長々繰り返してもそこまで意義深いとは思わなかった。
最低賃金の変化を調べ、最低賃金をあげても雇用崩壊も価格上昇も起きない点を明らかにしたサラ・レモスの研究の話(これは、賃金が上がることで離職率が下がり、また労働者のやる気と満足度が向上したことによるとしている)などは面白いが、この辺りはもっと丁寧に論じた方がいい話だと思った。
全体としては、アメリカに特殊な話と、全く正しいけど手垢のダイブ付いたような話が多く、この手の本で新味を出すことはなかなか難しいのかなぁと感じた。
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給料決定に関する神話への挑戦
2022年5月8日に日本でレビュー済み給料は単純に需給や成果で決まるのではなく、権力・慣性・模倣・公平性の要因が大きいと解く。
ひとつひとつが尤もな論拠をもって示され、確かに具体的に思い当たる節が多々ある。何故か給料の決定要因を一般論で語ろうとすると市場や成果に帰着させようとする単純化された神話を、丁寧に突き崩そうとする著者の執念が、結論ありきと紙一重で本書を良書としているように思う。
もはや、なぜ公平を目指すのかきっと響かない人は多いのではないだろうか。本書もそこには触れていないし、そこにこそ断絶があるようにも思う。なのでその前提を飲んだ上で読めるなら星5つ。
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労働"市場"という言葉に騙さず、給料が決まる力学の現実に目を向けよう
2022年5月17日に日本でレビュー済み本書を読む前に警笛を鳴らしておいた方が良いだろう。
おそらく、本書のタイトルを見て、読者の大半は、以下のような先入観をもって読書に臨むと思われる。
賃金(給料)はどのように決まるのか、そしてどのように決めるべきなのか。
経営者は賃金を下げる方向に、労働者は賃金を上げる方向で交渉し、労働市場が形成される。
このように我々の賃金が決まる一定の"相場"が成立するという考えは広く浸透しているが、経営者と労働者で賃金に関する見解に大きな相違があり、本来労働者に対価として報いるべき賃金が十分に支払われていない・・・。
その意味で、賃金は労働者(あなた)の価値を反映出来ていない。では、どうすれば良いか云々。
上のような問題意識で本書は進行するかと思いきや、その予想はあっさり裏切られる。
経営者、人事担当者、労働者に賃金に関するアンケートを取ったところ、各立場の見解に大きな相違は見られなかったのだ。特に成果主義(成果に対して賃金が支払われるべき)に対する考えは、米国特有の事情もあるだろうが、驚くほど方向を一にしている。
だが、この関係者間の考えが一致していることは、現在の賃金の形成の正しさを証明している訳ではないというのが本書の主張である。
また、労働市場で前提としている"人的資本モデル(労働者の価値)"についても疑義を呈している。
著者はその代わりに、権力、慣性、模倣、公平性が要因となっていることを主張しているが、これは謂わば、すでに賃金は"場外"で相当の制限・制約を受けて、見かけ上の労働"市場"で決まっている、ようなものである。
特に印象に残ったポイント:
①競業避止条項を設けることで、転職による賃金交渉の機会が奪われ、下げ圧力が掛かっている
②市場の独占・寡占に伴い、同業他社への転職機会が奪われ、賃金に下げ圧力が掛かっている
③政策(経営者・労働者に+になる減税政策など)による恩恵は、労働者よりも経営者・株主にはるかに大きい
④労働組合の有無で、賃金格差が生まれる
指摘されると当然と言える内容ではあるのだが、つい見落としてしまいがちな視点ではある。
ただ、本書のすべてが神話を解決するための正解を提示している訳ではないので注意したい。
第一に、米国特有の事情が背景にあることを念頭に置いた方が良い。著者の主張内容が、他の国でも同様に当てはまるのか、またどのような違いがあるのかなど国際比較はほとんどされていない。
第二に、労働者を守るという姿勢がベースにある(著者の専門は労働組合に関する社会学のようである)ため、賃金に見合わない労働者に関する視点が抜け漏れている。
第三に、経営者(特にCEO)の賃金に、ストックオプションを入れて考慮しているが、年収格差としての社会問題の提起は理解できるものの、賃金の問題としてそもそも経営者と労働者を同じ土俵で比較することにそこまで意味がないように思える(逆にこれは日本人的な感覚かもしれない)。
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人の価値とは?
2022年6月16日に日本でレビュー済み人間の価値は、貨幣的観点で測定できるものではないが、資本主義社会では、それが貨幣、すなわち、給料で測られることが多い。多く稼ぐ人は偉いという風潮。
決して、そんなことはないが、何らかの形で、数値に置き換えないと、見えないものだろうか。
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賃金とはを考える機会に
2022年7月19日に日本でレビュー済み賃金について、働く人、マネジャーへのアンケート調査結果、理論的アプローチの紹介など丁寧に取り上げてあり、賃金に関する基本の理解と整理に役立った。またアメリカにおける現状も興味深く知ることができ、賃金を決める際の評価の限界についての詳述も参考になった。しかしながら、著者は賃金を決めるのはいろいろな要因があるということで、決定的な提言がなかったのが残念だった。また、後半ではアメリカにおける賃金格差解消の論究についても、やや一般的で物足りなかった。
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成果主義という幻想。
2022年8月26日に日本でレビュー済み賃金や給与は、私たちの自意識や価値観とは切っても切り離せない関係にある。
だからこそ誰もが自分の給与を教えたくはないし、多くの給与を手にしている人を見ると優秀なんだと決めつける。
しかし賃金や給与は本当に私たちの能力や価値を反映しているのだろうか。
本書は私たちにそうした疑問を提示し、成果主義に警鐘を鳴らす。
また、富が一部に集中してしまっている現実を、数々の事例や最新の研究から紹介している。
なぜ株主だけが莫大な富を独占するという仕組みになってしまったのか。
どういう風に給与が決まっているのか。
なぜこんなにも貧富の格差が広がるばかりなのか。
本書を読み進めていくと次第に、成果主義というものは幻想にすぎないことが徐々に分かってくる。
同時に株主や雇用者が従業員から力を奪うため、変化・競争・団結させまいと躍起になっている現実も見えてくる。
そうした現状に対する原因と対策にも言及している本作は、多くの人が手を取るべき一冊だと言えるだろう。
もちろん本書に書いてある対策方法が全てを万事解決してくれるとは思わない。
それでも本書は、成果主義という幻想、労働者の価値を知るためのただ一つの客観的測定方法があるという錯覚から目を覚ましてくれる。
賃金や給与とは決して自身の能力不足に因るものではなく、単純に需要と供給に起因するもの・社会的な力と政治的権力に因るものである。
そうした認識を抱くことこそが、労働市場を変化させるための第一歩となるはずだ。
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