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2022年8月刊。先月ネット視聴した著者の「東京大学退官記念講義」がとても面白かったので、その著作を初めて読んでみた。なかなか重厚な論考だった。
著者がその師匠:見田宗介氏から引き継いだ所謂「まなざしの社会学」の手法をここでも援用し、戦争・紛争で「空爆する側」と「される側」の圧倒的非対称性を歴史的経緯を詳細に論じながら、「空爆する側の眼」を一種のメディアと捉え、空爆の「非人間性」を明らかにしていく流れは、非常に説得力がある。
飛行機・飛行船などの開発期から、その「上空からのまなざし」には「軍事的な要素」が多分に盛り込まれるようになり、第1次大戦末期頃から「空爆」は現実化していく。
特にアジア太平洋戦争において、日本軍のミッドウェイ海戦敗戦・サイパン島陥落あたりから日本の敗戦はほぼ確実なのにも関わらず、B29という当時最新鋭の大型爆撃機を大量投入しての日本の主要都市空爆~その前提としての詳細な航空地図作成~また、B29の計11人の搭乗員は各自の「決められた作業」を黙々と遂行するだけで、その下で焼き殺される庶民の姿は眼中にもイメージにもなかった点~2発の原爆投下と併せて、「殺傷力の実験場」と化した当時の日本列島。そしてそれは1950年からの朝鮮戦争でさらに激化し、ベトナム戦争にも繋がっていく。こうした「空爆」が植民地支配と密接に関連して来た事実~それがその後、アフガニスタン戦争・イラク戦争にも活用され、そこでの「空爆する側の眼」は、TV中継などを通して全世界に配信されるようになっていく。そこにあるのは、「殺す感覚」「破壊する感覚」からの著しい乖離。
しかし、昨年突如始まったプーチン・ロシアによるウクライナ侵略戦争では、「空爆される側の眼」がSNS等を通じてほぼ同時刻に世界中に拡散され、今、我々戦争の渦中にない者にもその体験はある程度「想像」が可能になった。
あと、大日本帝国海軍の「特攻(カミカゼ)」を米国は1930年代から予見していたという下りは非常に印象的。近代合理主義的な現代の「ドローンを使った無人攻撃」に先立ち、有人自爆攻撃を「戦争の勝敗に関わりなく」敢行し続けた当時の精神状況を改めて顧みる必要を感じる。
私はこれを読みながら、かつての本多勝一氏「殺される側の論理」や、小田実氏「鳥の視点・虫の視点」など様々に思い起こした。
最も大切なのは、やはり「殺すな!」・・・これに尽きる。
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