世界有数の大富豪にして、歴史・社会・文化にも造詣が深い「米経済界のご意見番」。運用資産20兆円を超えるヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエイツ」創業者のレイ・ダリオ氏が、ターニングポイントを迎える日本の政治と経済に関する長文寄稿を寄せた。迷える日本国民の姿は、彼の目にどう映っているのか。
連続寄稿パート1【レイ・ダリオが日本人に「生存戦略」を提言「中国への挑発は、絶対に控えたほうがいい」】より続く。
いつまでも変われない日本の「信認低下」
いま日本が経験している円安は、短期的な投機や一過性の金融現象のせいだとして片づけるべきではありません。これは、日本経済が長年抱えてきた構造的な課題が、通貨価値下落というかたちで顕在化した結果なのです。
為替変動の要因として金利差が指摘されることは多いですが、それはいわば引き金にすぎません。為替市場が最終的に評価しているのは、各国経済の将来像、すなわち「成長の期待」であることを忘れてはなりません。
米欧が高金利という負担を受け入れながらも、インフレ調整や生産性向上を通じて経済の再構築を図っているのに対し、日本は低金利の継続を前提とした政策運営から抜け出せていません。この差が、円に対する信認の低下として表れているのです。
金融政策の正常化、成長戦略の明確化、為替の適切な管理など、円安を是正する手段はあります。しかし、いずれも短期的には痛みを伴うので、政治ははっきりとした説明を避け、結果として社会には不透明感が広がります。
円安が長期化すれば、そのコストは確実に、国内で内面化されます。つまり、輸入物価の上昇、エネルギー価格の高止まり、実質賃金の低下といった形で、国民生活に直接的な負担が及ぶわけです。