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算術平均

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

算術平均(さんじゅつへいきん、: arithmetic mean)または相加平均(そうかへいきん)とは、平均の一種であり、有限個の数値の総和をその個数で割って得られる値である。日常語の「平均」は、多くの場合この算術平均を指す。[1][2]

算術平均は、統計学における最も基本的な代表値の一つであり、数学確率論自然科学社会科学など広い分野で用いられる。確率論では、等確率な有限個の値に対する期待値に対応する。[2][3]

一方で、算術平均は外れ値の影響を受けやすく、分布の形によってはデータの中心を適切に表さないことがある。そのため、文脈によっては中央値最頻値加重平均切断平均などと併用される。[4][5]

定義

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有限個の実数

の算術平均 は、

で定義される。ただし は正の整数である。[1][2]

これは

と書いても同じである。例えば 3, 5, 10 の算術平均は

である。

統計学における位置づけ

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統計学では、観測値

標本平均

で表される。これに対し、母集団全体の平均である母平均は通常 で表される。[4]

標本平均は母平均を推定する基本的な統計量であり、記述統計学だけでなく推計統計学においても重要である。[4][6]

確率論との関係

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確率変数 の平均は、通常その期待値として理解される。離散型確率変数が値 を確率

でとるとき、期待値は

で与えられる。[3]

有限個の値がすべて等しい確率で現れる場合、この期待値は算術平均に一致する。したがって、算術平均は期待値の最も基本的な特殊例とみなすことができる。[3]

基本性質

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偏差の総和が 0 になる性質

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算術平均 に対し、各値との差

を偏差という。このとき

が成り立つ。[2]

二乗偏差和を最小にする性質

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実数 に対して

を考えるとき、この値を最小にする は算術平均 である。これは、算術平均が最小二乗法の最も基本的な場合に対応することを示している。[2][7]

線形性

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任意の実数 に対して

が成り立つ。したがって、すべての値に同じ数を加えれば平均も同じだけ増加し、すべての値を同じ定数倍すれば平均も同じ定数倍される。[2][3]

取り得る範囲

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有限個の実数の算術平均は、常にその最小値以上最大値以下である。[2]

標本平均の理論

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互いに独立で同一の期待値 をもつ確率変数

に対し、標本平均

の期待値は

となる。したがって標本平均は母平均の不偏推定量である。[3]

さらに、各 の分散が であれば、

が成り立つ。したがって、標本平均の標準偏差、すなわち標準誤差

となる。[8][9]

また、大数の法則は、独立な反復観測の回数が増えるにつれて標本平均が母平均に近づくことを述べる。さらに中心極限定理によれば、標本数が十分大きいとき、標本平均の分布は近似的に正規分布に従う。[10][11][8][12][13]

加重平均との関係

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各値に重み

を与えたとき、加重平均

で定義される。すべての重みが等しい場合、加重平均は算術平均に一致する。[14]

加重平均は、観測値の頻度や重要度が等しくない場合に用いられる。たとえば、度数分布表から平均を求めるときには、各値または階級値に度数を重みとして与えることになる。[4]

測定科学や試験所間比較では、各測定値の不確かさが異なるため、単純な算術平均ではなく加重平均が用いられることがある。[15]

他の代表値との比較

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算術平均は最も一般的な中心の尺度であるが、外れ値の影響を強く受ける。極端な値が含まれる場合には、中央値の方がデータの中心をより適切に表すことがある。[4][5]

また、増加率・倍率・比率を扱う場面では、幾何平均調和平均の方が理論的に適切となることがある。平均の選択は、データの性質と分析目的に依存する。[2]

度数分布表からの算出

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がそれぞれ度数 をもつとき、算術平均は

と表せる。これは度数を重みとみなした加重平均である。連続量を階級に分けた度数分布表では、各階級の階級値を用いて平均を近似的に求める。[4][14]

測定と誤差論における位置づけ

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反復測定の結果を一つの値に要約する方法として、算術平均は古くから重視されてきた。Ku は、反復測定値の算術平均を と表し、その標準誤差を単一測定の標準偏差の 倍として説明している。[16]

もっとも、測定値に系統誤差が含まれる場合、平均をとるだけでは偏りは除去されない。したがって、算術平均は誤差処理の基本ではあるが、校正や不確かさ評価と切り離して扱うことはできない。[17][18]

歴史

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Churchill Eisenhart は、平均概念の歴史を、古代・中世・近世・近代の観測値処理の文脈に分けて跡づけている。目次上でも、古代から17世紀までの状況、midrange から arithmetic mean への展開、さらに 16–17 世紀の “Arithmetically meane” の成立過程が区分されている。[19]

ただし、古代から近世にかけて用いられた「平均」に相当する概念は一様ではなく、現代的な意味での算術平均の定義がそのまま共有されていたわけではない。Eisenhart 自身も、初期史料の解釈には慎重さが必要だとしている。[20]

脚注

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参考文献

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  • “Arithmetic mean”. Encyclopædia Britannica.
  • “Mean”. Encyclopædia Britannica.
  • “Probability distribution”. Encyclopædia Britannica.
  • “Sample mean”. Encyclopædia Britannica.
  • “Law of large numbers”. Encyclopædia Britannica.
  • “Strong law of large numbers”. Encyclopædia Britannica.
  • “The central limit theorem”. Encyclopædia Britannica.
  • “Weighted arithmetic mean”. Encyclopædia Britannica.
  • Taylor, John R. (1997). An Introduction to Error Analysis: The Study of Uncertainties in Physical Measurements (2nd ed.). University Science Books 

関連項目

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