家族関係こそ大変な仕事
若い頃は親と同居していて3食昼寝付き、掃除、洗濯も母任せだった。今思えば、本当に世間知らずで恩知らず、勝手気ままな人間だったと思う。身体は大人、中身は子供といったところか…。
独り暮らしをしようと思い立った時もあったが家族(特に母)の強い反対もあり、反対されると自分を押し通す勇気もなかった私は、結局、独り暮らしをした経験なく現在に至る。
結婚して、子育て、仕事と慌ただしく日々は過ぎ、若いころのことなんてそんなに思い出すこともなくなっていった。
遠い昔に見た風景のようにおぼろげな記憶になってしまった部分も多い。
子供が思春期以降、あんなに親を追いかけていた子がおはようと言っても返事なしになるなんて想像もしてなかったから、怒りや苛立ち、かといって無下に怒れない悲しみ、寂しさで途方に暮れたりした。
イライラを抑えつつ、自分はどうであっただろうかと思い返すと、前述の通りわがまま勝手に生きていた自分と重ねて、なんだか複雑な気持ちになる。
ウチはは母子家庭だったから母は本当に大変だったと思う。心配、不安は絶えなかったと思う。優しい母だった。
そんな母と結婚式前日の夜に相対して交わした会話が忘れられない。
母は突然、改まった様子で正座して私と向き合い、今後は妻になる人と一緒に協力していくんだよ、もうお金を貸したりは絶対にできないからね、自分で考えるんだよ、と言った。
母の精一杯の最後の親としての忠告、教育だったのだと思う。
今も鮮明に憶えているくらいだから、母の行動は本当に正しかった。
それ以降、私はもう親に頼れない、自分たちで生きていく覚悟みたいなものが芽生えていったのを憶えている。
母の行動とそこに漂う雰囲気には覚悟があり、優しいながらもなんとかこの息子に親としてしっかり伝えなければ…と考えたのだと思う。
そう私に伝えたのは、時も、言葉も、本当に正しかったと今しみじみ感じている。
親として普段の母はひょっとしたら平均点の人だったかも知れないが、あの日、あの時の、あの言葉を伝えた母は、親として百点満点だったと思う。
