イメージトレーニングだけでも脳は成長する?|ハーバード大学の実験
ハーバード大学のピアノ実験が教えてくれる、イメージトレーニングの力
「上手くなりたいけど、家で弾く時間がない」
そんな日が続くと、「上達が止まってしまう」と不安になる人は多いでしょう。
生徒さんから
「毎日練習しなくても上手くなりますか?」という質問を受けることがあります。
もちろん、実際に楽器に触って練習することは大切です。
しかし、触れないから上達は諦めた方が良いのかというと、それも違います。
忙しい人のために、希望が湧く脳科学の研究を
紹介します。
それが1995年にハーバード大学で行われたピアノ実験です。
ハーバード大学のピアノ実験
神経学者のアルバロ・パスカル=レオーネらは、ピアノ未経験者を3つのグループに分けて実験を行いました。
Aグループ
5日間、毎日2時間、実際にピアノを演奏する。
Bグループ
5日間、毎日2時間、実際には弾かず、頭の中でピアノを演奏を具体的にイメージする。
Cグループ
何もしない。
その後、脳の運動を司る領域の変化を調べました。
結果
最も大きな変化が見られたのは、実際に練習したAグループでした。
しかし驚くべきことに、イメージトレーニングだけを行ったBグループでも、運動に関わる脳の活動に明らかな変化が見られました。
さらに興味深いことに、その後Bグループが実際にピアノで2時間の練習をすると、脳の変化はAグループにかなり近いレベルまで達しました。
つまり、脳は「実際に動かした経験」だけでなく、「頭の中で具体的に動きを再現した経験」からも学習していたのです。
なぜイメージだけで脳は変わるのか
脳は、実際に身体を動かすときだけでなく、「動きを具体的に想像しているとき」にも、運動に関わる神経回路の一部を活動させています。
もちろん、筋力や細かな感覚は実際に演奏しなければ身につきません。
しかし、運動のプログラムを作ったり整理したりするという点では、イメージトレーニングも脳にとって意味のある練習なのです。
そのため、スポーツ、ダンス、リハビリテーションなど、さまざまな分野でメンタルプラクティスが活用されています。
音楽練習にどう活かせるのか
ここで誤解してはいけないのは、「イメージだけで十分」という意味ではないことです。
実際の演奏には、指先の感覚や力加減、音を聴いて修正する能力など、身体を使わなければ学べない要素が数多くあります。
一方で、楽器を持てない時間も「何もできない時間」ではありません。
例えば、
* 指板上でのポジション移動をイメージする
* 楽譜を見ながら指使いを頭の中で再現する。
* 左手や右手の動きを細かくイメージする。
* 演奏している自分の音を頭の中で鳴らしてみる。
* 難しいフレーズを、身体を動かすような感覚で思い浮かべる。
こうした時間も、脳にとっては学習の一部になり得ます。
「考える練習」も練習である
楽器の上達というと、「何時間弾いたか」が注目されがちです。
しかし、本当に大切なのは、脳がどれだけ質の高い学習をしているかです。
実際に演奏する時間はもちろん欠かせません。
それに加えて、「具体的に演奏を思い描く時間」も、脳の準備運動として大きな意味を持っています。
電車の中や、お風呂、隙間時間はいくらでもあります。時間がない社会人の方も、
「触れないから上手くならないで」はなく
「触れなくても工夫すれば上手くなる」
そんな視点を持つだけでも、日々の学び方は少し変わってくるのではないでしょうか。
