あたえる人があたえられる(The Go-Giver)』から学ぶ、仕事と人生を豊かにする5つの法則**
**【読書ノート】
**1. はじめに:なぜ「与える」ことが大切なのか**
世の中には、成功するためのノウハウが溢れています。どうすればもっと売上が上がるのか、どうすればもっと評価されるのか、どうすれば効率よくお金を稼げるのか。私たちは日々、そんなことばかり考えてしまいがちです。私自身も「どうすれば自分が得をするか」という基準で物事を選んでしまうことがよくありました。
でも、今回読んだ『The Go-Giver(邦題:あたえる人があたえられる)』(ボブ・バーグ、ジョン・デビッド・マン著)は、そんな私の考え方を根本からひっくり返してくれました。この本が伝えているメッセージは、たったひとつです。
「自分の利益を求めるのではなく、まず他人に与えなさい」
とても素朴で、当たり前のように聞こえるかもしれません。綺麗事だと言う人もいるでしょう。しかし、この本を読み終えたとき、私は「これこそが、仕事でも人間関係でも、本当の意味でうまくいくための唯一の道だ」と確信しました。
この本は、難しい専門用語が並ぶビジネス書ではありません。主人公のジョーという若手営業マンが、不思議なメンターたちとの出会いを通じて成長していく物語(パラブル)です。ジョーは最初、自分の成績を上げることばかり考えて焦っていました。典型的な「奪う人(Go-Getter)」です。そんな彼が、「与える人(Go-Giver)」たちから教わったのが、「5つの法則」でした。
今回は、この本に書かれている「5つの法則」を、私なりの解釈と、明日からどう使えばいいのかという具体例を交えて、まっすぐに書いていきたいと思います。
**2. 第1の法則:「価値の法則」〜お金以上のものを届ける〜**
> **「あなたの本当の価値は、どれだけ多く与えるかによって決まる」**
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これが最初の法則です。ビジネスの世界では「受け取ったお金の分だけ働く」というのが普通だと思われがちです。1000円の商品なら1000円分の価値を返す。給料が月給30万円なら、30万円分の仕事をする。
しかし、この本は違います。「受け取るお金よりも、ずっと大きな価値を与えなさい」と言うのです。
例えば、あなたが町の小さなカフェを開いたとします。コーヒー1杯が500円だとして、ただ500円の味のコーヒーを出すだけでは、お客様は「まあ、こんなものか」と思うだけです。そこに、とびきりの笑顔で接客したり、お客様がホッとするような座り心地の良い椅子を用意したり、名前を覚えて「今日もいいお天気ですね」と声をかけたりする。
そうやって「500円以上の居心地の良さや喜び」を与えたとき、初めてそのお店には本当の価値が生まれます。
仕事でも同じです。上司から頼まれた書類を作る時、ただ文字を入力するだけでなく、「どうすれば上司が読みやすいか」を考えてグラフを一つ足してみる。お客様からの問い合わせに答える時、マニュアル通りに答えるだけでなく、相手が本当に困っている背景を想像して、もう一歩踏み込んだ提案をする。
「自分がもらう以上のものを、相手に渡す」。損をしているように感じるかもしれませんが、この「期待を超える価値の提供」こそが、すべての信頼の土台になります。損得勘定を捨てて、まずは目の前の相手を喜ばせること。これが第一歩です。
**3. 第2の法則:「収入の法則」〜どれだけ多くの人に届けるか〜**
> **「あなたの収入は、どれだけ多くの人に与えられるかによって決まる」**
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第1の法則で「価値を与えること」の大切さを学びました。しかし、どれだけ素晴らしい価値を提供していても、それを1人にしか提供できなければ、大きな広がりはありません。第2の法則は、その価値を「どれだけ多くの人に届けるか」というスケールの話です。
良いものを作っているのに売れないと悩んでいる職人さんがいるとします。その人の技術(価値)は素晴らしいけれど、その価値を知っている人が町内に数人しかいなければ、ビジネスとしては成り立ちません。自分の生み出した価値を、もっと多くの人に知ってもらい、体験してもらう努力が必要です。
これは、インフルエンサーになりなさいとか、無理に会社を大きくしなさいという意味ではありません。「自分の仕事や親切が、より多くの人の役に立つにはどうすればいいか」を考えるということです。
例えば、社内で誰よりも早くExcelの作業を終わらせる方法を見つけたとします。それを自分だけの秘密にしておけば、自分の仕事は早く終わります。でも、それをわかりやすいマニュアルにして部署の全員に配れば、部署全体の残業が減ります。さらに、それを他の部署にも教えれば、会社全体の役に立ちます。
与える相手の数を増やすこと。自分が持っている知識、技術、優しさを、出し惜しみせずにどんどん外へ広げていくこと。その結果として、自然とあなた自身の評価や収入という形で返ってくるのです。
**4. 第3の法則:「影響力の法則」〜相手の利益を最優先する〜**
> **「あなたの影響力はどれだけ相手の利益を優先するかに決まる」**
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私たちは、「影響力のある人」と聞くと、フォロワーがたくさんいる人や、権力を持ってみんなを従わせる人を想像します。しかし、本物の影響力はそういうものではありません。
本当に影響力がある人とは、「いつも相手の利益を最優先に考えている人」です。
営業マンの例で考えてみましょう。自分の営業成績(ノルマ)を達成するために、お客様に無理やり商品を売り込もうとする営業マン。お客様はその下心を見抜き、警戒します。一方、お客様の悩みを一生懸命に聞き、「うちの商品ではお客様の悩みは解決できません。別の会社の〇〇という商品の方がいいですよ」と、他社の商品を勧めてしまう営業マン。
一時的には、前者のほうが売上をあげるかもしれません。しかし、後者の営業マンはどうでしょうか。お客様は「この人は自分の利益より、私のことを一番に考えてくれた」と強烈に感動します。そして、次に何か困ったことがあれば必ずその営業マンに相談するでしょうし、友人にも「絶対に信頼できる人がいる」と紹介するはずです。
「自分がどう思われるか」「自分がどう得をするか」を一旦脇に置いて、100%相手の利益のために動く。自分の利益を放棄するのには勇気がいりますが、これを実践できる人だけが、周囲からの圧倒的な信頼という「真の影響力」を手に入れることができます。
**5. 第4の法則:「本物の法則」〜あなた自身という最大の贈り物〜**
> **「あなたが与えることができる最も価値のあるものはあなた自身である」**
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どんなに素晴らしい資格を持っていても、どんなに美しい言葉を並べても、それが「作り物の自分」であれば、相手の心には響きません。
仕事をする上で、私たちはよく「プロフェッショナルな仮面」を被ろうとします。弱みを見せてはいけない、完璧でなければいけない、マニュアル通りに動かなければいけない。でも、人間が本当に心を動かされるのは、相手の人間らしさ、つまり「素の姿」に触れたときです。
分からないことは「分からないので教えてください」と素直に言えること。失敗したときは、言い訳せずに「ごめんなさい」と謝れること。自分の好きなことには、子供のように目を輝かせて語ること。
この法則は、「特別なスキルや才能がなくても、あなたにはすでに素晴らしい価値がある」ということを教えてくれます。あなたがあなたらしく、嘘をつかずに相手と向き合うこと。不器用でも、誠実に相手を思いやる気持ち。それこそが、どんな高価なプレゼントよりも、相手にとって価値のある贈り物になるのです。背伸びをする必要はありません。あなたのありのままの魅力を、相手に与えてください。
**6. 第5の法則:「受容の法則」〜喜んで受け取ることもまた「与える」こと〜**
> **「息を吐き続けると最後は自然に息が吸えるように、与えつづければ自然に受け取れるようになる」**
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最後の法則は、ここまでの4つとは少し毛色が違います。ずっと「与えなさい」と言ってきたのに、最後は「受け取りなさい」と言うのです。
実は、優しい人や真面目な人ほど、この「受け取る」のが苦手です。人に親切にするのは好きだけど、自分が親切にされると「申し訳ない」「悪いから結構です」と遠慮してしまいます。私もそうでした。
でも、本の中では「呼吸」に例えてわかりやすく説明されています。息を吐いて(与えて)ばかりでは、人間は死んでしまいます。吐いたら、必ず吸わなければ(受け取らなければ)なりません。
誰かがあなたに「ありがとう」と言って褒めてくれた時、「いえいえ、私なんて全然」と否定するのは、相手の「与えたい」という気持ちを拒絶することになります。相手がせっかくプレゼントをくれたのに、突き返すのと同じです。
与えることと、受け取ることは、コインの表と裏です。誰かがあなたに何かを与えようとしてくれたら、遠慮せずに、とびきりの笑顔で「ありがとう!すごく嬉しい!」と喜んで受け取ること。それが、相手の「与えたい」という気持ちを満たすことになり、結果的に「相手に喜びを与える」ことになるのです。
心を開いて、感謝して受け取る。これができて初めて、「与えるサイクル」が完成します。
**7. 日常生活で「与える人」になるための具体的なアクション**
5つの法則を理解したところで、明日から私たちの毎日にどう活かしていけばいいのでしょうか。特別な準備は必要ありません。今日からすぐできる小さなことをリストアップしてみました。
**① 職場の人間関係で**
* **挨拶に一言添える:** 「おはようございます」だけでなく、「おはようございます、今日のネクタイ素敵ですね」「おはようございます、昨日は遅くまでお疲れ様でした」と、相手に関心を持っていることを言葉にする。
* **相手の時間を大切にする:** メールや書類は、自分が書きやすいように書くのではなく、相手が一番読みやすく、すぐに理解できるように工夫する(価値の法則)。
* **手柄を譲る:** プロジェクトが成功した時、「自分の力です」とアピールするのではなく、「〇〇さんのサポートのおかげです」と、周囲の人の貢献を積極的に周りに伝える。
**② 家族や友人に対して**
* **ただ話を聞く:** 相手が悩みを話している時、ついアドバイスや解決策を言いたくなりますが、ぐっとこらえて「そうだったんだね、大変だったね」と100%共感して聞く(影響力の法則)。
* **家事を「やってあげた」と思わない:** ゴミ出しや食器洗いを「自分の役割として当然のこと」として無言で行う。見返りとしての感謝を求めない。
* **素直に弱みを見せる:** 家族だからこそ強がるのではなく、「今日、仕事で失敗してすごく落ち込んでいるんだ」と素の自分を見せる(本物の法則)。
**③ 見知らぬ人に対して**
* **道を譲る、ドアを開けて待つ:** エレベーターやお店の出入り口で、あとに続く人のためにドアを押さえて待つ。ほんの数秒の親切が、相手の1日を温かいものにします。
* **店員さんに感謝を伝える:** コンビニのレジや、レストランの店員さんに、お金を払う時だけでなく「ごちそうさまでした」「ありがとう」と目を見て伝える。
* **笑顔を向ける:** むすっとした顔で歩くのではなく、少し口角を上げて穏やかな表情でいること。それだけで、周囲の空間に安心感を与えられます。
**8. 「すり減る人」と「与える人」の決定的な違い**
ここまで「与える」ことの素晴らしさを書いてきましたが、一つだけ絶対に気をつけてほしいことがあります。それは、「自己犠牲」と「Go-Giver(与える人)」を間違えないことです。
世の中には、人のために尽くしすぎて、心も体もボロボロになってしまう人がいます。「私が我慢すればいい」「自分のことは後回しでいい」と考え、他人の要求に全て応えようとして、最終的に燃え尽きてしまう人です。これは、この本が推奨する「与える人」ではありません。
「すり減る人」は、自分の中にコップの水が少ししかないのに、無理をして他人にその水を分け与えようとします。だからカラカラになって苦しくなります。
一方、本当の「与える人」は、自分自身のコップをまず満たし、そこから溢れ出たものを他人に与えています。あるいは、第5の法則(受容の法則)をしっかりと実践し、与えた分だけ周囲からの感謝や喜びを「受け取って」いるから、水が枯れることがないのです。
人に与えるときは、「自分がそれをしたいからする」「相手が喜ぶ顔を見るのが自分も嬉しいからする」という純粋な喜びが動機でなければなりません。「これだけやってあげたんだから」という見返りを求める気持ちや、「嫌われたくないからやる」という恐怖心が動機になっていると、必ずいつか疲れてしまいます。
もし、あなたが今、誰かのために何かをしていて「苦しい」「疲れた」と感じているなら、一度立ち止まってください。それは本当の「与え」ではなく、無理をした「自己犠牲」になっているサインです。まずは自分自身を大切にし、素直に人からの親切を受け取る(第5の法則)ことから始めてみてください。
**9. おわりに:今日から「与える人(Go-Giver)」になろう**
『あたえる人があたえられる』という本は、ビジネスの世界だけでなく、人生全体を幸せに生きるための羅針盤のような一冊でした。
私たちは毎日、色々なものと戦っています。数字、評価、他人の目、将来への不安。そういったものに囲まれていると、どうしても自分の両手で何かを「掴み取ろう」「奪い取ろう」と必死になってしまいます。
でも、ギュッと握りしめた拳の中には、新しいものは何も入ってきません。
一度、その手をぱっと開いてみてください。そして、自分の持っている小さなパン切れでも、時間でも、笑顔でもいいから、隣にいる人にそっと差し出してみてください。
相手の喜ぶ顔を見た時、あなたの心の中には、お金では買えない温かい感情が生まれるはずです。それが「価値の法則」の始まりです。
成功するためには、他人を蹴落とす必要はありません。ずる賢くなる必要もありません。ただ、不器用でもいいから、目の前の人のために自分ができることを一生懸命にやる。嘘をつかずに、ありのままの自分でぶつかる。そして、人からの優しさを「ありがとう」と両手で受け取る。
それだけでいいのです。
このnoteを最後まで読んでくださったあなたは、すでに「与える人」になる準備ができています。今日、ここから、あなたの身近な誰かに小さな価値を与えることから始めてみませんか? きっと、想像もしていなかったような素晴らしい景色が、少しずつ広がっていくはずです。
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