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「最近、問題が減りました」を喜んではいけない理由――報告すると損をする会社で起きること


「念のため、報告しておきます」
佐藤さんは、ほんの小さな入力ミスを上司に伝えました。

大きな事故ではありません。
顧客への影響も、今のところありません。

ただ、少し気になることがあったので、
早めに知らせておこうと思ったのです。

上司はうなずきました。

「ありがとう。じゃあ、原因を調べておいて」

ここまでは普通でした。
ところが、そのあとです。

「関係部署にも説明しておいて」
「再発防止策もまとめて」
「来週の会議で報告できるように資料もお願い」

気がつけば、佐藤さんの仕事はどんどん増えていました。

最初に報告しただけなのに、いつの間にか、
原因調査も、
関係者への説明も、
再発防止も、

全部、佐藤さんの仕事になっていました。

佐藤さんは帰りの電車で、ふと思います。

「これ、黙っていた方が楽だったのでは?」


数か月後、会社では「問題」が減りました

それからしばらくして、月例会議でこんな話が出ました。

「最近、トラブルの報告が減りましたね」
「社員の意識が上がってきたんじゃないですか」
「教育の効果が出ているのかもしれません」

数字だけを見れば、確かにそう見えます。

先月は12件。
今月は5件。
報告件数は半分以下です。

経営者から見れば、安心したくなる数字でしょう。

でも、本当に問題は減ったのでしょうか。

もしかすると減ったのは、問題ではなく、
「知らせる人」
なのかもしれません。


あなたなら、次も報告しますか

少し立場を変えて考えてみてください。
あなたが職場で小さな問題を見つけたとします。

報告すると、
「詳しく調べて」
「関係者に説明して」
「再発防止策も考えて」
「最後まで責任を持って」
と言われます。

一方、黙っていれば、その日の仕事は増えません。
しかも、何も起きなければ誰にも気づかれません。

さて。
次も、すぐ報告するでしょうか。

これは、社員の性格だけの問題ではありません。
人は、職場のルールを言葉だけで学んでいるわけではありません。

「何をした人が得をするか」
「何をした人が損をするか」
を、毎日の出来事から学んでいます。

会社が、
「問題は早く報告してください」
と言っていても、

実際には、
「報告した人に仕事を集中させる」
という運用をしていれば、社員が学ぶメッセージは逆になります。

早く報告すると損をする。

そう学習した組織から、悪いニュースはだんだん上がらなくなります。


「最近の社員は報告しない」で終わらせてはいけない

こういう状況になると、管理職はつい言いたくなります。

「最近の若い人は報告が遅い」
「もっと当事者意識を持ってほしい」
「何かあったら早く相談しろと言っているのに」

もちろん、報告する側にも責任はあります。

しかし、そこで一度だけ確認してほしいことがあります。

報告した人は、そのあと会社からどう扱われているでしょうか。

報告者が、
発見者であり、
原因調査担当者であり、
説明担当者であり、
再発防止責任者でもある。

そんな状態になっていないでしょうか。
報告した人と、問題を起こした人は同じとは限りません。
問題に気づいた人と、原因を調査する人も、
本来は別でもよいはずです。

ところが現場では、
「最初に言ってきた人に全部お願いする」
という運用になりがちです。

これが続くと、優秀で真面目な人ほど早く気づき、
早く報告し、そして仕事を抱えます。

やがて、その人も学びます。
「余計なことには気づかない方がいい」
「言わない方が自分を守れる」

ここまで来ると、会社にとって本当に怖いのは
ミスそのものではありません。

ミスが見えなくなることです。


彦一なら、こんなことを言うかもしれません

ある会社の社長が言いました。

「彦一、最近うちの会社はトラブルが減ってきたぞ」

報告書の件数が、以前よりずっと少なくなっていたのです。
社長は満足そうでした。

すると彦一は、しばらく数字を眺めてから言いました。

「社長。それは問題が減ったのでございますか。
それとも、知らせる人が減ったのでございますか」

令和の彦一

社長は黙りました。

数字が良くなることと、組織が良くなることは、同じではありません。


変えるべきなのは、人より先に「仕組み」

では、どうすればよいのでしょうか。

難しい制度を作る前に、まず三つだけ確認してみてください。

  • 報告した人に、調査・説明・再発防止を全部背負わせていないか

  • 「誰が悪いか」と「何が起きたか」を最初から混同していないか

  • 早く知らせた行動そのものを、会社がきちんと評価しているか

大切なのは、

報告した人が損をしないこと。

むしろ、
「早く知らせてくれて助かった」
と組織が行動で示すことです。

悪いニュースが早く届く会社は、問題の多い会社ではありません。

問題を早く見つけられる会社です。

そして、早く見つけられる会社ほど、大きな事故になる前に手を打つことができます。


報告件数が減ったときこそ、問い直してみる

もし最近、
「報告が減った」
「相談が減った」
「事故報告が少なくなった」

という数字を見たら、すぐに成功と判断する前に、
一度だけ問い直してみてください。

本当に問題が減ったのか。
それとも、
問題を言う人が減ったのか。

この違いは、数字だけを見ていても分かりません。
だからこそ、会社は「報告件数」だけではなく、

報告した人のその後
を見る必要があります。


この話を「令和の彦一」の動画にしました

今回のテーマを、約3分の短い動画にまとめました。

『報告すると損をする会社で起きること|令和の彦一』

会社で悪いニュースが上がってこなくなる理由を、
彦一と一緒に考える内容です。

▶ YouTube動画はこちら
「その人しかできない仕事」が会社を止める|属人化を防ぐ“評価の仕組み”【令和の彦一ばなし】
https://youtu.be/rllVC27b0zo

なぜ真面目な人に仕事が集まるのか?|頑張る人ほど損をする職場の仕組み【令和の彦一ばなし】
https://youtu.be/IxbxUp3Aiqk

報告すると損をする会社で起きること|令和の彦一
https://youtu.be/VNeLraYSUz4

▶ もしあなたの職場でも、
「最近、報告が減ったな」
と感じることがあれば、

それが本当に良い兆候なのか、一度考えてみてください。

AIが会社の中に普及すると、
本質を問われる事態が増えてくるのではないでしょうか。



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