女と金と男のプライド
日本での逃亡生活に入った虎猫は、地下賭博場に身を寄せながら生きていました。
そして、人生の節目ごとに、彼の運命を揺らす女性が現れます。
今回のエピソードも、虎猫が裏社会の深みに飲み込まれていく過程のひとつ。
同時に、彼の中にあった「男としてのプライド」や「若さゆえの危うさ」も浮かび上がってきます。
虎猫の手紙
その賭博場でしばらくお世話になった。
そこは、日本人も含め、不良外国人たちの溜まり場でもあった。
客は主に水商売の女性が中心だったから、自然と色々な国の女性と知り合った。
そこでスナックなどをやっている台湾女性と付き合った。
当時、私は賭博場の2階の部屋に住んでいたが、その台湾女性は、私に相談もせず勝手に部屋を借りて私に住まわせようとしていた。
そして、賭博場の用心棒みたいなことをやめて欲しいと言ってきた。
「何もしなくていいから、生活全部を私が面倒みるから。」
そう言って、札束が入った封筒を渡された。
まだ付き合って3カ月くらいの時でした。
私は話を聞いたとき、思わず笑ってしまった。
要するに私のことをペットとして自分のものにしたいということか…!
「女性じゃなかったら、その場で張り倒して、ボコボコにしてやる!」と笑いながら彼女に言った。
「俺のこと何も知らないのに、よくそんな真似するね!金を持って早く消えたほうがいいぞ!気が変わる前にね!」
彼女はビックリした顔で私を見つめて、突然泣き出した。
女性にあんなに本気で怒ったのは、あれが最初で最後だった。
彼女は、そんなつもりじゃなかった…
と説明したが、私は聞かなかった。
泣いている彼女を置いてホテルから出た時、ちょっと可哀想だとは思ったけどね……
札束でヘンな男のプライドに触れたかな…?
当時の私は、本当に人間性に欠けた狂犬のような薄情な男だよね。
そして、しばらくしてタイ人女性と付き合った。
白猫より
札束という形で差し出された「善意」は、虎猫にとっては支配に見えたのかもしれません。
お金は時に、救いではなく「上下関係」を生んでしまうものでもあります。
虎猫の中には、「男は女性を守るもの」「女性に守られるわけにはいかない」という揺るがぬ価値観があったのだと思います。
彼女の善意は、そのプライドに触れてしまったのかもしれません。
彼女は、ペットのように扱おうとしたわけではなく、ただ必死に守ろうとしていた。
それでも当時の虎猫は、自らのプライドを優先し、その手を振り払いました。
そしてこの選択が、彼をさらに深い闇へと導いていくことになります。
