虎猫からの手紙【98】① 『雨ニモマケズ』が映した私たちの理想
宮沢賢治の詩『雨ニモマケズ』
私は、この詩の世界観が好きです。
丈夫な身体をもち、欲にとらわれず、質素に暮らしながら、困っている人に寄り添う。
褒められることも、けなされることも気にせず、静かに自分の信じる道を歩み続ける。
私にとって、この詩は「どのように生きたいか」を考えるたびに立ち返る、大切な道しるべのような存在です。
そんな思いを外国人である虎猫に伝えるため、この詩を送りました。すると虎猫も、この世界観が好きだと言いました。
なぜ私たちは、同じ世界観に心を動かされたのでしょうか。
今回の手紙では、『雨ニモマケズ』を通して見えてきた、私たちが大切にしたい生き方について綴ります。
虎猫より
宮沢賢治の詩をありがとう。
「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」という言葉はよく目にしていましたが、それを書いたのが宮沢賢治だとは知りませんでした。
「銀河鉄道の夜」を書いた人だよね?
名前は日本で有名なので知っていましたが、こういう世界観を持った人だということは初めて知りました。
志半ばで亡くなったことは残念ですが、学校の教科書にも載るような人なので、所内の図書で読んでみたいと思います。
この詩からは、辛抱強さや穏やかさ、無欲さ、素朴で飾らない心、そして正義感が伝わってきます。
たしかに、そういうふうになれたらいいよね。
でも、実際にはなかなか難しいことです。
それでも、私もこういう世界観は好きです。
自分の信じるものを貫く姿には、清々しさがあります。
私はグルメでもないので、玄米と味噌、野菜のような質素な食事でも、白猫と同じように毎日続けても苦になりません。
誰かに褒められるために生きているわけではないから、評価されても、されなくても左右されない心境は持っていると思います。
自然の暑さや寒さには文句を言いながらも、負ける気はしない!
困っている人を助けることは、私たちの目標であり、夢でもあるのだからね。
今の時代、白猫のような考え方は少し浮いて見えるかもしれない。
でも、心の豊かさが失われつつある時代だからこそ、モノではなく、心豊かに生きるとは何なのかを示すことが大切なのだと思います。
白猫より
『雨ニモマケズ』が書かれた直筆の手帳には、震えるような筆跡も見られます。
病床にありながら、残された力を振り絞るように書いたことが伝わってきます。
だから私は、この詩を読むたびに、「魂の叫び」や「祈り」のようなものを感じます。
そこには、「私はこういう立派な人間です」という誇りはありません。
むしろ、自分自身が病床にあり、思うように動けない中で、
「今は何もできない木偶の坊だけれど、こんな人間になりたい。」
そんな自分自身への願いが綴られているように感じます。
だからこそ、『雨ニモマケズ』は、誰かに教えを説く作品ではなく、宮沢賢治が自らの心に向かって綴った言葉だからこそ、多くの人の心に響き続けているのではないでしょうか。
私もまた、この詩に描かれた生き方に少しでも近づけるよう、静かに歩み続けたいと思います。
