中3娘、腹をククレカレー🍛で受験校に迷う
「もう、○○高校に決めて、腹をくくれ!」
県トップの公立高校を、塾長先生から突然すすめられた。
娘、泣き言。母、冷や汗。パパ、魂が抜けた。
ことの始まりは、塾長先生からの突然の呼び出しだった。
娘が帰ってくるなり、
「そんなとこ無理だよ~(;O;)」
「私がそんなとこ受けていいはずないよ~!」
「先生は一体、何を根拠にそんなこと言うんだよぉ……」
と、オロオロ。
いや、泣いているわけではない。
いつもはぶっきらぼうな反抗期娘が、
珍しくオロオロして右往左往落ち着かず、ひたすら泣き言を言っている。
どうやら塾で一時間ほど、塾長先生に愚図ってきたらしい。
それもそのはず。
それまで娘が考えていた志望校とは、かなり違う。
いきなり、
「県トップの公立高校に決めて、腹をくくれ」
である。
そりゃ、ビビる。
私も話を聞いて、
「え……○○高校?」
となった。
そして、その話を聞いたパパ。
パパは、この土地で生まれ育っている。
だから、
その高校が地元でどれほどすごい学校なのかを知っている。
私より事情を分かっているだけに、
「……え?」
「○○高校?」
「……あそこ?」
と、娘と私を交互に見る。
そして、
魂がスーーーッと抜けていった。
いや、パパ。
娘より先にビビらないで。
一方、
塾長先生だけは妙に落ち着いていた。
「十分狙えます」
……。
娘は「無理」。
母は「大丈夫なの?」
パパは魂が抜ける。
先生だけが、なぜか自信満々。
我が家、受験前からすでに温度差がすごい。
「娘さんが欲を出すかどうかですね」
少し前に先生と面談したとき、
「娘さんが欲を出すかどうかですね」
と言われていた。
ところが娘に、欲などなかった。
それまでずっと、自分なりに考えていた志望校があった。
そこへ突然、
「○○高校に決めて、腹をくくれ」
である。
娘としては、
「いやいやいやいや……」
なのだ。
そんな娘を、先生は一時間かけて説得したらしい。
「今後はあの学校の問題をバリバリ解いていけ!」
「面接は、お隣の校舎の一番コワモテの先生に、少しきつめに練習してもらうから!大丈夫だ!」
そして、
「入試当日は、俺が一緒に○○高校まで行ってやる!」
「入試が終わるまで、校門前で待っていてやるから!」
そこまで言ってくださった。
ありがたい。
本当にありがたい。
でも娘は、
「でも……」
「だって……」
と、まだ納得できない。
先生の説得力より、娘の不安が勝っている。
母も、だんだん不安になる
翌日、先生に用事があってメールをした。
ついでに、
「志望校に関して、お話があったようですが、すべて先生にお任せします」
と書いた。
正直、私には娘の「器」がどのくらいなのかなんて分からない。
確かに娘はよく勉強していた。
でも、
○○高校である。
私だって、
「えー……本当に大丈夫なの?」
と思う。
パパなんて、地元育ちだから、その高校の凄さを知っている。
完全に、イッてしまってる。
そんな翌日、先生から返信が来た。
「確かに○○高校は、
簡単に受かる学校ではありませんが、
過去の生徒と見比べても、娘さんは特に合格する可能性が高い位置にいます」
さらに、
「娘さんは例年でしたら、当塾の大エースとして君臨する学力をお持ちです」
……。
大エース。
しかも、
君臨。
うちの娘が?
家では、
「そんなとこ無理だよ~」
って言って今にも泣きそうですけど?
塾では、
大エースとして君臨していたらしい。
家と塾で、だいぶ違う。
先生によれば、今年はさらに上のレベルの生徒がいるため、娘の凄さが霞んでいるだけなのだという。
そして、
「もっと自信を持っていただければと思います」
と。
先生。
ありがとうございます。
でも、
その自信、本人が一番持ってません。
夏の説明会でも、アウェー
夏に、その高校の説明会には一応行った。
でも、私はなんとなく場違いな気がして居心地が悪かった。
周りを見ると、賢そうなお子さんと、しっかりした表情の凛としたお母さんたち。
「……うちの娘がここ?」
そんな気持ちだった。
パパはパパで、地元育ちだから、
その高校の凄さを知っている。
それだけで、ものすごい破壊力💦。
娘はハラハラ挙動不審。
私も気が気でない。
パパは完全に魂が抜けている。
そして先生だけが、
「いける」
と豪語してる。
すごい温度差。
もちろん、合格できたら嬉しい。
でも、仮に合格したとして、
そんな高校の勉強についていけるのか?
という心配もあった。
うちは、高校に入ってからも塾に通わせてやれるほど裕福ではない。
それに、娘がプレッシャーで
受験前に潰れてしまわないか。
それも心配だった。
そして、選抜クラスへ
そんな中、娘は塾の選抜クラス合同講習にも参加することになった。
今まで通っていた校舎ではなく、
お隣の駅の校舎。
しかも、ずっと一緒だった幼馴染のH君は選抜クラスから外れてしまった。
つまり娘は
一人で知らない校舎へ乗り込むことになった。
知らない子ばかり。
しかも男子が多い。
娘にしてみれば、
「いや、そこも不安なんですけど……」
という話である。
私はそのことも先生にメールした。
女子がいないかもしれないこと。
H君が一緒ではなくなって、娘が凹んでいること。
そして、帰りは遅くなるので、女の子だしバスを使わせるつもりだということ。
すると先生から、
「二駅向こうの別校から来る子の中に、女子がいます。仲良くできるように誘導してみます。」
と返信が来た。
誘導。
なんだか頼もしい。
そして、その日の帰り。
悪天候だったからか、
塾長先生、自ら車で娘を自宅前まで送ってきてくれた。
……。
先生。
そこまでしていただいて、すみません。
大勢の生徒を抱えている塾長先生からしたら、
かなり面倒くさい母子
だったかもしれない。
今振り返っても、ずいぶん頼もしい先生だった。
あの頃の私は、先生に全部お任せだった
冬休みが来れば冬期講習。
大晦日も元旦も特訓。
成人の日あたりには、ホテルで缶詰めの合宿まであるという。
もう、私たち夫婦にできることは、
健康管理以外ほとんどなかった。
先生にお任せするしかない。
私も、必死に落ち着く努力をし、
「腹をくくります、先生……」
という気持ちだった。
……まあ、娘より私のほうがテンパっていただろう。
娘は「無理だよ~」と言いながらも、
日々淡々と勉強している。
今振り返ると、あの頃の我が家は、
娘の高校受験なのに、多分
親のほうが完全にビビっていた。
娘は、自分なんかが受けていいのかと疑心暗鬼だった。
私は、受かったとしてついていけるのかと不安だった。
パパは、
「あの高校だぞ?」
という顔をしていた。
でも、先生には娘が見えていたのだと思う。
私たち親には見えていなかった、
娘の学力や可能性が。
だから、あのとき先生が強く背中を押してくれたことは、今でも覚えている。
もちろん娘本人は最後まで、
「無理だよ〜……」
という感じだった。
いや。
今思えば、
一番腹をくくっていたのは、塾長先生だったのかもしれない。
でも、この一件。
後になって我が家では、すっかり笑い話になった。
塾長先生の、
「腹をくくれ!」
という言葉が、
いつの間にか、
「腹をククレカレー🍛」
になった。
「今日、カレーにする?」
「うん。腹をククレカレー🍛で。」
……。
受験の緊張感、どこ行った。
あんなにオロオロしていたのに、
時間が経つと、こんなことで笑える。
あのときは本当に怖かった。
娘もビビる。
私もビビる。
パパは魂が抜ける。
なのに、塾長先生だけは、
「大丈夫です」
と言っていた。
そして我が家に残ったのは、
「腹をククレカレー🍛」
という、妙にくだらない合言葉だった。
……。
受験のドタバタ話は、まだまだ続く。
