まぼろしのUNI 第14話〜槍ヶ岳の願い〜
門がトゲトゲなのは
相変わらずだけど…
何かがちがっていた
それはそれは…
とっても"素敵な感じ"に…
だけど、残念ながら
うみの頭の中にはまだその"素敵な感じ"を
うまく表現できるだけの
言葉が無くて…
わぁ……とひとつため息をついてから
どのくらい見とれていたんだろう
その時間が、うみの気持ちを物語っていた
ふさわしい、
言葉が出ないの
私の棘に差し色を巻いてくれたのと一緒で
きっと丁寧に こころを込めて
一生懸命巻いてくれたんだよね
私は色の名前が分からないけど、
海の上にはこんなにたくさんの素敵な色が有るんだね!
黒く聳え立つ門の棘のほとんどに
美しい、様々な色の糸が巻かれ、
うみはまだ見たことが
ないけれど
これはきっと、絵本で見た
はなび、という美しいものに
似ているんだろうな、
それくらい鮮やかで
強く、美しく咲いていた
いいだろ?うみに一番に見せたくてな
針たちが頑張ってくれたからな
なの、なの〜、そうなの〜!
とぴょこぴょこ、と周りを跳ねながら
喜ぶ針を見ながら
槍ヶ岳は、目を細めて
少し恥ずかしそうに
嬉しそうに笑った
そして少し目を伏せて言った
色ってさ、うみが好きな青だけじゃ無くて…
数えきれないほど…あるんだよな
ちなみに、全部混ざったのが黒なんだ
うみは、そうなのか!
黒って、自分の身体の色ってカラフルなんだなぁと思うと嬉しくなってまた
にこにことしている
一方で槍ヶ岳は、そんなうみを
微笑ましく見ながら続けた
その全部の色を見に行きたいんだろ??
なんでだ??
さっきまでにこにことしていたうみは、
今度はギョッとして目を見開いた
槍ヶ岳は知っている
槍ヶ岳は知っているのだ
うみが色々なものに興味を
持ち始め、見たい!知りたい!
と思っていることに…
でも、不思議と知られていることが
何故か嫌じゃ無いんだな、と
うみはそのことの方が不思議でならなかった
だから、どうして…って問うたり
考えるのはやめた
何だか、カッコわるい気がしたのだ
うみの考えていることが
こんなにも槍ヶ岳には伝わってしまうことの
方がきっと大事なんだろう
ものごとには理由がいらないことも、
きっとあるんだよね
うみは
心の中で思ったつもりが
ふと、口からぽろり、と溢れ
槍ヶ岳は、さっきの答えだと受け取った
ようで
そうかもな、それこそ
星の数ほどあるんだろうなぁ!
と言って、うみは星の数ってどれくらい
たくさんあるのかなぁ、星も見たいなぁ…
なんて2人で星の数を数える想像を
しながら
2人きりでくっくっと笑った
夜の海で、蠢めく深海生物を眺めながら
しばらく沈黙が続いた
あ、あのさ、よかったら槍ヶ岳さんも…
とうみが言い掛けるか、
どうかのところで
俺は行かないよ
とだけ、いい声で強く言い残すから
あまりにも静寂な海にその言葉だけが
響きわたった
いつもならここで
うみがどうして?と聴き
槍ヶ岳は瞑想に入ってしまうところ、
だったのだが
その日は違った
産まれてこのかた
仲間は居なかったが 道場は良かった
道場では、身も心も鍛えられ、
針の痛みを乗り越えることが出来た
だけど、それ以上に針の痛みに気づいてくれた
針山である必要が無いことを教えてくれた
針の上に乗り、ハルキゲニアのように
歩くことが出来るなんて
夢にも思わなかったんだ
俺はな、もうこの広い海でうみに出会えただけで、十分なんだ
そうやって、また
マリアナ海溝よりも深く、淋しそうに
わらった
うみは胸の動悸が止まらない
嬉しいけれど、
心持ち淋しいような何だか複雑な感情を
抱えて、むずかしくて
ううん、と唸り声が出そうになりながら
また言葉が出ないから
管足で差し色の自分の棘を愛おしく撫でたあとに
ふわりと優しく槍ヶ岳をハグした
そして、ふんわりと管足を解いて言った
私は、尖っていなければウニ失格だと
周りのウニに言われてきた
だけど棘を持つ以上、
大切な人には尖りたくないなって
尖らない生き方はウニらしくないのかも知れない
だけど、ウニらしくなく生きる事で本当に沢山見えるものも出会いもあったんだよ
そんな、私を認めてくれてありがとう
うみは、自分でもよく分からないが
自然と涙がこぼれおちて
止まらなくなっていた
槍ヶ岳は、黙ってうみの涙を拭くと
言った
うみ、
知らないことを知るって大事なことなんだよな
生きてるとだんだんそれが鈍ってくる
だけど、俺はうみに出会って本当に自分が知らないことをたくさん教えてもらった
棘があるのに丸くて優しいうみに
出会えて、本当に良かった
旅の検討を祈る
2人は向き合って頷くと
もう一度、改めて針と管足で固く握手して、
ハグをすると
ピカピカの顔をして笑った
うみが、じゃあ一週間後には、行くね、
と言うか言わないかのところで
グラグラグラグラ!!!
ブクブクブクブシューーーーーー
ドカドカボーーーン!
バーーーーーーーーン!!!!!!
バリバリバリバリーーーーー!!!!!
急に地響きがしたかと思うと
あたり一面、泡に包まれた
全く前が見えない!
うみが、危ない!!と思って叫ぼうとした
と同時に
ブワワワーーーと巻き上がる海水の中に
うみも槍ヶ岳も巻き上げられてしまった
う、う、う、うわーーーーー!!!!
薄れゆく意識の中で
……で待ってる
槍ヶ岳さんのいい声が
遠くで聴こえたような気がした…
う、、、うーーーん
うみが、目を覚ますと
おかしな事に、海底は元のままだった
遠くの岩場に
槍ヶ岳さんの針が見えたから、
管足で向かうと
槍ヶ岳さん、さっきはなんだったんだろうね!
びっくりしたね、大丈夫だった??
と、うみが聴いたが…
その言葉は海に飲み込まれて消えていった
あれ?
槍ヶ岳さん!!!返事をしてよ!
うみが
何度聴いても
返事もオーラもなく
そこには、ただ
針と針山が
海の底に沈んでいるだけだった…
to be continued…
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