ボルンの確率解釈(1926年)論文いろいろ
シュレディンガーが、時間に依存する微分方程式(後に言う「時間依存シュレディンガー方程式」)を提示したのが1926年6月21日付受理の論文でした。いわゆる第四論文。
面白いことにそのわずか四日後、6月25日付受理の論文で、マックス・ボルンが「近いうちにすげー論文をわし出すで期待しとりゃーよ」と予告編を繰り出しました。
予告編と本編については、こちらをどうぞ ⇩
さらに同年、ボルンは「量子力学における断熱原理」(Das Adiabatenprinzip in der Quantenmechanik)を刊行しました。
1926年10月16日に受理され『Zeitschrift für Physik』第40巻に掲載。

7月21日受理の、ひとつ前の論文は、原子や電子の衝突過程を確率解釈したものでした。
上にある10月論文は、もっと射程距離が広いです。エーレンフェストの断熱原理を使って、外部擾動(原子や電子に外から加わる力やポテンシャル)による量子状態の変化を、統計的・確率的に扱っています。
電磁場による励起(光やラジオ波などで電子が高い量子状態に遷移)
原子間の衝突(衝突による電子の励起・イオン化)
外部電場・磁場の変化(ゼーマン効果やシュターク効果の簡単化)
つまり、原子内部の電子が「元の定常状態」から「別の定常状態」へ移ることをモデル化するための理論的装置です。
外部擾動がある場合でも、波動関数の係数を用いて 状態遷移の確率を計算できること を示す。
全確率は保存される(ユニタリ性)ことを明示することで、量子力学の統計的/確率的枠組みを確立。
シュ教授のものが、物理数学をエレガントに使いこなす美学に貫かれていたのに対し、ボルン先生のは、観測結果を理論とどう整合させるかを強く意識したものであります。
観測に基づく経験則をよくわきまえていたゆえの、存在確率論でした。
後にノーベル物理学賞を授与されるにふさわしい仕事だったと思います。
