恋する香港 ー 1泊3日弾丸旅行記13
日が暮れても香港の空気はまだ暖かい。
市井の人々の熱気が溢れる街を闊歩しながら、
ホテル最寄りの駅から地下鉄に乗り、
スターフェリー乗り場を目指した。
中環駅からフェリー乗り場へ向かう途中、
まるでこれから始まる夜景の前哨戦のように、
街のあちこちで煌びやかな電飾が輝いていた。

道端に座り込む人たちの姿もちらほらと見かけ、
かつてニュースで見た香港の出来事が
ふと頭をよぎる。
真偽は分からないが、
異国の空気に触れているという実感だけは
確かにあった。
やはり世界に出てみないと
見えない景色や、触れられない温度がある。
20時前、対岸の尖沙咀へ。
シンフォニー・オブ・ライツの時間帯と
重なるため
混雑を覚悟していたが、
思いのほかフェリーも乗り場も
落ち着いていた。
慌てることなく乗船。
およそ10分間、船上から香港島の夜景を
これでもかと堪能する。

揺れる船の上で一人夜景を眺めていると、
日常のことや、これからの自分のことが
ぼんやりと浮かんでは消えていく。
この非日常を味わえるからこそ、
日々の営みを大切にしなくてはならない。
眩い光とは対照的に、
胸の奥では静かな内省が続いていた。
次はこの景色を誰かと分かち合いたい...
そんな思いがふとよぎる。
そんな物思いにふけっているうちに、
あっという間に尖沙咀へ到着。
他の乗客に紛れて下船し、
次なる目的地
アベニュー・オブ・スターズへ向けて
海沿いをゆっくりと歩き出した。
夜景が最も美しい時間帯。
尖沙咀は多くの観光客で溢れている。
ヴィクトリアハーバーに面した
バーやレストランには人々が集い、
思い思いにこの壮大な景色を楽しんでいた。
やがて音楽が流れ、
香港島側からの光線が夜空を彩り、
シンフォニー・オブ・ライツが始まる。
だが正直に言えば、
元々の夜景の完成度が圧倒的で、
特別な感動までは至らなかった。

そっと夜景に溶けこむ。
それでも夜風を感じながら、
ゆっくりとアベニュー・オブ・スターズへ
歩を進める。
光り輝く街は、
祝祭のような熱気が漂っていた。
僕は1人、
船上と同じような気持ちを抱えたまま、
光彩の中、静かに立ち尽くしていた。
つづく
