足首の捻挫がなぜ骨盤・体幹まで波及するのか——筋膜連鎖の視点

導入

内反捻挫を診ているのに、なぜか腰痛や股関節の張りまで訴える患者がいる。足首と腰、一見つながりが見えにくいこの二つを結びつけているのが筋膜連鎖である。局所だけを診ていると、この波及を見逃す。

解剖学的・運動学的根拠

筋膜は個々の筋肉を包むだけでなく、連続したラインとして全身をつなぐ。内反捻挫との関連で特に重要なのが外側線と浅後線の二つである。外側線は腓骨筋から大腿筋膜張筋を経て骨盤へと緊張が伝わるラインで、内反捻挫による腓骨筋の機能低下や過緊張がそのまま骨盤の傾きに波及する。浅後線はアキレス腱からハムストリングス、脊柱起立筋へとつながるラインで、足関節の底屈制限や荷重パターンの変化が体幹のバランスを崩す要因になる。

受傷直後は痛みの回避行動として代償動作が生まれ、それが定着すると全身の運動連鎖が歪んだまま固定される。足首の治癒だけを確認して終了すると、この代償動作が残存したまま競技復帰させてしまう。

評価・施術手順

  1. 患側での片脚立位時に、骨盤の傾きや体幹の代償的な動きが健側と違わないか観察する

  2. 腓骨筋の収縮を促した際、大腿筋膜張筋や骨盤の連動した動きが出るか外側線の連続性を確認する

  3. アキレス腱の張り・ハムストリングスの柔軟性・脊柱起立筋の緊張を触診し、浅後線の連続性を確認する

  4. 歩行やランニング動作で、患側の接地から蹴り出しまでの一連の動きに代償が残っていないか動作分析する

  5. 施術は足関節局所の可動性改善に加えて、外側線・浅後線の緊張を緩和するところまで範囲を広げる

まとめ

内反捻挫は足首だけの問題ではなく、筋膜連鎖を介して骨盤・体幹まで波及する全身現象である。局所の治癒を確認したら終わりではなく、連鎖の視点で代償動作が残っていないかまで見届けることが再発予防につながる。

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