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夢は枯野をかけ廻る 『鬼平犯科帳 老盗の夢』

 蓑火の喜之助はすでに盗賊稼業から足を洗い京都で隠居生活を送っていた。喜之助は若かりし頃の思い人・お千代の墓参りの帰途で、彼女にそっくりな茶汲女・おとよと出会う。喜之助はおとよの借金百両を清算し身請けするため、江戸で最後の仕事をしようと画策。前砂の捨蔵の口利きで助っ人を3人雇った。喜之助が再び江戸に現れたのを知った長谷川平蔵と小房の粂八は、彼の動きの警戒し、粂八は独断でどうにか盗みのやめないかと説得に走る。しかし喜之助の助っ人の中には粂八のことを知る者があり、2人は窮地に陥る……。

 新生『鬼平犯科帳』シーズン1の最後を飾るのは「老盗の夢」。第1作「本所・桜屋敷」の冒頭に登場し、各エピソードにも顔を出し伏線を張っていた。新生・鬼平犯科帳には“時の移ろい”というテーマが一貫して設定される。それならばシーズン1の最後に「老盗の夢」という題名はあまりにも相応しすぎるではないか。

 「犯さず、殺さず、貧しきから盗まず」を守る本格の盗賊・蓑火の喜之助(橋爪功)。助っ人として盗みに参加した若者たちは最初こそ従順にしていたものの、喜之助と平蔵の密偵となった粂八(和田聰宏)が会話しているのを知って豹変。「今時こんな昔気質の老い耄れと真っ当なつとめが出来るか」と、喜之助を暴行し、粂八の始末へ向かう。ジェネレーションギャップと言えば聞こえは良いが、若者から「老害」と疎んじられる残酷な時代の流れ。原作でも物語の核心はここだ。

 さらに本作では喜之助と粂八を対比することで、より明確に「時間」を意識させるつくりになっている。江戸で再会した時、喜之助は粂八に「拾った命は大事にせえよ」と声をかける。説得に来た粂八には「最後までどう生きるかはワシが決めることや」と返す。粂八にはまだ時間=未来があること、翻って喜之助自身にはもう残された時間が少ないことを、2人のやり取りで明確にしているのだ。

 蓑火の喜之助は京都住まいということから、新生・鬼平では洒脱さが強調され、前作「血頭の丹兵衛」で粂八と旅先の茶屋で再会した時も茶目っ気のある感じに描かれていた。その後、護送される血頭の丹兵衛(古田新太)を見送って呟く「盗賊の誇り、捨てよったな……」の悲哀。そして本作のクライマックス、自分を裏切った助っ人に切りかかる時の凄み。名優・橋爪功のまさに面目躍如である。

 また終盤、長谷川平蔵(松本幸四郎)がかつて蓑火の喜之助と出会っていた過去を思い出し、「本所・桜屋敷」の冒頭のシーンが挿入される。台詞でクドクドと語ったたりはせず、鬼平が酒を飲んでいる中でふと思い出すのだ。野暮にはならないこういった処理が良い。

 最後に――。
 実はこの「老盗の夢」、話の流れは大きく変わらないが、原作と本作ではラストが大きく異なる。言ってしまえば、本作は優しさを残して終わるが、原作では突き放したような着地になる。どちらが良いか比較してみるのも一興。

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