見出し画像

異邦人バス

【シロクマ文芸部:バス停で】
※小牧幸助様主催のお題に寄せて


バス停で途方に暮れる。

まさに、「ここはどこ?」である。
本数が絶望的に少ないため、白っぽい
時刻表に記された地名は、馴染みのない
未知のものばかり。


家を出るまでは、いや、
ほんの1時間弱前までは、
楽しくてウキウキ浮かれていたのに、
突然こんな危機に陥るなんて
予想だにしなかった😭


娘との映画デート。

ずっと前から楽しみにして、
キャラのムビチケも買って、
都会のショッピングモール併設の
シネコンで映画、ランチ、買い物🌸


楽しい未来しか無かった頭の中が
真っ白になったのは、
JRの新快速が、停まるはずのない
駅に停車したせいだった。

田舎→都会の乗り物は勿論、
主要駅しか停車しない新快速が最適。
だが今停まったのは、普段なら
通過するだけの名も知らぬ駅だ。


乗客がザワつき始めた頃、ようやく
車内に要領を得ないシドロモドロの
アナウンスが流れた。

要するに、この先の踏切で事故があり、
密なスケジュールで運行している
後続の列車が全て、最寄りの駅に
緊急停車していると言う。

いつ復旧するかも、発車するかも
全く判らないが、そのまま車内で
発車を待つか、降りて料金の返金を
受けるか二択を迫られる。


娘は既に家を出て、
映画館のある駅へ向かっている。
チケットは私が持っているので、
私が着かない事には映画が観られない


私は意を決して駅を出た。

知らない駅、知らない景色。

だが、確か電車の窓からバスを見た。
この道路を歩いていれば、
バスに乗って元の駅まで引き返し、
別の鉄道を利用できるはずだ。


娘にLINEを入れ、私は敢然と歩き出す

いざ!(乗り慣れない)バスを求めて!


しかし、歩けど歩けどバスは来ない。

バス停はいくつも通り過ぎたが、
肝心のバスが通らないのだ。

一度だけ、やって来たバスに乗り込んだが、
行き先が全く違っていた。
敢え無く降車する。


いよいよ寂しい景色に変わり、
見つけたバス停のベンチに座り込む。

春だというのに快晴の空、暑い!
何だか虚しい気持ちになった。

…これは何の罰なんだ?

ペッボトルのお茶を飲み、
流れる汗を拭いて途方に暮れた。


私は、選択を間違ったのか?
もしかしたら、電車は既に
発車しているかも知れない。


泣きたくなって来た頃に、
バスが1台やって来た。

行き先の表示には、お馴染みの駅名。

二度見した。
もしかしたら、幻かも知れない。
砂漠でオアシスの幻影を見る、
あれかも知れないと本気で思った。


バスは本物だった。

座席に座り、冷房の有り難みを
全身で享受する。


あんなにルンルンで家を出た私が
何故こんなアドベンチャーを
経験しなければならんのか?


結局その日、私は都会の素敵な
映画館には辿り着けなかった。


娘がこちらの駅まで足を伸ばし、
いつもの映画館で映画を観て、
いつものパスタ屋さんでランチをし、
いつものGUで買い物をして
いつもの駅で別れる。


まあ、それでも無事なら良いか。


こうして、私のオシャレ都会の休日は
幻に終わった。

過ぎてしまえばあの冒険も
楽しかったような気になるものだ。


心に深く残った思いは、
踏切に無理な進入はしないこと!

どれだけ大勢に迷惑を掛けるか
いつも考えて行動するべきだ。
わざとではないにせよ、
事故を起こした誰かさんには
猛省を促したい!!


それから、利用者が減った路線でも
バスの減便はほどほどにして頂きたい

いつ私のような異邦人の交通難民が
見知らぬ場所で助けを求め、
放浪しているかわからないのでね。


#シロクマ文芸部
#創作大賞2025
#エッセイ部門


↓ こちらに参加しています

🍀ヘッダー画像は 
ho2y 様 の作品です。


いいなと思ったら応援しよう!

deepblue 頂いたチップに相応しい作品を、 これからも書き続けたいと思います。 これからもお楽しみ頂けますよう 精進いたします!