熱帯夜のかなしみ
熱帯夜・・・
月さえも蒸されたように、
毒々しいピンク色。
地の底から響くような、
地蟲の声がジージーと、
鼓膜を不快に震わせる。
まるで湯の底に沈んだよう。
身体を包む温度と湿気は
夜になっても一向に冷めず、
私の体温を閉じ込めにかかる。
今夜もまた熱帯夜。
一体何日続くのか?
もうウンザリだ。
そんな一日の終わり。
下がらない気温は30℃に近い。
エアコンを止めるが早いか
汗が噴き出る蒸し暑さ。
そんな状況で、日付を越えた。
明日のために、米を研ぐ。
生産者の方が、苦労して育てた
米を美味しく頂きたい。
一日の家事の締め括りに、
丁寧に米を研ぐ。
水道から出る水は、水ではなかった。
ゆるいぬるま湯。
お湯じゃんコレ。
こんなんで米を研ぐのは嫌だ。
旨味も溶け出す気がする。
美味しいご飯を炊くための
水は冷たくあってほしい。
深山の渓流を流れるような、
岩山に人知れず湧く清水の如く。
脳裏に幻影が浮かぶ。
緑の木漏れ日。
野鳥のさえずり。
微かな水音。
こんこんと湧き出す、
澄み切った岩清水。
あー、山奥に住みたい。
実際、山奥に住んでいながら、
そんな望みを抱いた。
いやいや、山奥ったって
こーゆーんじゃないのよ💧
冷やしたミネラルウォーターが
あったなら、それでご飯を炊きたい。
でもそんなものは無い。
ウォーターサーバーも無い。
仕方なく、ぬるい水道水で
米を研ぎ終えた。
ザルで洗った米の水を切り、
炊飯釜に移す。
水をそっと注ぎ、
目盛りの少し下で止める。
冷凍庫から、氷を少し。
それを釜に投入し、
ぬるい水への抵抗とした。
あとはこの釜を炊飯器に収め、
タイマーをセットすれば、
本日の私、閉店ガラガラ。
全ての業務を終了し、
冷えた寝室で爆睡するだけだ。
釜を両手で持ち上げた。
ん???
長年の勘が『違う』と囁く。
微妙に重い。
水の量が多い。
柔らかいご飯は我が家の禁忌。
米は少しだけ固めが好まれる。
私もそうだ。
水を減らそう。
シンクへ逆戻り。
そっと釜を傾けた。
拭いた手が、
まだ濡れていたのか?
それとも、既に汗が滲んだのか?
指が滑った。
丁寧に洗った米と、
氷の欠片が散乱する。
シンクの中での悲しい事故だ。
床じゃないだけマシだよ、なんて
そんな慰め、意味ないわ!!
・・・熱帯夜。
冷えた寝室は、まだ遠い。
米を拾う。
一粒一粒、米を拾いザルに戻す。
泣けてくる。
エアコンを切ったキッチンは、
もう屋外のような暑さ。
こんなことなら切らなかったのに。
いや、こんな事が起こるなんて
誰も予想なんかできんわ😭
米を拾い、もう一度軽く洗って
釜に戻し、氷を足した。
ピッ
タイマーセット完了の音が、
『お疲れ様』
そう言ってくれた。
救えなかった米の分、
水の量を控えてみたが、
明日のご飯の具合には、
あまり自信が持てない。
願わくば、鈍感なくせに
私の失敗には鋭い家族たちが、
ご飯の味が微妙に違うと
気付きませんように。
そんな虚しい願いとともに、
キッチンを離れ、寝室へ向かった。
こんな悲しい一日の終わりを、
想像もしていなかった。
生産者の方、ごめんなさい🙇
お米を少し、無駄にしました😭
そんな懺悔を心に唱え、
冷えた寝室で、眠りに就いた。
そんな、悲しき熱帯夜があった。

※※※ 了 ※※※
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※小牧幸助部長 様
今週もお題を有難うございます。
よろしくお願い致します💐
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これからも書き続けたいと思います。
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