第3回|原因じゃなく、目的を見る―アドラーが人を軽くした理由
フロイトの話をすると、
「じゃあ次はアドラーですよね」と言われることがあります。
たしかに、流れとしては自然です。
でも正直に言うと、
私がアドラーに惹かれた理由は、学派の流れとか、理論の整合性ではありません。
ただ、圧倒的に“楽になった”からです。
原因を探さなくていい、という衝撃
アドラーの考え方で、いちばん有名なのはこれかもしれません。
人は、原因ではなく「目的」で行動している
初めて聞いたとき、
「え、そんな乱暴でいいの?」と思いました。
だってそれまでの心理学は、
なぜそうなったのか
どんな体験が影響したのか
どこに原因があるのか
を、丁寧に見ていく世界だったから。
でも、キャリアやマネジメントの現場に立っていると、
原因を探すほど、動けなくなる人がいることにも気づいていました。
「分かったけど、で?」が残る瞬間
こんな場面、何度も見てきました。
幼少期の体験は理解できた
なぜ苦手なのかも説明できた
自分のパターンも分かった
でも、そのあとに残るのは、
「で、これからどうすればいいんだろう」
という空白。
理解は深まったのに、前には進めない。
そのとき、アドラーの視点は、強烈でした。
アドラーは「これから」を扱う
アドラーは、こう問いを置き直します。
今の行動は、何を守るためだろう
何を避けるためだろう
何を得ようとしているんだろう
原因を責めない。
過去を否定もしない。
ただ、「今、何のためにそれを選んでいるか」を見る。
この問いに変わった瞬間、
空気がふっと軽くなることが多い。
マネジメントが楽になった理由
アドラーに出会って、一番助けられたのは、
人を責めなくてよくなったことでした。
やる気がない → ダメ
行動しない → 意識が低い
そう決める代わりに、
「今は、何を守ろうとしているんだろう?」
「動かないことで、何かを避けているのかもしれない」
そう考えられるようになった。
すると、
叱るか、放置するか、の二択じゃなくなる。
それまでは、正しく導こうとしすぎて、力尽きて放置を選択する。
ということがありましたが、
アドラーのおかげで、関わり方の選択肢が増え、会話が変わりました。
原因を見ない、という勇気
アドラーは「過去はどうでもいい」と言っているわけではありません。
ただ、
過去を“掘らなくてもいい場面がある”
ということを、はっきり示してくれた。
キャリアの相談でも、
「原因を特定しなくても、一歩前に進める」
そんなケースが、実際にたくさんあります。
フロイトとアドラーは、対立じゃない
フロイトを知っているから、
アドラーが軽く感じられる。
でもこれは、どちらが正しい、という話じゃない。
フロイトは、
「そうなった理由がある」と言ってくれた人で、アドラーは、
「それでも、これからは選べる」と言ってくれた人
私には、そんな風に聞こえています。
どちらか一方に寄りすぎると、
人は重くもなるし、浅くもなる。
キャリアの現場で思うこと
キャリアの悩みは、
「過去を癒せば終わり」でもなければ、
「前向きになれば解決」でもない。
原因よりも目的を見たほうが、楽に進める場面が確実にある
ということ。
私は今も、原因を見ることもあれば、目的を見ることもあります。
どちらかを信じる、というより、目の前の人が少し軽くなる方を選ぶようにしています。
アドラーは、その視点を、
とてもシンプルに、手渡してくれました。
次回へ
次回は、
「人は成長したがっている」という前提に立った心理学。
ロジャーズの話を書こうと思います。
僕が最初に学び、
今でも原点として“戻ってくる場所”になっている考え方です。
