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たのしい幼稚園連載版『ひょっこり ひょうたん島』の魅力

『ひょっこり ひょうたん島(1964−1969)』には雑誌連載版がいくつか存在しています。

小学館の『よいこ』、『めばえ』、『小学一年生』での絵話や、講談社の『なかよし』でのコミカライズなど、いずれも短期・不定期の連載が多いです。

そんな中、講談社の『たのしい幼稚園』に関しては、1964年8月から1969年4月までのテレビ放送とほぼ同期間、ひと月も欠けることなく絵話が連載がされました。

更にひょうたん島を特集した増刊号も発行されること計5冊。当時人気絶頂の『ウルトラマン』の特集増刊号へも出張掲載されました。

ひょうたん島特集の増刊号

今回はそんな『たのしい幼稚園』の連載版にスポットを当てていきたいと思います。

まず、こちらの絵話は【文・山元護久/井上ひさし】としっかりクレジットされています。内容は基本的にテレビ放送のストーリーを幼児向けにアレンジしたものが多くなっています。しかしながら、基本3、4ページに凝縮された文章からは両先生のシナリオの”核”がかえって浮かび上がっているともいえます。

例えば、こんな面白い発見がありました。

クレタモラッタシリーズ(66年10月-12月放送)で、神オソレイリヤスは滅びる運命にある地球から逃れるための方舟へ、自身の創作した模型動物を乗せると言い出します。
方舟に乗るに相応しいのは模型動物かひょうたん島民か、その適正は何故かオリンピックによって決着をつけることになるのですが・・・。

この部分をピックアップし再構成した話が『たのしい幼稚園』に掲載されています。

『たのしい幼稚園』1967年2月号掲載

ある日、プラモデル島に漂着したひょうたん島。島に住むプラモデル博士は自身の作ったプラモデル動物と島民の力くらべをさせます。

そして、実際に争う競技はシャベル口のペリカンとの土掘り、ラッパ鼻のブタとの鳴き声くらべ、ハエ叩き尻尾のワニとのハエ取り競争といずれもテレビ版と同様の内容です。

テレビとの違いは、紙幅の問題からでしょうが、神が博士となっている点と、最終的な勝敗(テレビでは島民が敗れる)。そして、細かい表現の差ではありますが「模型動物」「プラモデル動物」となっていることも気になります。

実は、模型動物が登場するテレビ放送、第650回の構想がまとめられたプロットノートの時点では「プラモデル」と表記されています。つまり、本来の山元・井上両先生の表現に近いのは『たのしい幼稚園』版であったことがわかります。

650回(担当:渡邊D)プロットノート 井上ひさし展 図録より

※調べて判明したことですが、69年当時「プラモデル」という名称は一般名称ではなく厳密には模型メーカーのマルサン商店が登録した商標でした。おそらくNHK側の配慮で台本になる際に表現が改められたと推測されます。


他にも1969年1月号には赤道の番人なる人物が現れます。

『たのしい幼稚園』1969年1月号掲載

これは、ポストリアシリーズ(1968年5月-11月放送)で登場する志士をモチーフにしていると考えられます。テレビ版での志士は祖国ポストリアを守るべく赤道のカギを持ってひょうたん島(主にトラヒゲ)と戦うという役回りです。
ポストリアシリーズの後半においての”赤道が実際の鉄の道”で、”馬”や”戦車”で追いかけっこするという題材は、ドイツの児童文学作家エーリヒ・ケストナーの『五月三十五日』から拝借されています。また、そのテーマ性もケストナーの同作と通じるものがあります。

児童文学好きな方であればご存知かもしれませんが、『五月三十五日』は『スケートをはいた馬』という邦題でも知られています。しかしテレビ版で登場する馬はスケートを履いていません。なぜならガバチョとトラヒゲが扮した馬であるからなのですが、赤道自体がツルツルしていて滑るなどという描写はあるものの”スケート”は出てこないのです。

代わりに、『たのしい幼稚園』版では、なんと赤道の番人と赤道上で”スケート”競争を行います。ハカセ達は妨害策として赤道を磨くのですがこれも『五月三十五日』のオマージュとなっています。(『五月三十五日』も是非一読ください)

つまり、本編(テレビ放送)で描ききれなかったネタをたのしい幼稚園版で回収したということなのです。本編を補うような役割を果たしていたと言っても過言ではないのです。


ここまで、ひょうたん島研究においての『たのしい幼稚園』版の有用性を語ってきましたが、最後にシンプルな魅力もご紹介します。

それは、短いページ数の中で絵話の味わいをより深めているイラストについてです。

絵は、林義雄さん、滝原章助さんで初期8号分を連載したのち、テレビ放送2年目に入る1965年4月号からは連載終了まで行山諄さんによって描かれています。

実際に見てみましょう。

『たのしい幼稚園』1968年12月号掲載


連載版オリジナルキャラクターなのに、表情や動きなど、人形劇としての雰囲気を感じるタッチになっています。

これは本当にすごいことで、片岡昌さんの人形の世界観に馴染むキャラクターデザインを考えるというのは並の技術ではありませんよね。

すずき出版の絵本シリーズで知られる杵淵やすおさんもそうですが、人形としての質感を残しながらイラスト化するという職人技だけでも一見の価値ありです。

ひょうたん島の本放送は、現在その多くを視聴することが叶いません。しかし『たのしい幼稚園』版(また他の雑誌連載も)には媒体は違えど、変わらない自由な発想とユーモアが息づいています。

引き続き『ひょうたん島』を多面的に追いかけていきたいと思います。
(大野)



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