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yukarimurasaki
つくし上位互換 #毎週ショートショートnote
ここは山間の老人ホーム。運営はロボットが担っている。時々訪れる男は利用者には目もくれず、人型ロボットの後頭部の穴に細いスティックを刺し停止させ、データを書き換えていくだけだ。
食堂の窓辺には利用者の節子さんが座り、景色を眺めている。その隣には詠子さん。細い編み棒で編み物をしている。
「もうつくしが摘める頃ねぇ」「そうねぇ、卵とじにすると美味しかったねぇ」
そのつぶやきを、ロボットはマイクで聴き取っていた。
次の日の昼食、ロボットは節子さんに言った。
「今日はツクシ上位互換として、βカロテンを含む春菊卵とじをご用意しました」
「そう…。ありがとうね」
すると突然、ロボットの動きがぎごちなくなり、やがて停止した。ロボットの背後では詠子さんが、編み棒をロボットの後頭部の穴に突き刺して微笑んでいる。
「今ならまだつくしが摘めるはずよ」「そうねえ、行きましょう」
二人はドアを出ると手を繋ぎ、早春の土手を目指してゆっくりと歩み始めた。
