【この季節の残りを、君と】#7 第六章 一人で食べる朝
伯母の家で迎えた最初の朝、私は天井の模様を数えていた。
薄い灰色の線が、右から左へ七本。
途中で途切れた線が二本。
そのどれも、昨日まで見ていた天井にはなかった。
目を閉じれば、自分の部屋へ戻れる気がした。
けれど布団から出て、襖を開けても、廊下の突き当たりに父と母の寝室はなかった。
代わりに、小さな食卓があった。
一人分のご飯と焼いた鮭、卵焼き、豆腐の味噌汁。
味噌汁には蓋がかぶせてあり、ほかの皿にはラップが張られていた。
湯呑みの隣に、花柄の便箋が置いてある。
『澪ちゃんへ
朝早くにごめんね。お仕事へ行ってきます。
味噌汁は、青いボタンを一回押して温めてね。
今日は学校まで迎えに行きます。
冷蔵庫に苺もあります。
いってらっしゃい。』
最後に、伯母の名前が丸い字で書かれていた。
時計は六時四十分を指している。
伯母が家を出たのは、私が起きるよりずっと前だった。
玄関へ行く。
伯母の靴だけがなくなっていた。
現実の廊下の下で、白い歩道が一人分だけ動いている。
食卓から玄関へ、玄関から閉じた扉の向こうへ。
伯母の線は、もう見えなかった。
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