【この季節の残りを、君と】#8 第七章 手すりを覗く少年
九歳になった春、私は休み時間を図書室で過ごすようになった。
教室にいると、誰かが話しかけてくる。
校庭にいると、一緒に遊ぼうと手を引かれる。
図書室なら、俯いていても不自然ではなかった。
本を読んでいるように見えるからだ。
窓際のいちばん奥。
植物図鑑と古い百科事典の棚に挟まれた席が、私の場所だった。
そこからは、床がよく見えた。
薄茶色の木目。
机の脚についた小さな傷。
その下を静かに動く、透明な白い歩道。
春休みが終わってから、歩道の輪郭はずっと薄かった。
誰かが転校する話もない。
病気で休んでいる子もいない。
だから私は、少しだけ息をしやすかった。
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