製品選定でイプロスのランキングを鵜呑みにしてはいけない理由
イプロスを開くと、「○○のメーカー・企業ランキング」「○○の製品ランキング」が並んでいます。1位、2位、3位……と順位が振られていると、つい「1位の会社が一番いいんだろう」「上位の製品なら間違いないだろう」と感じてしまう。
でも、ちょっと待ってほしいんです。その読み方、実はかなり危ない。
最初に断っておくと、これはイプロスを叩く記事ではありません。イプロスは便利なサイトですし、私自身も仕事でよく見ます。問題は、「ランキング」という見た目に対して、私たちが勝手に「品質の順位」という意味を読み込んでしまうことにあります。製品選定でこれを鵜呑みにすると、判断を誤るどころか、本当にいい会社を見逃すことすらある。理由を順番に説明していきます。
ランキングが実際に測っているもの


ランキングのすぐ下に、小さくこう書いてあります。

※当サイトの各ページの閲覧回数を元に算出したランキングです。
これがすべてです。つまりこのランキングは「どのページがよく見られたか」=アクセス数・注目度の順位であって、「どの製品が優れているか」「どの会社の実績が高いか」を測ったものではありません。
集計期間も明記されています(たとえば直近1か月など)。たまたまその期間にアクセスが集まったページが上位に来る、という仕組みです。性能試験をして順位をつけているわけでも、導入実績を比べているわけでも、第三者がユーザー満足度を集計しているわけでもない。
そして大事なのは、イプロスはこの点を隠していないということ。むしろ正直に開示しています。だから「イプロスが嘘をついている」という話ではないんです。嘘をついているのではなく、見る側が「ランキング」という言葉から品質の序列を勝手に期待しているだけ。すれ違いはそこにあります。
なぜ「アクセスが多い=いい製品」ではないのか

ここからはWeb制作をやっている立場から書きます。
ページの閲覧回数は、製品そのものの良し悪しとは別の要因で大きく動きます。主なものを挙げると、
検索エンジン対策(SEO)が上手いか。ページタイトルや説明文、内部リンクの作り込み次第で、同じ製品でもアクセスは何倍も変わります。
掲載ページの数。製品ページや事例ページをたくさん作っている会社は、それだけ入口が増え、合計の閲覧回数が積み上がります。
広告・露出への投資。イプロスには有料プランがあり、サイト内検索の上位表示やメルマガ掲載などで露出を増やせます。露出が増えればアクセスも増える。
もともとの知名度。社名で検索される大手は、製品ページにも自然と人が流れてきます。
つまりイプロスのランキングは、「製品ランキング」というより、実態としては「Web上の露出量・運用努力ランキング」に近いんです。
これは机上の空論ではありません。実際に、あるWeb制作会社が「イプロスの有料会員になって約半年で、リードを1,000件以上獲得し、企業ランキング・製品ランキングともにTOP10に入った」という事例を公開しています。彼らが何をしたか。製品情報をゼロから入力し直し、コラムごとに受けページを新設し、事例もページ化し、とにかくページを量産した——と自ら書いています。「閲覧者との接点を増やすためページの量産が重要かも」とも。
注目してほしいのは、ここで改善されたのは製品そのものではなく、Web上の見せ方と運用だという点です。製品は何も変わっていないのに、ランキングは10位以内に上がる。これがランキングの正体をよく表しています。
イプロスは、そもそも「広告・リード獲得」の場である
もう一段、構造の話をしておきます。
イプロスは国内最大級のBtoBプラットフォームで、約170万人規模の会員を抱えています。企業はここに製品カタログを掲載し、問い合わせや資料ダウンロードをした見込み客(リード)の情報を受け取る。これがイプロスのビジネスモデルです。無料でも掲載できますが、有料プランを使えば露出を大きく増やせます。

言い換えると、イプロスは「中立な第三者が製品を審査して並べる格付け機関」ではなく、「企業がお金と手間をかけて自社を露出させる、広告・集客の場」です。だからランキング上位という結果には、製品力の差だけでなく、広告予算と運用体制の差が反映されている。
ここを取り違えると危ない。ランキングを「公平な品質の格付け」だと思い込むと、実際には「一番うまくWebマーケティングをやっている会社」を「一番いい会社」と勘違いしてしまう。両者はまったく別物です。
ランキングや「○○選」を出しているのは、イプロスだけではない
念のため言っておくと、これはイプロス固有の問題ではありません。「ランキング」や「おすすめ○○選」という形式そのものに共通する話です。同じ目で見るべき相手は、ほかにもたくさんあります。
製造業向けでいえば、メトリー(Metoree)も大きな存在です。8万社以上のメーカーを掲載し、口コミ・ランキング・評価で比較できることを売りにしています。アペルザ(Aperza)など、同種のBtoBプラットフォームもあります。これらはいずれも「企業が掲載する」仕組みで成り立っている点は共通です。
もっと一般的なところでは、ネットで「○○ おすすめ」「○○ ランキング」「○○10選」と検索したときにずらりと並ぶ比較サイトがあります。これらの多くは、紹介先のサービスに送客し、そこからアフィリエイト報酬を得ることを目的に作られています。報酬の高い商品が上位、というサイトも珍しくありません。点数の根拠が不明だったり、根拠なく順位だけ並べているものもある。
もちろん、すべての比較サイトがそうだと言いたいわけではありません。ただ「そういう構造のサイトが一定数ある」ことは、知っておいて損はないはずです。
実際、過去には問題化した例もあります。消費者庁は2017年、比較サイトを自作自演で運営し、自社サービスを上位に置いていた事業者に対して、景品表示法違反(優良誤認)で措置命令を出しています。また大手グルメサイトでも、有料プランを利用している店に有利な評価がつくのではないか、という「やらせ疑惑」が議論になったことがありました。ランキングの売りであるはずの「中立公正さ」は、案外もろいものです。
鵜呑みにすると、具体的に何が起きるか

ランキングや「○○選」を品質の格付けと信じ込むと、次の3つの落とし穴にはまります。
1. そもそも、網羅していない
ランキングに載っているのは「そのサイトに掲載している会社」だけです。掲載していない会社は、どれだけ優秀でも、最初から土俵に上がっていません。
世の中には、Webにあまり力を入れていない実力派の中小メーカーや、特定分野に深く特化した専門メーカーが数多くあります。ランキングを眺めているだけでは、その存在に気づくことすらできない。「載っているものがすべて」という前提自体が、もう間違っているわけです。
2. 純粋に信用するのは危険——広告が含まれている
すでに述べたとおり、上位には広告投資や運用努力が反映されています。さらに媒体によっては、広告・タイアップ・アフィリエイトといったお金の流れと順位が結びついていることもある。意図的に特定の会社を持ち上げる宣伝の可能性も、ゼロではありません。
この点に関連して、2023年10月から日本でもステマ規制(景品表示法)が始まりました。広告であるのに広告だと分からない表示は、「不当表示」として規制の対象になります。
なぜ規制されたのか。理由が本質を突いています。人は「これは広告だ」と分かっていれば、「多少は誇張しているだろう」「いいところしか書いていないだろう」と割り引いて読めます。ところが、中立な第三者の評価だと誤解すると、その警戒が外れて判断を誤ってしまう。だから「広告だと分からせない表示」は問題視されるようになった。
ランキングや比較記事を見るときに「これは広告ではないか?」と一度立ち止まる視点は、いまや消費者保護の前提になっているということです。
3. 本当にいい会社・製品を見逃す
1と2の結果として、製品選定で一番避けたいことが起きます。あなたの用途に本当に合う、品質も実績も申し分ない会社が、ランキングの外にいて、検討の俎上にすら上がらない。
Webマーケティングが上手いだけの会社を選んでしまい、地味だけれど本物の会社を逃す。発注した後で「実はもっと良いところがあった」と気づく——製品選定として、これほどもったいない失敗はありません。
では、どう使えばいいのか

ここまで読むと「ランキングは見るな」という話に聞こえるかもしれませんが、そうではありません。ランキングや比較サイトは、入口としては非常に優秀です。どんな会社や製品があるのか、市場にどんなプレイヤーがいるのかを、短時間でざっと把握できる。問題は、「入口」をそのまま「結論」にしてしまうことです。
ランキングは判決ではなく、候補リストの出発点。そう位置づけたうえで、最終判断は自分で裏を取る。具体的には、こんな確認をおすすめします。
一次情報に当たる。メーカー公式サイト、製品カタログ、仕様書を直接読む。ランキングのページではなく、製品そのものの情報を見る。
導入事例・実績を確認する。自分と近い業種・用途での採用実績があるか。ここに具体性があるかどうかで信頼度はかなり変わります。
複数のソースを突き合わせる。一つのサイトのランキングだけで決めず、別の媒体、技術系の記事、業界内の評判も見る。
「これは広告か」を見分ける。PR表記の有無、掲載企業の偏り、紹介の仕方に不自然さがないかをチェックする。
自分の条件で絞る。価格、納期、対応エリア、サポート体制、アフターサービスなど、ランキングには出てこない実務条件で評価する。
最後は問い合わせる。気になる候補には実際に連絡し、見積もり・サンプル・デモで確かめる。本当の比較は、ここから始まります。
まとめ

イプロスのランキングは、「閲覧回数=注目度」の順位であって、品質や実績の格付けではありません。これはイプロス自身が正直に明記していることです。そして、アクセス数はSEO・掲載ページ数・広告投資・知名度で大きく動くため、上位=Webマーケティングが上手い会社、になりやすい。
ランキングや「○○選」は、市場を見渡す入口としては優秀ですが、(1) 網羅していない/(2) 広告や意図的な宣伝が含まれうる/(3) 本当にいい会社を見逃す——という明確な限界があります。
だから、ランキングは参考材料として賢く使い、品質は自分の目で確かめる。順位を信じるのではなく、順位をきっかけに調べる。
本当にあなたに合う一社は、ランキングの外で、静かに良い仕事をしているかもしれません。
参考リンク
イプロス|リード獲得プラン(公式) ― 有料プランで「サイト内検索の上位表示」「メルマガ掲載」など露出を増やせることが書かれています
Web制作会社による「約半年でランキングTOP10入り」事例 ― 製品ではなく運用・ページ量産で順位を上げた実例
Metoree(メトリー) ― 産業用製品の比較サイト(口コミ・ランキング・評価)
Apérza(アペルザ) ― 製造業向けポータル・カタログ・ECを運営
消費者庁|令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります ― 「広告と分かれば誇張を織り込んで選べるが、第三者の感想と誤認すると合理的に選べなくなる」という規制理由が明記されています
