考察探究型の道徳授業1「批判して考える展開」とは…
道徳の教材には、良くない行動が数多く描かれているものがあります。例えば、自分の責任を果たさない、嘘をついたりごまかしたりする、生活習慣が乱れている、すぐに諦めてしまう、自分勝手にふるまう、規則を守らない、人に不公平に接する、よく考えずに行動してしまう、自然や環境を大切にしないなどです。
こうした教材を使って授業を行おうとすると、授業展開に迷ってしまうことがあります。主人公の気持ちが揺れ動く場面がなく、行動を改善してよかった様子も描かれていないため、授業の焦点がどこにあるのか分からなくなってしまうのです。
実は、こうした悩みを抱えるのは、従来型の授業方法で教材を捉えているからです。
従来型では、登場人物の気持ちの揺れや迷いに着目して授業を構想します。具体的には、登場人物の立場から教材の状況を捉え、その人物がどうすればよいか、あるいは自分に置き換えてどう考えるかを話し合います。しかし、気持ちの揺れや迷いがない教材では、授業で中心となる場面が見つかりません。
そのために、どのように授業を構成すべきか分からなくなってしまうのではないでしょうか。
考察探究型では、このような悩みは生じません。なぜなら、従来型とは授業方法や授業構想の方法が大きく異なるからです。
では、良くない様子ばかりが数多く描かれた教材では、どのようにして授業を構想するのでしょうか?
考察探究型では、教材の特徴を捉えた後に、その教材が道徳の教科書に掲載された意図を想像します。実は、考察探究型では、教材の特徴を捉え、その意図を想像することによって、授業展開は自然に決まっていくのです。
良くない様子が描かれた教材の意図
これらの教材では、道徳的に見て良くない行動が数多く描かれていますが、決してそれらの行動を真似てほしいために描いているわけではありません。登場人物の良くない行動を反面教師として捉え、児童や生徒にその行動を避けることを促し、良い行動をすることの大切さを考えさせるために描かれているのです。
批判して考える展開の学習の流れ
このような教材の意図を踏まえると、良くない行動が描かれた教材を使った授業の進め方が見えてきます。
例えば、気の弱い転校生にいやなことを押し付け続けた話では、転校生が「嫌だ」と言わないことを良いことに、嫌な役割を押し付け続けたことが描かれています。この教材の意図は、友達を不公平に扱う様子を考えることで、そのことの酷さに気付き、公平に付き合うことの大切さを考えてほしいことにあると想像できます。内容項目は「公正、公平、社会正義」です。
そこで、まず登場人物の良くない言動を取り上げます。具体的には「この教材を読んで、『良くないな』と思う様子はありますか?」と問いかけます。児童からは「呼び捨てにしている」「悪役ばかりをやらせている」「バケツの水を捨てさせている」「フンをどけさせている」など、たくさんの良くない言動が挙がることでしょう。
次に、それらの言動を批判して、良くない状態であることをはっきりさせます。具体的には「このような様子をどう思いますか?」と問いかけます。児童からは「ひどい」「かわいそうだ」「子分のように扱っている」「二人はずるい」「不公平だ」「いじめだ」などの感想が挙がると思われます。これによって、教材に描かれた様子がとても良くない状態であることが明瞭になります。
そして、より良い方法や改善すべき内容を考えます。具体的には「二人は、どのような考えで転校生と接するべきだったと思いますか?」と問いかけます。児童からは「友達とは公平にしなければならないと考えるべきだ」「いやなことをさせないと考えるべき」「相手の気持ちをよく考えることが必要だった」「命令はしない」「上下の関係になってはいけない」など、不公平な扱いをしないために必要な「考え」が、次々に発表されることでしょう。これらには、「公正、公平、社会正義」の価値が含まれています。
続いて「友達と公平に付き合うためには、具体的にどんなことが大切だと思いますか?」と投げかけます。すると児童からは「順番や回数は公平にする」「いやなことは交代でやる」「自分を優先しない」「相手を嫌な気持ちにさせない」など、公平に付き合うために必要なことが発表されることでしょう。ねらいの価値がより鮮明になります。
このように進めることで、児童や生徒は良い行動を選ぶことの重要性を実感し、価値について考えを深めることができます。
批判して考える展開の授業の流れ
この方法は、登場人物の言動を批判的に考えることに重点を置いているため、本書では「批判して考える展開」と呼んでいます。展開パターンは次のようになります。
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