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考察探究型の道徳授業4「心に残ったことを考える展開」とは…

道徳教材には人物の素晴らしい行動が描かれたものがあります。

例えば、人々が協力して海岸清掃に取り組んだ話、命を救うためにみんなで協力した話、無私の精神で行動し続けた人、生涯をかけて何かを追い求めた人の一生などです。これらには一人の人物の事例も、複数の人や団体が関わる事例もあります。

 こうした教材には、心に響くすばらしい内容が描かれているため、教材文を読むことで、子どもたちに印象に深く残る学びが生まれることがあります。多くの先生方は、このような教材の「良さ」を十分に活かして、子ども達の心に残る充実した授業を実践したいと考えるのではないでしょうか。

 しかし、このようなすばらしい内容が描かれた教材を利用する場合、心配なことがいくつもあります。

 例えば、偉人の行動が「えらいね」「すごいね」「すばらしいね」と考えるだけで、表面的な感動で終わってしまうことです。反対に、行動のすばらしさに圧倒されてしまって、感情面だけの感動で終わってしまうことも考えられます。こうした状態では、偉人の行動に感情移入することや共感することができない、その人物の気持ちや考え、行動のねらいや意図を考えることができないことになります。

また、行動内容のすごさから、「自分には無理だな」「すごい人もいるものだ」と自分とは違う人間だと考えてしまうこと、偉人と比べることで自己評価を大きく下げてしまうことも考えられます。

偉人の行動が現代の価値観と合わずに行動の良さが理解されないこと、過去の時代背景や価値観の違いが現代の子ども達には共感しにくい場合もあります。偉人の行動の良さを強調すると「価値観の押し付けだ」と感じ取られてしまう心配もあります。

これでは、心に残る充実した授業にはならないでしょう。

 こうした心配に考察探究型の授業は応えることができます。

教材の特徴を捉え、意図を想像することで、授業の流れを効果的に考えられるようになります。そして「教材内容の抽出整理」、「抽出した内容の考察」、「考察した内容の俯瞰・探究」という三段階のステップで学習を進めれば、子ども達の心に残る充実した授業ができます。

すばらしい言動が描かれた教材の意図

まず、偉人の心に残る行動が描かれた教材の意図を考えます。

このような教材が道徳の教科書に掲載されるのは、すばらしい行動を知り、その行動がなぜ心を動かすのかを考え、その中に込められた価値の大切さを理解し、実際の生き方に活かしてほしいという願いが込められているからです。

 このような教材の意図を踏まえると、心に残るようなすばらしい言動が描かれた教材を使って、価値について深く考える授業の進め方を導き出すことができます。

心に残ったことを考える展開の学習の流れ

まず、教材を読みながら印象に残った様子や言動を取り挙げ、発表し合って確認します。

 駅で目の不自由な人を案内する話は、福祉教室で学んだことを実行した様子が描かれています。この話では、「主人公が気付いたことや、言ったりしたりしたことで、えらい、すごいと思ったことはありますか?」と問いかけて、心に残った内容を教材文から抽出します。

児童からは「白杖の人に気付いたことがすばらしい」「手伝いをしようと何度もつぶやいて練習したことがすばらしい」「肩につかまらせたことがすごい」「『階段です。上ります』などと説明したことがえらい」「残りの段数を数えたことがすごい」など、心に残った数多くの内容が発表されることでしょう。

 次に、それらがなぜ心に残ったのかを発表し合って話し合います。この活動によって、行動のすばらしさの意味を理解し、行動のねらいや意図、その時の主人公の気持ちや考えなどを明確にします。

案内する話では、「どうして、えらい、すごいと思ったのですか?」と質問します。
児童からは「駅で困っている人に気付くのは難しいと思うのに、気付いたことはすごい」「困っている人に気付いても、声を掛けるのは勇気がいる。それを練習してからやったのはすごい」「目が見えない人の立場を考えて、階段があることを教えたり、段数を数えたりするのはとても優しいと思った」などの意見が述べられると思います。これらの意見には、「親切、思いやり」の価値が含まれています。児童は含まれる価値を自分の言葉で表現しているのです。

そして、それらを基に価値について考えを深めます。

案内する話では、心に残った理由を材料にし、主人公の気持ちや考えを想像しながら、価値について考えていきます。

具体的には「主人公が、目の不自由な人に親切にすることができたのはなぜだと思いますか?」と問いかけて、主人公の内面を想像します。
児童からは「白杖の人の様子を見て、困っていることが分かったから親切にすることができた」「相手の立場を考えることができたから、親切にすることができた」「困っている様子を見て、心配だったのだと思う」「福祉教室で学んだことを実行しようとしていたからできたと思う」などの意見が出されることでしょう。

これらの意見は、「親切、思いやり」の価値を子どもたちの言葉に置き換えて表現したものと考えることができます。ねらいの価値が浮かび上がってきます。

教師はそれぞれの意見に対して問い返しをするなどして、さらに価値を深く考えさせます。例えば「困っている人がいると、人はなぜ親切にしようと考えるのでしょうね?」などの問い返しをします。これによって、人の心には、困っている人に気付くと「何かをしてあげたい」という気持ちがあることが分かってきます。

 このような三段階の学習活動によって、心に残る内容が描かれた教材を使って、価値について考えを深めることができるのです。

 本書では、このような授業の流れを「心に残ったことを考える展開」と呼んでいます。展開パターンは次のようになります。


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