2026年現在、どういうリリース・プランが最適なのか考察してみました
最近、アーティストの制作やプロモーションを考える際、非常に悩ましいのが「リリース・プラン」です。どのタイミングで、どういう曲を、どのような形で世に出していくか。この戦略が何が正解か分からなくなっています。
サブスク以前の時代、バンドやシンガーソングライターなら「年間でアルバム1枚、シングル2枚」、アイドルなら「シングル4枚、アルバム2枚」というのが基本でした。
アルバムリリースの1~2か月後に合わせて年1回のリリース・ツアーを行う。アルバムのプロモーションがそのままツアーの告知に繋がるため、これが合理的なルーティンでした。
しかし現在、サブスクリプションサービスでは「1曲ごとのリリース」が基本です。
今もアルバムをリリースするアーティストは多いですが、熱心なファンでもない限り、アルバム全体を聴き通す人は減っています。
その結果、アルバムの中の1曲という扱いはプレイリストにも入りにくくなり、たとえヒットの可能性を秘めた良曲であっても、誰にも見つけられずに埋もれてしまうリスクがあります。
では、毎月1曲のペースでリリースすれば良いかというと、そう単純ではありません。
情報が渋滞してしまいますし、1曲を1年かけてバズらせていく事もある現代では、次々と新曲を出すことで前の曲が上書きされ、ヒットの芽を摘んでしまう可能性もあります。
かといって、年間4曲程度のリリースに絞ると、別の問題が生じます。
ベテランならともかく、新人の場合はワンマンライブに必要なレパートリーを貯めるのに4~5年もかかってしまうのです。
僕がプロデュースしていた「フィロソフィーのダンス」では、2016年から2019年の間、基本的に年間10曲を「1か月強に1曲」のペースでリリースしていました。定期公演で新曲をお披露目し、その日の夜に配信を開始する。そうすることで、ファンは「新曲を聴くためにライブへ来る」という動機が生まれます。
また、アイドルは振り付けを覚える時間も必要なため、一度に何曲もリリースできないという物理的な事情もありました。
年間10曲作れば1年に1枚アルバムが作れるという目論見もありました。
ここで、アルバムの存在意義についても触れておきます。アルバムの価値が相対的に低下しているのは事実ですが、フィジカル(CD等)の売上は配信収益とは桁違いに大きいという現実があります。
配信収益を1再生0.6円と仮定すると、100万回再生されても60万円です。今の時代、100万回再生のハードルは決して低くありません。
一方、フィジカルを店頭販売した場合、本体価格の50%がレコード会社の収入になるとすれば、3,000円のCDがわずか400枚売れるだけで60万円に達します。これが10万枚なら1億5,000万円です。
もちろん、製造費、在庫管理、流通経費が必要ないロングテール収益といった配信のメリットはありますが、短期間のキャッシュフローにおいてはフィジカルが圧倒的です。
批判はあっても、レコード会社が特典会などでフィジカルの販売に注力するのは、ビジネス構造上やめられないわけです。
話を戻します。
「ヒットを狙うなら曲数を絞って丁寧にプロモーションすべきだが、収益は少ない」
「収益を狙うならアルバムを出すべきだが、曲が埋もれるリスクが高い」
「リリースを絞ると新人はレパートリーが増えず、ベテランはライブがマンネリ化する」
このジレンマをどう解決すべきでしょうか。
最近増えているEPやミニアルバムのリリースは、この状況に対する折衷案のように見えますが、本質的な解決には至っていないと感じます。
僕の考えとしては、インディー・メジャー問わず、活動開始からの1年間は「毎月1曲」リリースするのが良いのではと思っています。
SNSを含めたアカウントの更新頻度が高まることで、アルゴリズムが「活性化しているアカウント」と判断し、レコメンドされやすくなるからです。同時に、ワンマンライブに向けたストックも確保できます。
1年経った段階で、最も反応の良かった曲をSNSでさらにプッシュし、MVを制作します。そこで曲がバズれば、「今、SNSで話題のアーティスト」として注目を集めることができます。もちろん早めにバズれば、その段階で戦略を変えていけば良いと思います。
ファンダムが出来た、そのタイミングで、豪華パッケージやボーナストラック、映像特典を付けた「フィジカル」をリリースします
もしブレイクしなければ、再び毎月リリースに戻ってサイクルを繰り返す。これを3年続けて結果が出なければ、根本的な方向性を見直すべきかもしれません。
都内で1,000人程度の動員ができるようになったら、年間4曲程度のリリースに移行して良いでしょう。
かつてのフィジカル全盛期でも、アルバムツアーで全曲を演奏するアーティストは稀でした。
実際に演奏するのはアルバムの半分程度です。全曲新曲にしてしまうと、ファンの満足度が下がってしまうからです。
「昔のヒット曲ばかり」では現役感が薄れますが、セットリストの1/4を新曲にする。これが、今の時代における最もバランスの良い構成ではないかと今の段階では思っています。
何かご意見があればお聞かせいただければ幸いです
