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移住日記/Week26_灼熱のダラスにもどってきました

ナイアガラで食べたインド料理ビュッフェ/23ドル

数か月前とは逆のルートをたどり、マサチューセッツからテキサスまで戻ってきた。今回はその道中の話である。


初日に向かったのはナイアガラ。マサチューセッツを出て、ひたすら西へ数百キロ走ったのに、まだニューヨーク州だということにまず驚いた。ニューヨーク州というと、どうしてもニューヨーク市が州の大半を占めているような錯覚をしてしまうのだが、実際にはずいぶん横に長い。おまけに州都もニューヨーク市ではなくオールバニである。ニューヨークという名前が強すぎて、他の街がだいぶ割を食っている気がする。

ナイアガラといえば、もちろん滝である。何がすごいって水の量がすごい。当たり前の感想だが、あれだけ大量の水が絶え間なく落ちているのを見ていると、なぜかぼんやりといつまでも眺めていられる。YouTubeに焚き火だけを延々流す動画があって、気づくと見続けてしまうという話を聞いたことがあるが、あれに近いのだろうか。火と水で真逆なのに、人間は動き続けるものを見ると脳を休めたくなるのかもしれない。

そしてナイアガラでもう一つ驚いたのが、インド料理店の多さだった。周囲を見てもインド系と思しき観光客がかなり多い。なぜなのだろう。巨大な水の流れに惹かれるのだろうか、と考えたところで、ガンジス川のことが頭に浮かんだ。

そういえば東京でも、西葛西にはインド出身の人が多く住んでいると聞く。江戸川がガンジス川を想起させるから、という話をどこかで聞いたような記憶もあるのだが、真偽のほどは知らない。ナイアガラも同じ理屈なのだろうか。いや、世界中のインド人を水辺に集めようとするのは、いくらなんでも話が雑すぎる。

そんなことを考えつつ、せっかくなのでインド料理のビュッフェへ行った。滝を見に来て、昼食にインド料理を食べる。アメリカ旅行なのに、何をしているのかわからなくなってきたが。。。
バターチキンカレーはしょっぱかったけど、キノコを使ったカレーは大変美味しかった。そして、お店でも「過剰な食べ残しは罰金」という説明があった。火のゆらめきや水の流れに吸い寄せられてしまうように、やはり食べ放題料理を過剰に取ってしまうのは人間の業なのだろうか。そんなことを考えさせられるナイアガラの滝だった。

ナイアガラを後にし、今度はひたすら南へ下っていく。オハイオ、ケンタッキー、テネシー、アーカンソーを経由してダラスへ戻る予定である。
しかし、このあたりのドライブについて文章を書こうとすると、本当に困る。
書くことがないのである。
一言でいえば、北海道みたいな景色がずっと続く。高速道路の両側には緑があり、森があり、ときどき畑がある。前方にはトラックがいて、それを追い抜く。後ろから速い車が来れば車線を譲る。そしてまた森を見る。その繰り返しである。
オハイオあたりまではまだ立派なレストエリアもあったのだが、南へ下るにつれて施設までだんだん簡素になっていく。駐車場とトイレだけ、という場所も増えてきて、「休憩とは本来これで十分なのだ」とでも言われているような気がする。
そして相方によると、「南へ行くほど、ウインカーを出さずに車線変更する車が増える」らしい。
そんな地域差があるのかと思ったが、言われてみると、確かにそんな気もしてくる。人間、一度そう言われると、ウインカーを出さない車ばかり目につくようになるから危険である。そのうち「この車はケンタッキーだからまだ出す」「テネシーに入ったからそろそろ出さなくなる」などと勝手な分類を始めそうである。

テネシーから先は、3か月前に北上したのと同じ道を逆方向へ走る。あの頃はまだアメリカで運転すること自体にビビり散らしていたなぁと少し懐かしく思いながらハンドルを握った。
もっとも、今回も普通にビビった。
アメリカの高速道路には、なぜかいろいろな物が落ちているのである。特によく見るのがタイヤの破片で、大きな黒いゴムの塊が突然前方に現れる。カーナビも親切に、
「Object on the road ahead!」
とか、
「Hazard reported ahead!」
などと教えてくれる。
ありがとう。
でも、その情報を聞いたこちらとしては、「で、どうすれば」という気持ちである。
しかも、これも気のせいかもしれないが、南へ行くほど道路上の落とし物が増えていくような気がする。ウインカーといいタイヤの破片といい、南部に対する偏見が順調に育っている。よくない。

そんなこんなでアーカンソー州に入ると、今度はトラックが一気に増えた。
しかし、周囲に広がるのは畑ばかりである。
「この州、何があるんだろう」
と思ってスマホで「アーカンソー州」と入力したところ、検索候補に「アーカンソー州 何がある」と出てきた。
みんな同じことを考えている。
少し安心した。
景色が変わらないので、暇になると前を走るトラックの荷台を眺めるようになった。「何を運んでいるんだろうね」などと相方と言いながら走っているうち、妙なことに気づいた。
かなりの数のトラックに、
「WE'RE HIRING」
というステッカーが貼られているのである。
中には「週末は家で過ごせます!」みたいな文句まで書かれていた。
求人広告がトラック自身に貼られて走っている。
考えてみれば合理的である。トラック運転手になりそうな人が最もよく見る場所は、高速道路なのかもしれない。
最近はAIによって大卒向けのホワイトカラー求人が減っているという話をよく聞く。一方、こうして高速道路を走っていると、「運転手募集」「整備士募集」といった看板を頻繁に見かける。人が余っている仕事と足りない仕事が同時に存在するという、世の中のややこしさを感じる。
もっとも、そういうことを考えていた私自身も、数か月前まで会社員だったのだから、あまり他人事ではない。

そして、ようやくダラスへ到着。
家のドアを開けた瞬間、懐かしい家の匂いがした。
2月に初めてこの家へ移住してきた日のことを思い出し、この半年、なんだかんだでよくやってきたなぁと、少しだけ感慨深い気持ちになった。
ところが、その感慨はすぐに終了した。
暑い。
あまりにも暑い。
日中の気温は40度近い。
昔見たドラマで、「暑いと言ったら100円」というルールを作る場面があったような記憶があるが、この暑さなら100円くらい喜んで払う。「暑い」と言うたびに1度下がるなら、一万円分くらい連呼してもいい。
移動中は外食続きだったので、もう何か普通のものが食べたい。そこで冷凍庫を開けると、3か月前の自分が残していった未開封の味噌や、真空パックしたサーモンが出てきた。
えらい。
3か月前の私、よくやった。
旅を終えて一番感謝した相手が、過去の自分になるとは思わなかった。
ナイアガラの滝も、延々続く森も、アーカンソーの大量のトラックもそれなりに思い出深かったが、約3000キロを走って最後に心を動かされたのは、冷凍庫の味噌だった。

アーカンソーのトラックコレクションから。
左のトラックは安全運転だと1マイルにつき1ドル給与上乗せってことかな?

今回の移住日記でやってきて半年過ぎたことに気づきました。
ご覧いただきありがとうございます!

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