移住日記/Week19_熱波がやってきました
ALDIのシャーベット(ストロベリー味)/3.79ドル
それは先週、コネチカットで地元の人に評判だというベーカリーへ出かけた帰り道の一言から始まった。
「あ、来週めっちゃ暑くなるらしい」
天気予報アプリを眺めていた相方によると、木曜日の予想最高気温は38度。
熱波である。
ここのところ、この日記では「爽やかな初夏」だの、「熱波」だの、「肌寒い」だのと、季節が忙しく入れ替わっているようなことばかり書いている。ぼんやり暮らしているうちに一年経ってしまったのではないかと思うほどだ。
いや、それはさすがに大げさか。
しかし、熱波予報だけはどうやら本当らしい。
というわけで、我が家では急遽、「仮住まい緊急熱波対策会議」が開かれることになった。
なぜそこまで大げさなのかというと、今住んでいる仮住まいがなかなか年季の入った建物だからである。
築百年以上。
しかも部屋は最上階。
最上階というより、屋根裏部屋と言ったほうがしっくりくる。
屋根裏部屋に住んで初めて知ったことがある。
屋根というのは、日に照らされると暖かくなるのである。
いや、そんなことは子どもでも知っているのかもしれない。
しかし実際に住んでみると、その「暖かくなる」というのが思っていた以上だった。
昼間、斜めになった天井を触ると、ほんのりどころかしっかり温かい。
しかも、この家は石造りである。
石造りというと、なぜか『三匹の子ぶた』を思い出してしまう。
強風には強い。狼にも強い。
しかし熱波には弱い。
石というのは温まりにくい代わりに、一度温まるとなかなか冷めない。
つまり夜になっても家中が「ほかほか」なのである。
三匹目の子ぶたも、狼ではなく熱波に襲われていたら案外あっさり負けていたのではないだろうか。
いや、熱波攻撃って何だ。
そんなわけで、我が家の熱波対策会議では、
「冷房は外出中も最低温度でつけっぱなし!」
「ブラインドは昼間ずっと閉める!」
「水曜と木曜は火を使わない!」
という三か条が採択された。
こうして迎えた月曜日。
朝起きると部屋はむしろ少し寒いくらいだった。
外も爽やか。
散歩道ではバーニーズ・マウンテン・ドッグの福ちゃんが満面の笑みで尻尾を振って歩いている。
「本当に暑くなるの?」と疑いたくなるくらい平和である。
しかし、不穏な予兆はあった。
まず、冷凍庫の中身が溶ける事件が発生。
原因究明の中で、単に私が冷凍庫の扉をきちんと締めていなかったことが原因であることが判明。
一方で相方も、暑さ対策で作っておいたラタトゥイユを昼に出したところ、
「やっぱり温かいもの食べたい」と言い始める始末。
熱波が来る前に、我が家の団結のほうが崩れそうだった。
しかし、水曜日の午後。
我々は熱波を甘く見ていたことを知る。
帰宅して玄関を開けた瞬間、暑い。
冷房をつけたまま外出という取り決めを忘れたのかと思った。
しかし、ちゃんと動いている。
なのに暑い。
天井を触る。
ほかほか。
壁もほかほか。
ソファもほかほか。
カーペットもほかほか。
洗面所の化粧水も、コンタクトレンズの保存液も、誇張ではなくお風呂のお湯と同じような温かさだ。
冷房は全力で働いている。
扇風機も回っている。
しかし、その扇風機に向かって思わず、
「君、本当に仕事してる?」
と問い詰めたくなるくらい風を感じない。
こうなると、人間にできることは案外少ない。
アイスを食べることくらいだ。
以前、コーンシロップの話を書いたあと、Geminiに教えてもらったコーンシロップ不使用のALDIのシャーベットが思いのほかおいしく、あっという間になくなってしまった。
そして部屋の中でぐったりする。
しかし、暑さのせいだろうか、頭が変なことを考え始める。
どれくらい暑さでおかしくなるかというと、以前ラジオで聞いた「BONIQは43度くらいでサーモンを低温調理する」という話を思い出し、「低温調理される鮭ってこんな気持ち?」などと思い始めるくらいである。
さらには、なぜか急に家の缶切りが使いづらいことを思い出し、
「次世代缶切り」
と検索まで始めた。
次世代缶切りとは何なのか。
私にもわからない。
暑さとは恐ろしい。
そんなこんなで熱波のピークを迎えた翌朝。
新たな事件が起きた。
ハエが大量発生したのである。
Geminiに聞くと、
「熱波の際は、ハエも暑さを避けて屋内へ避難することがあります」
とのことだった。
避難してくる気持ちはわかる。
しかし、その避難所に我が家を選ぶのはやめていただきたい。
私は即席のハエたたきを片手に、朝から避難民との攻防戦を繰り広げることになった。

