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『曽根崎心中』(1978)増村保造~歌うような過剰な演技の台詞まわし~

(C)1978 藤井慶太 / TOHO CO.,LTD

久しぶりにATG映画を見た。学生の頃、ATG映画ばかり見ていたのが懐かしい。あらためて見るとヘンな映画だ。終始、宇崎竜童と梶芽衣子は芝居がかった過剰な演技で台詞を言い合う。悪役の油屋九平次演じる橋本功がまた凄い。意地悪そうな顔にあざ笑う声がこれまた過剰な憎らしさだ。徳兵衛演じる宇崎竜童に偽の証文を書かれたと町衆たちと暴力を振るって池に突き落とす場面の極悪非道さは凄まじい。まさに鬼のような形相だ。

映画監督の塩田明彦は『映画術』という本の中で、増村保造のこの『曽根崎心中』を「映画が歌う」と形容している。まさに「音楽のような映画」だと。台詞と台詞の間に「間」を作らず、「うれしい、楽しい、だけと悲しい」といったように「言葉を繰り返すことによってグルーヴ感が生まれる」と指摘している。それが「情念を加速させる装置」になっていると言うのだ。反復する言葉が「祈り」「念仏」「呪詛」につながっていく。

宇崎竜童の大阪弁の台詞まわしにやや違和感を感じ、彼はミュージシャンであり役者としての力量不足を私は感じてしまうが、一点を見つめ続けるお初を演じる梶芽衣子の思い詰めた表情は鬼気迫るものがある。「死にたい。心中したい」という強い思いが、徳兵衛と一緒に死ねることになって、「徳さまと一緒に死ねるのは幸せじゃ。」と言って死への道を真っ直ぐに突き進む。

銀二貫を九平次(橋本功)に騙し取られ、ボロボロに殴られてお初のところにやってきた徳兵衛(宇崎竜童)は女郎屋の床下に隠れ、お初(梶芽衣子)が憎き九平次に「徳さまに罠をかけて、陥れたんか。そう思うても、なんの証拠もない。理屈もたたん。やっぱり、徳さまは死ななならん。死ななならんが、死ぬ覚悟が聴きたいのう。」と言うと、床下の徳兵衛が、お初の足に顔を寄せ、死ぬ覚悟とともにお初へのしい思いを伝える場面がある。言葉で伝えるのではなく、そのアクションがなんともなまめかしい。そして梶芽衣子の足が神々しく、美しく見える。

過剰な演技と歌うような台詞まわし。人形浄瑠璃や歌舞伎の演目となってきた近松門左衛門のこの有名な悲恋物語だからこそ、余計に悲恋を強調するような芝居がかった演技にしているのだろう。最初は違和感があったが、リアリズムを度外視して、そういうもんだと思って見ると意外に面白い。


1978年製作/112分/日本
原題または英題:Double Suicide at Sonezaki
配給:ATG

監督:増村保造
脚本:白坂依志夫、増村保造
原作:近松門左衛門
製作:藤井浩明、木村元保、西村隆平
撮影:小林節雄
美術:間野重雄
音楽:宇崎竜童
録音:太田六敏、宮下光威
照明:佐藤勝彦
編集:中静達治
キャスト:梶芽衣子、宇崎竜童、井川比佐志、左幸子、橋本功、木村元、灰地順、目黒幸子、青木和代、大西加代子、渡部真美子、野崎明美、千葉裕子、大島久美子、加藤茂雄、伊庭隆、山本廉、伊藤正博、麻生亮、鹿島信哉、弾忠司、飯塚和紀


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