冬のスケジュール<掌小説>


電話をするまでもない。
三軒先に、住んでいる。ゆくのが早い。
一応は、手土産を。チョコレート。
某社の板チョコだ。安売りしていたので、少しまとめて買っといた。
3,4種類。少し高級ななもあるけども、これは悪までわたし用。
普通のでいいや。
冷蔵庫から2枚を取り出す。味は、ブラックで。
「昨今、チョコも高いからねぇ」
持ち手月のビニール袋に、荒っぽく入れた。これで有無は言わないだろう。
窓に鍵を掛け、玄関を出る。ドアノブに再び鍵。
横一直線。歩いたって40秒。
同じマンション、同じ階。
「成増 力(なります つとむ)」
ふりがなつきの表札を瞬間だけ見て、呼び鈴を押す。
「はい、どなた?」直ぐに反応。
「わたし。他のみがあるんだけど」
「あっ、今、開ける」鍵が外され、のっそり兄が出て来た。
「明日、車出して欲しいんだけど」
「いいけど。まぁ、入れよ。今、甘酒を飲(や)ったんだ」
下戸の兄が唯一、飲める酒の類いだ。
「だと思って、持って来たわよ。チョコレート」
「へへへ。サンキュー」
成功した。

炬燵もキチンと、なっている。
炬燵台には、新聞紙が敷かれている。汚れても、丸めて棄てればいい。
キチンとさんの、知恵袋。兄は綺麗好きである。
「蜜柑も食う?」
冷蔵庫から4つ手に取り、兄が炬燵の座に座る。
「お疲れ、乾杯」
甘酒の肴はチョコレートと蜜柑だ。

別居中の兄は今、一人暮らしも同然だ。
離婚調停になるかも知れない。
「で、なったらどうするの?」
「どうするって。俺が悪いんじゃねーもん。勝手に向こうが不倫して、勝手に荷物まとめて出て行って、勝手に今、実家だかどこだかにいるらしい」
「実るのかしらね?その不倫」
「さーね。お遊びで終わるんじゃね?プレイボーイらしいから」
「そっか」我が身にグイと来た。
「そういう男は、元々、結婚する気なんかないんだよ、一時(いちじ)の宴、お遊び相手と楽しく過ごせりゃ、それでいいの。満足な訳。そういう男に引っ掛かる女も、元を正せば同じ事」
やたらとチョコを食べては、甘酒を煽る。
「だと思うだろ。ねぇ~っ、我が妹・歩実(あゆみ)ちゃん!」
「そうよねぇ~っ、そうだわ、我が兄・力(つとむ)くんっ!」
わざと真似しておどけたが、悪まで心は混沌とした。
迷っていた、不安であった。

布団干しが面倒臭くい。食洗器があれば、食器洗いも楽になる。
洗濯機も、乾燥機つきがいいなぁ~っ。掃除機だって、、、、、。
ぐちゅぐちゅ兄が言って来る。

「だったら買えばぁ。明日。〇✕電機が行き先だから」
甘酒を軽く飲む。
「1つぐらい、買ってもいっかぁ」半ば、できあがっている。

本当だろうか?家電に関して、いつもシビア。
その場のノリでは決して買わない。
「本当に?本当に1つぐらいは、買うつもり?」斜(しゃ)として見る。
「うん。けど、開店と同時に入店。用だけ済ませ、さっさと帰って来る」「目の保養タイムはないの?」
「ない。冬は早くに終わっちゃうからねぇ。午後の3時で結構、暗いし。大変なのよ、スケジュール」
頬杖をつき、更に加える。
「〇✕電機だろ。あそこって開店と同時に入った客には、全て10%オフ券を配ってるんだ」

                              <了>



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