This is I
『This is I』を観た。
まず思ったのは、自分らしく生きるって、やっぱり素晴らしいなということ。そして、そんな自分を「それでいいんじゃない」と認めてくれる家族がいることも、とても素敵だと思った。
自分らしく生きる。
言葉にすると簡単だけど、実際にはそんなに簡単なことじゃない。人の目もあるし、偏見もある。何より、自分自身が自分を受け入れることだって、きっと簡単ではない。
この作品に描かれていることだけでも、相当辛かったんだろうと思う。でも、映画には描かれていないところに、もっと辛くて、もっときついことがたくさんあったんじゃないかなとも感じた。
だからこそ、自分の居場所を見つけて、少しずつ自分らしく生きていく姿はよかった。誰かに「それでいい」と認めてもらえることって、思っている以上に大きいんだと思う。

ただ、観ていて少し冷めてしまったところもあった。
それが、和田先生の死。
もちろん、実際にあった出来事なら、それを描く意味はあると思う。でも映画として観ていると、「ここで和田先生を死なせて、感動させようとしているのかな」と感じてしまった。
日本人って、こういう展開に弱いのかもしれない。大切な人が亡くなって、その人の想いを胸に残された人が前を向いていく。『フランダースの犬』の結末が日本で受け入れられていることにも、少し似ている気がする。
もちろん、そういう物語が悪いわけではない。泣けるものは泣けるし、そういう感動が好きな人もいると思う。
でも私は、逆に少しチープに感じてしまった。
だったら、和田先生の「死」よりも、2人の「関係」をもっと見たかった。
和田先生は主人公にとって、どんな存在だったのか。2人は出会ったことで、どう変わっていったのか。和田先生との出会いがあったからこそ、主人公はどうやって自分らしく輝けるようになったのか。
そこをもっと丁寧に描いてほしかった。
そうすれば、最後に和田先生が亡くなったときも、「先生が死んだから悲しい」ではなく、「この2人だから、この別れがこんなに悲しい」と感じられたんじゃないかなと思う。

歌と踊りも印象に残った。ちょっと『ラ・ラ・ランド』っぽくて、華やかで楽しい。こういう演出自体は嫌いじゃないし、むしろもっとあってもよかった。
ただ、歌や踊りがもう少し物語とつながっていたら、さらによかったと思う。
和田先生と出会って、いろんなことがあって、少しずつ自分を受け入れていく。そして最後には、自分の人生を自分の足で歩いていく。
その「自分らしく輝いていく過程」を、歌や踊りで見せてほしかった。
感動させるための歌や踊りではなくて、「生きることそのものが輝いていく」という演出だったら、もっとこの作品らしかったんじゃないかなと思う。

そう考えると、私はこの作品に対して「もっと見たかった」という気持ちが強いのかもしれない。
もっと主人公の苦しさを見たかった。もっと家族との関係も見たかった。そして何より、和田先生との関係をもっと見たかった。
それでも、この作品を観て、自分らしく生きることについて考えさせられた。
自分らしく生きるには、自分自身の勇気だけじゃなくて、それを認めてくれる人も必要なんだと思う。
「あなたはあなたのままでいい」と言ってくれる人がいる。
それだけで、人は少しだけ自分らしくなれるのかもしれない。
だから、この作品が嫌いなわけではない。むしろ、描こうとしているテーマはすごく好きだった。
だからこそ、最後の「感動させ方」が少し惜しかった。
誰かの死で泣かせるのではなく、2人が出会って、一緒に過ごした時間そのもので泣かせてほしかった。
そのほうが、この作品が描いていた「自分らしく輝く」ということが、もっと強く心に残った気がする。
