アニメ版『ルックバック』を見て、なんで涙が出たのか、いまだによく分からない。。
Netflixで、ずっと気になっていたアニメがありました。
『ルックバック』。
ずっとおすすめに出てくるので、タイトルだけは知っていました。でも、なかなか見る気になれなかった。
というのも、「漫画家の話でしょ?」と思っていたからです。
以前、佐藤健さんと神木隆之介さんが出演していた『バクマン。』を見たことがあります。
漫画家を目指す人たちの苦悩や、絵を描くことへの執念、才能のある人間とそうでない人間の葛藤……。
そういう世界を描いた作品でした。
でも、どうも自分には入り込めなかった。
「漫画家を描いた漫画って、結局こういう感じなのかな」という印象があって、「もういいかな」と思っていたんです。
だから『ルックバック』も、「どうせ同じような感じでしょ」と、かなり失礼なことを思いながら見始めました。
最初は、やっぱりそうでした。
小学生の藤野という女の子が、学校新聞に4コマ漫画を掲載している。
それがちょっとした人気になっていて、クラスの中でも自分の立ち位置を保つようなものになっている。
ところが、別のクラスにいる不登校の京本という女の子が描いた絵が、学校新聞に掲載される。
それを見た藤野は愕然とする。
「自分より、はるかに上手い。」
そこから藤野は、京本に負けたくない一心で絵を練習する。
でも、どれだけ描いても追いつけない。
そして、ある時、「もういいや」と絵を描くことをやめてしまう。
まあ、よくあると言ってしまえば、よくある話です。
才能のある人間を目の前にして、自分の才能の限界を思い知らされる。
努力しても追いつけない。そして挫折する。
クリエーターとか、芸術とか、そういう世界ではありがちな苦悩なのかもしれません。
正直、このあたりでは少し離脱しかけていました。
「やっぱり、こういう話か……」と。
でも、「もう少し見てみるか」と、そのまま見続けました。
そして卒業式。ここからでした。
学校の先生から、藤野に頼み事をされます。
「京本の家に卒業証書を届けてほしい」
絵を描くことなんて、もうどうでもいい。
藤野にとっては、過去のことです。
ところが、その「どうでもいいこと」が、二人を出会わせることになる。
そして分かるんです。
京本は、藤野の4コマ漫画をずっと見ていた。藤野のことを、ずっと尊敬していた。
自分なんかよりずっと絵が上手いと思っていた藤野が、実は京本の絵を見て挫折していた。
この二人の関係が、ここで初めてつながる。
これは、ちょっと良かった。
いや、かなり良かった。
「自分より才能があると思っていた相手が、実は自分のことを尊敬していた」
人って、案外こういうものなのかもしれない。
自分が勝手に劣等感を抱いている相手も、その人から見れば、自分にはないものを持っている。
そんな二人が出会って、一緒に漫画を描き始める。
ここからは、まさに二人の青春です。
漫画を描いて、評価されて、少しずつ前に進んでいく。
いわゆるサクセスストーリー。
最初に思っていた「漫画家の苦悩を描いた話」という感じから、少しずつ違うものになっていきました。
でも、二人はずっと一緒ではありません。
京本は、「もっと絵が上手くなりたい」という思いから、二人で漫画を描くことから離れていく。
藤野は一人で漫画を描き続ける。
そして……事件が起きる。
ここから先は、まだ見ていない人のために詳しくは書きません。
ただ、ここで初めて、「これは漫画家の話じゃないんだ」と思いました。
もちろん、漫画を描く人の話ではあります。
でも、本質はそこじゃない。
何かを好きになること。
誰かに憧れること。
誰かと出会うこと。
一緒に何かを作ること。
でも時として、離れてしまうこと。
それでも、その人との時間が自分の中に残り続けること。
そして、「もし、あの時……」という、どうしようもない気持ち。
たぶん、そういう話なんです。
そして、気がついたら泣いていました。
でも、自分でも、「なんで泣いてるんだ?」と思ったんです。
悲しいから?
感動したから?
二人の友情が素晴らしかったから?
もちろん、それもあると思います。でも、それだけではない気がする。
たぶん、この作品を見ているうちに、「自分の人生にも、こういうことがあったな」という記憶を、勝手に引っ張り出されたんじゃないかと思います。
昔、一緒に何かをやった人。
憧れた人。
自分には到底かなわないと思った人。
逆に、自分のことを思ってくれていた人。
その時は何とも思わなかった出会い。
後になって、「あれは自分にとって大きな出来事だったんだな」
と気づくこと。
人生って、そういうものなのかもしれません。
その瞬間には分からない。
何でもないように過ぎていく。
でも、何年も経ってから振り返ると、「あの人と出会ったことには意味があったんだ」と思う。
『ルックバック』というタイトルも、そういうことなのかなと思いました。
振り返る。
過去を振り返る。
そこにあったものを、もう一度見る。
最初は、「漫画家の話でしょ」なんて思っていた自分が恥ずかしくなりました。
これは、漫画家の話というより、「人が誰かと出会い、その出会いによって、その後の人生が変わっていく話」なんだと思います。
そして、何かを作ることの意味も描いている。
漫画でも、絵でも、音楽でも、仕事でもいい。
誰かに届くと思って作るものもあれば、ただ自分が好きだから続けるものもある。
でも、自分が作ったものが、知らない誰かの人生に影響を与えることだってある。
藤野にとっては、何気なく描いていた4コマ漫画。
京本にとっては、それが自分を外の世界につなげてくれたものだった。
そう考えると、「何かを作る」ということって、思っている以上にすごいことなのかもしれません。
そして最後まで見終わって、やっぱり思いました。
「なんで俺、こんなに泣いたんだろう?」
いまだに、よく分かりません。
でも、分からなくてもいいのかもしれない。
映画やアニメを見て涙が出る時って、頭でストーリーを理解したから泣くわけじゃない。
自分の中にある何かと、作品の何かが、一瞬だけ重なった時に出てくるものなのかもしれません。
『ルックバック』は、最初は全然期待していませんでした。
むしろ、「また漫画家の苦悩を描いた作品か」くらいに思っていた。
それなのに、見終わった自分は、しばらく画面の前から動けませんでした。
そして今でも、「あの涙は何だったんだろう?」と思っています。
たぶん、それがこの作品が自分の中に残った理由なのかもしれません。
久しぶりに、「見てよかった」と思えるアニメでした。

