1980年/1989年の『地獄の逃避行』評と男達から見た〈ジェームス・ディーン〉
『バッドランズ/地獄の逃避行』(1973/米/Badlands) ※2025年に初公開
映画『地獄の逃避行』(1973/米)は、実在の人物チャールズ・スタークウェザー(1938-1959)が「当時19歳の1957年11月から1958年1月にかけて、ネブラスカ州とワイオミング州で11人を殺害したアメリカの連続殺人」が基になっているようですが、この人物と、アメリカ人俳優のジェームズ・ディーン(1931-1955)とは、どういうつながりがあるのかイマイチ分からず。スタークウェザーがJ・ディーンに憧れていたのか、映画化の際に主演のマーティン・シーンのイメージをJ・ディーンに近づけたのか、実際の犯行時に当時のメディアが犯人を「J・ディーンに似ている」と報道したりしてたのか。
堤 夏彦氏の解説。『70年代アメリカン・シネマ103』(1980年)314頁より。
_『悪い土地』Badlandsは78年の『天国の日々』にも劣らないテレンス・マリック監督の処女作。マーティン・シーンがタダモノではない大きさを見せた最初の作品でもあり、シシー・スペイセクの出世作でもある。サウス・ウエストの悪い土地を舞台に、貧しく愚かな青春を殺人ゲームに賭けて散ってゆく50年代のボニーとクライドの物語である。彗星のように出現した“時のスター”ジェイムズ・ディーンの再来だとヒーローのチャールズ・スタークウエザー(シーン)が周囲におだてられたりするエピソードがある。深々と詩情をたたえた美しい映像(撮影はブライアン・プロヴァイン、タク・フジモト、スティヴァン・ラーナーの三人)は既にここにも見られ、僅か2本の作品だけで大監督と呼ばれるマリックの今後は更に楽しみである。
『珍作ビデオのたのしみ』(1989年/青弓社)から、小田桐人氏による寄稿。
_原題は「BADLANDS」。_初めてこの映画を見たのは十数年前のロンドンの映画館であった。少女の日記を読むようなモノローグで展開されるこの映画に新しい未知の神話空間に出会ったような衝撃を受けた。その後もう一度この映画を見たくて捜し回ったが、仲々見つからず、結局は輸入盤のレーザー・ディスクでようやく手に入れることが出来た。そして一九八九年にようやく「地獄の逃避行」というタイトルで発売されることになったアメリカ映画の幻の名作である。_無軌道な殺人を犯して逃走する若い男女の道行はその非情な犯罪とは異なったイノセントな神話的世界を造形する。淡々と流れて行く美しい映像、その背後に流れる風の音やエリック・サティの音楽、自然の描写、それらはちょうど新しい天使たちを招聘するための舞台装置のようだ。そして天使たちの青春の一瞬の輝きが弾けて行く。(小)
私の評価は↓投稿済み。淡々とした映画で期待値を上げずに観る方がいい。
男はわかってない
— 第3新東京市 (@gyoza_kusai) February 11, 2025
女の理想は「白馬に乗った王子様」ではなく「私だけを守ってくれる殺人鬼」だから https://t.co/EbvP9ydxfT
■戦中派の男性4名による「1976年のジェームス・ディーン評」
『文藝春秋デラックス』昭和51年5月号「懐かしのロマン・世界の映画」収録の座談会【あゝ、懐かしきはデュヴィヴィエさま〈昭和20年代〉】より。
私はジェームズ・ディーンの映画は『理由なき反抗』だけ観た記憶がある。
↓の「著名人との関係」と「楽曲」の項目を、個人的には興味深く読んだ。
★ジェームズ・ディーン(1931-1955)
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・荻 昌弘(1925-1988) 映画評論家 ※座談会の司会※
・開高 健(1930-1989) 作家
・手塚治虫(1928-1989) 漫画家
・虫明 亜呂無(1923-1991) 評論家
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荻 ジェームズ・ディーンは、どう思いました?
開高 わたしは、ちょっと合わなさ過ぎるね(笑)。
手塚 ぼくはもう小森和子(※映画評論家|1909-2005)さんの影響受けましてね、いいもんだと自分に言いきかせて見たんですがね。
開高 あの人、幾ら年とっても、映画見てる間だけは、感情移入で夢中になって、モイストするって(笑)。だからジェームズ・ディーンが燃えると、彼女は湿るんだよ。
虫明 女ってみなそうですよ。バーン・アンド・モイストですよ(笑)。だからジェームズ・ディーンというのは、そういう意味ではね。
開高 母性本能を掻き立てるんじゃないのかしら、あの小僧は。何でこんな甘ったれ小僧がこんなにヒットするのかわからなかった。嫉妬じゃないよ(笑)。ボンクラだぜ、あいつ。
荻 「エデンの東」見た時ショックだったのは、そこまでシネスコの広さにウンザリしてたのが、ひたすらまわりのいらないところは暗くしちゃって奥行を使っているでしょ、こんなに柔軟にシネスコ演出や演技ができるのかってビックリした。_試写で「エデンの東」見たあと、“博雅”に行って、映画会社からもらったディーンのキャビネをまたあらためて見ながら中華そば食ったのまざまざと覚えている(笑)。それで編集部に帰って、さっそく彼へのオマージュを書いて、印刷所に出したら、ワーナーから電話かかってきて、“死にました”って……。そのときのショックは、ほんとによく覚えている。
虫明 ジェームズ・ディーンなるものが、いいとか、悪いとかいうことじゃなくて、女をモイストさせるのをもっている。ディーンとかドロン(※アラン・ドロン)というのは、ほんとにいやったらしいけど、それを持っているんだね。
手塚 しかし、それはやっぱり俳優が、ある程度ばか的な演技しないと。
開高 だからいまあげた二人、ばかじゃない(笑)。
手塚 だから「理由なき反抗」なんてのは、ちょっと理知的になってきたでしょう、だからだめになっちゃったんだね。
開高 「ジャイアンツ」のあの石油成金、なんだいあのチョビヒゲ(笑)。
虫明 でも「ジャイアンツ」で初めて土地を買えて、あの独特のビクター・ヤングのあのバリエーションの音楽で、手を振るとこなんて、全女性がポーッとなるということはわかるわ。
この座談会での手塚の発言だけで、いつまでも「現在の流行(現在大衆に支持されているもの)」に対して、柔軟というか、貪欲なのがよくわかりますね。
男だらけの「ロッカールーム発言」みたいなものが見られる気もするが、私が大好きなコッポラの『アウトサイダー』を彼らが観たらきっとけちょんけちょんの評価だろう。田舎のオバさんが10代の時に書いた小説が原作で、イケメンボーイズグループ主演の青春メロドラマ学芸会みたいな映画だから。
「女をモイストさせる」男の魅力は、男には理解しにくいし、逆に「男をエレクトさせる」?女の魅力は、女にも理解しにくいんだろう。私はいずれにも詳しくないですが、ジェームズ・ディーンもエルヴィス・プレスリーもアラン・ドロンも「モイストさせる」魅力があるんだろう。映画『地獄の逃避行』の主人公の男なんか「顔がいいだけのクズ」だし。漫画家の畑中 純(♂)氏はプレスリーの大ファンだったが、多分、楳図かずおさんも同じだろう。
エルヴィス・プレスリー(1935-1977)は熱烈なJ・ディーンファンだそう。
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