BECK→THE BAND
僕が10代の時だ。
冴えない中学生がロックに出会い、ギターを始め、バンドにのめり込んで行く「BECK」と言う漫画が流行った。
作者はゴリラーマンの作者ハロルド作石さん。
自分は何者でもない。
永遠に曇りがかったこの冴えない日常が続いていくんじゃないか?
と言った10代特有の焦りや窮屈な世界、周りと足並みが揃わずうまくやっていく事が想像出来ない不安、承認欲求が満たされず本当の意味で自分を愛す意味が何なのか、まだまだわからなかった俺は名前のつけることのできない感情に真綿で首を絞められるような感覚で生きていた。
ある日、「気が狂いそう」とイントロも無しに叫びだす歌が耳に飛び込んできた。
「THE BLUE HEARTS」だった。
「人に優しくしてもらえないんだね」
そうなんだ。
強がってるけどもう負けちゃいそうなんだ。
「僕が言ってやる、でっかい声で言ってやる
聞こえて欲しい。
あなたにも、がんばれ」
俺は1人じゃないんだと思った。
俺みたいな奴が世界にもいる気がした。
透明で物体の持たない暗闇をヒロトとマーシーとカワちゃんとカジくんは照らしてくれた。
間違いなく、あの日以前と以降の命の質が変わった事を今でもはっきり覚えている。
ある日、TSUTAYAで白いTシャツを着た少年が銃弾が撃ち込まれたレスポールを担いでいる表紙の漫画と目が合った。
その当時では珍しい音楽の漫画なんだなと思った(当時、音楽漫画は成功しないと言われていた為、作品自体が少なかった)
なんとなく手に取り、家に帰って読み始めた。
そこには俺と同じように自分が何者なのかわからず、世界に絶望している少年のコユキがいた。
あっという間に読み切り、気がついたらもう一巻、気がついたらもう一巻と片道チャリで20分はかかるTSUTAYAを5往復した。
コスパが悪すぎるw
10代とはコスパが悪いものだ。
コユキはリュウスケと言う16歳の天才ギタリストに出会いBECKと言うバンドに加入するのだがリュウスケを含めたメンバーはまぁ個性的な面々で今の俺なら絶対組みたくない奴が何人かいるw
でも、その当時の俺は強い個性を放つメンバー達にとても憧れた。
そしてそのメンバーとの関係の中で苦悩しながら自分の人生を自分で決断して歩むコユキに憧れた。
少年漫画でもあるからだろうが、仮想敵ビジュアル系バンドの大御所プロデューサーの蘭がめちゃくちゃな嫌がらせをしてきたり、世界クラスのイベントを仕切るギャングのボス、レオン・サイクスに目をつけられ殺されそうになったりしながらBECKは時にすれ違い、粉々になりながら、ピュアな思いをメンバー同士ぶつけ合い、音楽で逆境を乗り越えていった。
今でも座右の銘になるくらいのセリフが沢山ある。
コユキが高校を中退する際に言った
「インスピレーションに従って生きていこう」
BECKを発掘したインディーズレーベルの川久保さんの「エゲつないパワー」
とか。
フジロックをモチーフにした大型フェスで出会った千葉くん憧れのジェネレーション69(メンバーはヒロト、マーシー、Ken yokoyamaがモチーフになっている)に言われた、
「見る前に飛べ」
とか。
数え上げたらキリがない。
心の支えになったし、バンドのやるきっかけや、苦しい時に背中を押してくれた存在でもあり、人生の決断をコユキならどうするだろうか?と考えていたりした時期が10代の俺にはあった。
映画のBECKが公開されたのが2010年9月。
その2ヶ月後の11月にAKANOBLUEは結成されたからBECKシリーズが終了し現在に至る16年間を走ってきたのだ。
昨年「夜明前線」のMV撮影のあたりだ。
ハロルド作石先生の新作THE BANDが発表された。
勿論、直ぐに読んだ。
そこには令和の今を生きる少年、友平がかつてのコユキや俺の様に、真夜中に涙を流していた。
「俺が居ても居なくても、世界は回り続けて、もはや遠く追いつけそうにない」
とても印象に残っているシーンだ。
そんな中、友平はある日、三日月型のギターを手にする事になる。
KAWAIのムーンサルトと言うギターだ。
友平はかつて少年だったコユキの様に無我夢中でギターを練習するのだ。
自分の存在の輪郭を何度もなぞる様に、自分自信を探す様に。
20年以上経ってもハロルド作石先生が描きたかった事はきっとこう言う事なんだと思っている。
サンボマスターの山口さんが言っていた様に、あの日THE BLUE HEARTSが迎えにきてくれた日のこと。
自分の力で、自分自信でこの不条理な世界を泳ぎ切る勇気をくれたロックとの出会い、夢や目標を持つことの葛藤、仲間達とせーので鳴らすバンドと言う正体不明な力の謎。
世代や時代が変わっても、この体とこの心で生きていく勇気と答えを俺達は探しているような気がしている。
元少年だった俺は、コユキや友平を思いながら曲を書き始めた。
そこには実生活で俺が1番大切にしたい軽音部の少年とその弟への思いも重ねた。
きっかけから話せばとてつもなく長くなるがそれはまた次回。
