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データサイエンティストと研究者が噛み合うために——プロジェクトで実際にやること

以前、MIにデータサイエンティストを採っても思ったように回らない理由と、組織としてのギャップの埋め方について書きました。今回はもう少し解像度を上げて、実際のプロジェクトの中でDSと研究者が噛み合うために何をするか、という話を書きます。


最初のキックオフで揃えること

プロジェクトの最初に揃えておくべきことは、「何を予測したいか」だけではありません。「その予測をどう使うか」まで込みで確認しておく必要があります。

たとえば、目的が「特性値を正確に予測したい」のか、「今より良い配合を見つけたい」のかで、モデルに求めることが変わります。前者は絶対的な予測精度が必要で、R²やRMSEが直接意味を持ちます。後者は絶対値の正確さより、「AよりBの方が高い特性が出そう」という相対的な傾向が正しければ使えます。候補を絞り込むスコアとしてモデルを使う場合、ランキングの精度の方が重要です。

この区別がないまま進むと、探索が目的なのにR²で「まだ精度が足りない」と言い続ける、という嚙み合わない状況が起きやすくなります。

アウトプットのイメージもここで揃えておきたいことです。探索なら候補配合のリスト、予測なら特性値のレポート——結果の使われ方が決まっていると、DSが何を作るべきかが明確になります。

外れ値の扱いのような細かい判断基準も、このタイミングで確認しておくと後の摩擦が減ります。研究者にとって分布の上限にあるデータは異常値ではなく、むしろ狙いたい領域であることがあります。最初に研究者の目的を聞いておけば、DSが一人で判断する場面が減ります。


データを一緒に見る

DSが一人でデータを触り始めると、研究者の文脈なしに判断が積み重なっていきます。この列の単位は何か、このサンプルはなぜ外れているのか、この測定値に物理的な意味はあるのか——こういったことをあとからまとめて聞くより、最初のEDAを一緒にやる方がずっと早い。

研究者にとっても、DSがどこで詰まるかを見ておくことは悪くありません。自分たちのデータが外から見るとどう映るかがわかると、次にデータを渡すときの準備が変わることがあります。


報告の言語を変える

R²などの精度指標は、客観的な評価として伝えることに意味があります。ただそれだけでは、研究者が判断基準に使う言語とつながりません。モデルの評価指標はDS側の言語であって、研究者が知りたいのは「それで次の実験をどう変えられるか」です。

精度の数字を出した上で、解釈の層を重ねることが大事です。SHAPなどの手法でどの特徴量がどう効いているかを可視化すると、「このモデルはこの条件を重視して予測している」という説明が可能になります。研究者にとっては、予測が当たるかどうかより、モデルが何を根拠にしているかの方が腹落ちしやすいことが多い。精度の先にある解釈まで一緒に渡す、ということです。


橋渡しとしてやることの本質

ここまで書いてきたことは、技術の話ではありません。情報の翻訳と、場の設計です。

DSの言語で語られた結果を、研究者が使える形に変換して渡す。研究者が持っている文脈を、DSが作業を始める前に引き出す。どちらか一方に任せるのではなく、その間を意図的に設計する役割が、MIプロジェクトには必要だと感じています。

両方の言語を完全に使いこなせる人でなくても、「最初に揃える」「一緒に見る」「翻訳して渡す」という動き方を意識できれば、プロジェクトはかなり変わります。


材料研究×データ活用の実務的な話は、「データ活用の実務」マガジンにまとめています。


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