短編小説 赤点魔女は、今日もお腹が空いている。

「また失敗した…」
爆発した煙の中、実験道具を手にしたままの少女の小さい呟きとそれを叱る教師の大声が響いた。

それと同時に、少女のお腹も豪快に鳴り響くのだった。


「メメリー、今回の失敗の理由はなんですか?」
「…お腹が空いていたからです」
「どうしてご飯を食べてから授業を受けなかったのですか?」
「…寝坊したからです」
「あなたは本当に欲に忠実ですねえ!?」
校長先生の部屋で、いつものようにため息を吐かれた。

それも仕方ないと思う。
先週も同じことで怒られたばかりだ。

「メメリー、あなたはお腹を空かせたら大抵の魔法が失敗に終わるとここで学んだはずよね?」
「はい…」
「あなたは空腹だと魔法操作に影響を及ぼすと、自分で証明してきたでしょう?」
「はい…」
「だから、ご飯を抜くのはやめなさい」
「ごめんなさい…」
「というわけだから、早く食堂に行ってご飯を食べてきなさい」
校長先生は、わたしをキッと睨んだ。

「たらふく食べてくるのよ?掃除と反省文は、そのあとにしなさい」
校長先生はひらひらと手を振ったので、わたしは頭を下げて部屋を出た。

「というわけで、おばちゃん。大盛りでください」
「はいよ。メメリー、あんたも懲りないねぇ〜」
「ううう、ごめんなさい」
「ケガがなくてよかったねえ」
「はいぃ…」
食堂のおばちゃんから、ミートソースパスタ大盛りとカツ丼大盛りとホットドッグ5本とスープとサラダを受け取って、よろよろと席に着いた。

「いただきますぅ」
今日一口目を口にすると、自然と涙が出てくる。

「うううぅ、ご飯美味しい〜!」

食堂のご飯が体中に沁み渡るようだった。

またやってしまった。
寝坊で焦ってしまって、ご飯のことはすっかり忘れていたのだ。

「メメリー、また失敗させたんだって?」
「どうせご飯食べるの忘れたんでしょ」
「誰よりもすぐお腹が空くんだから、油断しちゃだめだよ〜」
他の生徒に取り囲まれて、すぐに食べられそうなお菓子が恵まれる。
あっという間にお菓子の山が出来上がる。

これもペロッと食べ終わることだろう。

「お腹さえ空いていなければ、メメリーは赤点回避できるんだから、ちゃんとお食べ〜」
そう言われているうちに、ミートソースパスタとカツ丼を食べ終わっていた。

うん、これなら魔法も安定しそうだ。

デザートとばかりにホットドッグも食べ始める。

もぐもぐもぐもぐ。

全部を食べ終わる頃には、ようやく自分の体に魔力が満ちていくのがわかった。

「魔法、使えそう!」
スープも飲み干してそう宣言すると、おお〜と拍手が起こった。

みんな優しくてあったかい。

「ごちそうさまでした!掃除に行ってきます!」
「いってら〜」
「反省文も忘れるなよー」
「はーい!」
食堂のおばちゃんに食器を渡して、先ほど魔法を失敗した教室に向かって走った。


粉々になった魔法実験道具に手を当てて、魔法を放った。

みるみるうちに元通りになり、煤のついた床や壁も綺麗になっていく。

何度も失敗してきたのだ。
片付け魔法は、大得意になった。

「いつもこれぐらい上手くいけばいいのに」
「本当にねえ」

いつのまにか、校長先生が様子を見に来ていた。

「掃除、終わりました!」
「では、次は反省文ですね」
「はい!」
「それと、メメリー。今日の放課後は追試ですからね、赤点分を頑張るのよ」
「わかりました!」

そう答えた時、またお腹が鳴った。

ぐうう。

「あ…」
「………追試の前に、何かお腹に入れてきなさい」
「すみませええん…!」

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