第3章なぜ私は「アドバイス」をやめたのか
以前の私は、
いわゆる「ちゃんとした上司」でした。
相手の話を聞き、
状況を整理し、
こうしたらいいんじゃないか、と伝える。
今思えば、
間違ったことは言っていません。
むしろ、
親切だったと思います。
でも、
ある違和感が残りました。
アドバイスをしたあと、
相手の表情が
少しだけ曇ることがあったからです。
黙る。
うなずく。
「分かりました」と言う。
でも、
次の行動が変わらない。
このとき私は、
ようやく気づきました。
アドバイスは、
相手の“考える席”に
こちらが座ってしまう行為なのかもしれない
ということに。
良かれと思って言った一言が、
相手の中にある
「自分で考える余地」を
そっと奪っていた。
アドバイスをもらった側は、
反論もしませんし、
否定もしません。
ただ、
自分の答えを
引っ込めるだけです。
それは、
上下関係の問題ではなく、
言葉の重さの問題でした。
だから私は、
アドバイスをやめることにしました。
代わりにやったのは、
たった一つ。

言い切らないこと。
「こうした方がいい」ではなく、
「どう思う?」
「もし別の見方をするとしたら?」
そんな一言を置く。
それだけで、
空気が変わりました。
相手が、
もう一度考え始める。
自分の言葉で、
話し出す。
この瞬間を見て、
確信しました。
人は、
背中を押されて動くのではなく、
自分で踏み出せる状態になると動く。
Hitokotoは、
アドバイスを出すためのアプリではありません。
励ますための道具でも、
叱るためのツールでもない。
相手の中にある
「考える力」を
そっと呼び戻すための
一言を探す場所です。

次の章では、
Hitokotoが
なぜ「3つの質問」だけで
成り立っているのか。
その理由を、
開発思想として
まとめていきます。
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