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帰り道|シロクマ文芸部

夜店から帰る道が、いちばん好きだった。
お祭りはもちろん楽しかったが、
大人になって思い出すのはその帰り道だ。

金魚の袋を大事に提げて、
綿あめの割り箸を握って、
父と歩いた。

賑やかな音が、だんだん遠くなる。
屋台の灯りが、後ろへ流れていく。
耳の奥には、祭り囃子が残っている。

「楽しかったか」
父が聞く。
「うん」
それだけの会話。
あとは、サンダル履きの足音だけ。

興奮の名残が疲れを押しやる帰り道。
父の手が、大きくて温かかった。

金魚も、綿あめも、いつの間にか私のものではなくなった。
あの手も今はない。

夏祭りの音を聞くと、思い出すあの道。
喧噪の余韻と、あの道の静けさ。

しあわせが過ぎ去っていく、
終わりの——いちばん、しあわせなひととき。





小牧幸助さんのシロクマ文芸部に参加します。



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