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魔女刈り|アマノ文筆クラブ

「本当に、よろしいのですか?」

美容師が言った。

「ええ。魔女刈りで、お願いします」

私は、応えた。

この美容師も同郷の魔女だ。多くを語らずとも、意図は通じ合う。

「ショートボブに。前は、眉の上で、まっすぐ」

髪を短く切る、ということは、魔力の源泉を失うということだ。伸びてくれば戻ることもあるが、そのまま、ただの人間になる場合も多い。

「女の子は、長い髪が、いちばん」

それが、亡き母の、口癖だった。

「長くて、素敵な髪なのに……」

美容師は、つぶやいたが、それ以上のことは、言わなかった。

「はい」

私は笑顔を作りながら、心の中でつぶやいた。

——ごめんね。お母さん。

    *

「できました」

鏡の中に、知らない私がいた。

「ありがとう」

美容院を出ると、私は、まっすぐに待ち合わせの場所に向かった。

私を見た彼は、少しだけ驚いた顔をしながら、微笑んでくれた。

「覚えていてくれたんだね。僕が、ショートヘアが好きだって、言ったこと」

私は、ありったけの笑顔で頷いた。

「似合っているよ。じゃあ、行こうか」

その言葉だけで、私は、もう何も要らなかった。

そよ風が、首筋を撫でて、通り過ぎた。





甘野充さんのアマノ文筆クラブに参加します。

タイトル画像も甘野さんのものを使わせていただいています。


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