まちなかで大根干しの季節
秋も深まってくると、私の住んでいる函館市の旧市街地(西部地区)では、大根が干されているのをよく目にする。家の柵、ベランダ、軒下、物干し……まるごとの大根が何本もひもでくくられ、ポカポカと日光浴する様は見ものだ。でも、住宅地とはいえ観光都市・函館で大根干し!? 移住前に住んでいた首都圏の市街地では見たことないので、びっくりしたものだ。
ベランダに大根を干していたお隣さんに聞いてみたら、「にしん漬けをつくるのよ。大根をそのまま漬けるより、うまみも甘みも出るからね」。後日、お手製のにしん漬けをおすそ分けされ、おいしくいただいた。また、10本も20本も干しているお宅では、自家製のたくあんを漬けるのだそうだ。日の光を浴び、風に当たった自然乾燥の大根は、味がグッと凝縮するというわけ。縦につるせばのれん風、横にして連ねればすだれ風、葉っぱごと干すこともあり、観察しながらのまち歩きも面白い。
調べてみると、「大根干す」は初冬の季語で、「たくあん漬けなどにする大根を干すこと」と俳句歳時記にもある。セッティングをして、雨露を避け、干し上がりを見極め……ひと手間かけてていねいな暮らしをする、日本人らしい素敵な言葉ではないだろうか。今年もまた、心休まるのどかな光景が見られるのを楽しみにしている。
(北海道新聞コラム「朝の食卓」2025年11月5日掲載)
