関西弁でよむ法華経|授学無学人記品
そのとき、阿難(あなん)と羅睺羅(らごら)は席を立って、お釈迦さまの足もとにひれ伏し、こう言うたんや。
「お釈迦さま──わたしたちにも、未来に仏となることがあるのでしょうか?」
お釈迦さまはそれを聞いて、阿難に向かってこう言わはった。
「阿難よ、あんたは未来世において──『山海慧自在通王如来(さんがいえじざいつうおうにょらい)』という名の仏となるんや。
その国の名は常立勝幡(じょうりゅうしょうばん)で、国土は清らかで、瑠璃の大地が広がっとる。劫の名は妙音遍満(みょうおんへんまん)というんや。仏の寿命は無量無数千万億劫にも及ぶで」
それを見ていた菩薩たちは、心の中で思った。
「わしら菩薩はまだ授記をもろてへんのに、なんで先に声聞たちには授記が与えられるんやろか……」
お釈迦さまはその思いを読み取って、にっこりと笑みを浮かべ、語りかけたんや。
「仏さまの教えを信じてくれてるみんなに言うとくで──
わしと阿難は、むかし空王仏(くうおうぶつ)のもとで、同じときに“いっさいの真理を知る最上の悟り”を求める心を起こしたんや。
そのとき、阿難は“ようけ聞くこと”を選び、わしは“雑念を去って修行に専念する”道を選んだ。
せやから、わしは先に悟りを得ることができたけど、阿難はずっとわしのそばで、教えを大事に守ってきてくれたんや。
けどそれだけやない。 これから先、未来に現れる仏たちの教えも、きっちり護っていくんや。 その教えを信じて励む修行者たちを助けて、悟りの道を成し遂げさせる── そういう深い誓いを立ててきたんや。 せやからこそ、阿難が仏になるんは、間違いないことなんやで」
その言葉を聞いた阿難の胸には、またふつふつといろんな思いがわいてきたんや。
空王仏のもとで「真理を知りたい」と願ったあのときの気持ち、 教えをようけ聞いて、一言ももらさへんように覚えた日々、 未来の仏法を守ろうと心に決めたあの誓い── それがぜんぶ、今のこの授記と重なって、心の奥からじんわり熱うなってきたんや。
お釈迦さまは、今度は息子の羅睺羅に向かって、やさしいまなざしで言わはった。
「羅睺羅よ。
おまえは来世において、かならず仏となるで。
その名は『踏七宝華如来(とうしちほうけにょらい)』というんや。
未来には、十世界に満ちるほど無数の仏に出会い、そのたびに心をこめて供養していくやろう。
出会うたびごとに“最初の子ども”、つまり仏さまのもとで一番先に弟子となる大切な役目を担うんや。
そうやって歩みを積み重ね、ついには一切の真理を知り尽くす深い知恵を得るんや」
その時、お釈迦さまは心を込めて、ゆったりと語りかけはった。
「わしがまだ出家する前、王子として世継ぎに定められとった頃、
羅睺羅はわしにとって、はじめてこの世に生まれたかけがえのない子やった。
わしが仏道を完成させたあとも、羅睺羅は素直に教えを受けとめて弟子になった。
これから先、無量の仏に出会い、そのたびに真っ先に弟子として身を投じ、
ひたむきに仏道を歩んでいくやろう。
羅睺羅が細やかな戒まで大切に守り抜く姿は、わしがよう知っとる。
その姿は今も“最初の子”として、人びとの前に模範を示しとるんや」
そのあとお釈迦さまは阿難に告げはった。
「阿難よ、これら二千人の有学(まだ修行の途中にある者)・無学(すでに修行を終えた者)も、みな未来において仏となるで」
続いて二千人に向かって声をかけはった。
「みんなよう聞きなはれ。
あんたらも来世には必ず仏となるで。
未来には無量の仏を供養し、教えを受け継ぎ、仏の道を歩んでいくんや。
そのときには、みんな宝相如来(宝石の輝きをもつ王)という名の仏になるんやで」
二千人の心は大きな歓びに満ちて、声をそろえて言うた。
「ありがたや、お釈迦さま。
わたしたちも仏になれると約束していただいて、安心できました。
これからは一層まごころこめて修行していきます」
(授学無学人記品・了)
