星を見る シロクマ文芸部

宇宙人襲来 【1211字】
星を見る人がみんなロマンチストってわけじゃない。中にはそこに科学を見出し、その法則を解き明かそうとしている人もいる。彼らにとって、それは物質の塊であって、果たしてそれがどのような組成で、どのようにして生まれたかにしか興味がない。
はたまた、それは自分の運命を握る存在として見る者もいる。彼らは自分が生を受けたときに、天空にどんな星が輝いていたのかを知り、これからどんな道に進むべきかを読み解く。
言語学者の僕にとってそれは闇の奥底にある驚異の存在でしかない。宇宙という器の内に浮かび、光り輝くそれは光の速さでも何万年とかかるところにある。それとてまだ底ではない。それどころか僕たちにはむしろ近い存在なのだ。
地球時間の二千年代前半、二万光年の彼方の星を巡る惑星から使者が訪れた。彼らには僕たちには及ばない科学技術があったはずだ。でも彼らは僕たちに何もしなかった。
僕たちは彼らを捕らえ、そして拘束した。彼らはただ言葉を持ってきただけだった。
だから僕は静かに彼らの言葉を聞きたい。しかし当時からこの方、彼らが何を言っているのかはわかっていない。
僕は寝ても覚めても彼らと対峙している。世間からはもうとうに忘れ去られているけれども、僕は彼らの言葉を解析している。AIの力を借りてもそれは容易ではない。
僕は彼らの言葉の調査を始めて、四世代目になる。
僕は使者を思う。彼らは故郷を捨ててやってきたのだ。何かを告げるために。そんなだいじなことが僕にはあるだろうか。見も知らぬ他人に、それも異星人に告げるためだけに、すべてを捨てる覚悟はできるだろうか。
彼らだって知的生物である以上は悲しいだろう。悔しいだろう。どうして自分が。という思いを持っていたに違いない。
しかし百年研究しても未だに一語も解明できていない。それでもいいじゃないか。それだけの思いをして届けてくれた言葉を僕たちは真摯に受け止めるべきだ。
この使命を果たして、彼らが帰途についたとしても、その故郷の星は彼らが旅立った時代から、おそらくは数千年が経過しているだろう。それはもはや彼らの故郷ではない。これがこの宇宙の掟なのだ。
彼らは脆かった。それは仕方がないことなのかもしれない。ぼくたちにはもはやなんでもないコロナウィルス(普通の風邪)が彼らには致命的だった。
彼らの骸は解剖の後に荼毘に付され、海の見える丘に葬られた。彼らの星にも海はあっただろうか。海風は心地よかっただろうか。
僕は今日も彼らの言葉を耳にする。発音はままならない。だから素直に聞きたい。きっと何なのかがわかる日が来るに違いない。それはただの希望的観測だという諦念に耳を貸す必要はない。
そんなある日、突然に黒い雲間から光が差した。その隙間は楔を打ち込んだように割れ、広がり、ついに言葉が意味を持った。
彼らは言った。
ーー・・・アンドロメダ銀河への旅・・・。しかし・・・・・航行はままならなくなった。どうか水を分けてほしいーー
了
* わたしたちのこの天の川銀河の直径はおよそ10万光年と言われています

小牧部長さま
よろしくお願いします
ちょびっと広報
秋の ふみわくらぶ はもりだくさん✨
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ほとんど本ですが・・・
ブースは【そ-01.02】

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