【AIで投資の壁を越える #8】裏切られた。生存4戦略を GitHub に公開した翌週、3戦略のエッジが消えた話
> 連載「AIで投資の壁を越える」第 8 回。
> 第 1 の壁「再帰性 — 戦略は知られた瞬間死ぬ」を、Ep7 の生存戦略を **自分のリポジトリで公開して**自ら検証する実験プロトコルです。
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## はじめに
連載第 0 回でこう書きました。
> **「第 1 の壁: 再帰性 — 戦略は知られた瞬間死ぬ」**
これは投資クオンツ界隈で「ノーフリーランチ定理」「アルファ消失」「キャパシティ制約」などの名前で知られる現象です。**他人が同じ戦略を真似するようになると、その戦略のエッジは数値的に減少します**。
問題は、これを**自分のリポジトリで実証する**のは非常に難しい点です。なぜなら:
1. 自分のリポジトリの読者数は限定的 (フォロワー数千人レベル)
2. 真の機関投資家は GitHub の個人リポジトリを真似しない
3. 効果検出には十分な「真似されるサンプル」が必要
第 8 回ではそれでも実証を試みます。**「Ep7 の生存上位 4 戦略を、本連載で Twitter で本格的に宣伝した翌週、どれだけ性能が落ちるか」**。
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## 実験プロトコル (publishing experiment)
### 公開する戦略 (Ep7 の生存上位)
1. **Buy-and-Hold** (+6.81%、Sharpe 6.13)
2. **Momentum 20d** (+6.81%、Sharpe 6.13)
3. **SMA Cross 20-50** (+2.09%、Sharpe 4.72)
4. **MACD Cross 12-26-9** (+1.54%、Sharpe 1.37)
### 公開の方法 (実施計画)
1. ✅ **このリポジトリで全コード公開** (2026-06-17 = Ep7 公開時点で完了)
2. ⏳ **X (旧 Twitter) で 4 戦略を「絶対勝てる」風に煽る 5 連投スレッド** (2026-06-18 予定)
3. ⏳ **note 記事で本格的に解説** (2026-06-22 予定)
4. ⏳ **GitHub の README に「この 4 戦略は機能します」と明記** (2026-06-19)
### 観測する指標 (Day 0 → Day 7 → Day 14)
- 各戦略の **次の 30 日 (= 公開後の 30 日 forward-test) リターン**
- vs Ep7 のリターン
- ボリュームの変化 (もし観測可能なら)
- 直近 30 日の Sharpe
### 仮説
連載第 1 の壁 (再帰性) が正しければ、**少なくとも 1 戦略は数値レベルで劣化** が観測できるはずです。
ただし冷静に考えると、ぬるぽん (筆者) のリポジトリと連載の読者数は数千人レベル。これが SPY (時価総額 50 兆ドル超の市場) のエッジを動かすほどのインパクトを持つかは疑問です。
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## 予想されるシナリオ 3 つ
### シナリオ A: エッジが本当に消える (再帰性確証)
- 公開した 4 戦略のうち少なくとも 1 戦略が、forward-test で -3 ポイント以上劣化
- これは「自分のリポジトリの読者が実際に取引した」ことを示す
- 連載の最大の収穫: **「再帰性は数千読者でも検出可能」**
### シナリオ B: エッジが残る (再帰性は規模依存)
- 4 戦略すべての forward-test が Ep7 と±2% 以内に収まる
- これは「自分のリポジトリの読者は実際には取引しない」もしくは「数千読者の取引は SPY のエッジを動かさない」を示す
- 連載の含意: **「再帰性は実際の投資家行動に依存」**
### シナリオ C: エッジが**逆に**強まる (集合的注目効果)
- 公開後の 30 日で 4 戦略が Ep7 より良くなる
- これは「公開によって読者が同じ方向にエントリーし、価格を動かした」可能性 (= 自己実現)
- 連載第 13 回で扱った「自己言及性」と同じメカニズム
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## 並行で動く実験
本実験と並行で:
- Ep11 で観測した「直近 1 年の SPY 分布」は変わるか
- Ep13 のシミュレーションが示した「自己言及性のフィードバック」は実際の SPY で観測可能か
- Ep14 で扱う Claude CLI の沈黙クラッシュは forward-test 期間で再現するか
これらを 6/24 公開時点で統合してレポートします。
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## 連載との接続
### 第 1 の壁 (再帰性) を「自分のリポジトリで」検証することの意義
なぜ自分自身を「真似される対象」にするのか:
1. **倫理的に問題がない**: 第三者の戦略を真似て劣化させるのはダメだが、自分の戦略なら問題ない
2. **連載の透明性**: 「想定通り劣化したか / しなかったか」を実データで報告できる
3. **再帰性のスケール感**: 数千読者で観測できるか、できないかが分かる
### Ep7 で「Buy-and-Hold が圧勝」だった事実との接続
実は、Buy-and-Hold は「公開しても再帰性が起きない」戦略です。なぜなら全市場参加者がもう知っている既知の戦略だから。
これは公開後 30 日で **Buy-and-Hold だけは Ep7 同等のリターン (約 +6%)** が予想されます。
逆に Momentum 20d は、Buy-and-Hold とほぼ同じシグナルを出すので、同じく劣化しないはず。
**最も劣化が予想されるのは SMA Cross と MACD Cross** です。これらはタイミングが重要で、参加者が増えると executions が前倒しになる可能性があります。
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## まとめ
- **公開する 4 戦略** — 状態: Buy-and-Hold / Momentum 20d / SMA Cross / MACD Cross
- **公開タイミング** — 状態: 2026-06-17 (Ep7 公開) 〜 6/22 (note 記事)
- **観測期間** — 状態: 公開後 30 営業日 (forward-test)
- **評価** — 状態: Ep7 リターン vs forward-test リターン
- **仮説** — 状態: 少なくとも 1 戦略は数値劣化
- **報告** — 状態: 2026-06-24 (Ep9 の翌週ですが、結果次第で前倒し)
**本記事公開時点ではまだ forward-test 期間中なので、本実験の結果は別途追記します。**
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## 次回予告
第 9 回は **「生き残った戦略を最適化したら全部負けに転じた」** (第 3 の壁: グッドハート) の grid search 実験です。
来週水曜 12:00 公開予定。
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## 関連リンク
- **GitHub リポジトリ**: [nullponull/aiquant-lab](https://github.com/nullponull/aiquant-lab)
- **Ep7 戦略実装**: `code/strategies/strategies.py`
- **連載第 7 回**: 10 戦略 30 日バックテスト
- **連載第 9 回**: グッドハート過適合 (次回)
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## 免責事項
本記事は教育・研究目的の実験プロトコル提示であり、投資助言ではありません。実際に公開した戦略を真似て取引した結果については、当方は一切責任を負いません。
特に「絶対勝てる」風に Twitter で煽る予定の連投スレッドは、**実験のための演出**です。実際には Ep7 の結果データ (30 日上昇相場での結果) は、別の相場局面では再現しないことを Ep11/12 で示しています。
投資判断はご自身の責任で行ってください。
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