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第6章 #32 心の奥の祝福

🔬愛の根源研究lab

あの日から、少し時間が経った。

目に見える大きな変化はないのに、
どこか世界が柔らかくなった気がした。

朝の光がいつもよりも優しく、
通り過ぎる風に、かすかな温度を感じる。

カフェの窓際で、ぼんやりと外を眺めていた。

店員が客に向ける笑顔や、
子どもに手を引かれる母親の姿を見ていると、
胸の奥がふわりと温かくなった。

以前なら、そんな瞬間に寂しさが湧き上がっていた。

「どうして私は違うんだろう」

そう思うたびに、心の奥で何かが閉じていくのを感じていた。

でも今日は、ただその光景が美しいと思った。

そこに流れている愛が、ちゃんと自分の胸にも届いている。

そのことに気づいた時、
世界の色が少し変わって見えた。


あれほど痛かったのは、
愛を外に探していたから。

でも今は知っている。
その愛は、ずっと自分の中にもあったことを。

愛されたいと願っていたあの頃の自分を、
今ならやっと抱きしめられる。

あの子が必死に手を伸ばしていたのは、
外の愛を奪いたかったからじゃない。
自分の内側の愛に、もう一度触れたかったからなんだ。

ラボでの時間を思い出す。

あの静かな部屋で、
何度も「大丈夫ですよ」と見守ってくれたセラピストの眼差し。

あれは誰かからの愛の象徴でもあり、
同時に“私が自分を信じるための光”だった。

そして今、私は知っている。

愛は誰かに証明してもらうものではなく、
私が「見る」と決めた瞬間に、世界のすべてに現れる。


涙ではなく、深い呼吸が出た。

この世界は、こんなにも静かで、
こんなにもあたたかい。

「もう怖くない」
そう思ったのではなく、
“愛がここにある”ことに気づいた。

それだけで、もう十分だった。

心の中で、静かに世界を祝福している自分に気づいた時、
やっと本当の意味で、
“愛を信じる”という言葉の意味がわかった気がした。

「よかったね、私」ーー小さく自分に祝福を送った。


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