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ChatGPTにキャプチャ画像をアップロードするだけで、フェイクニュースの真相が判明した件

「10万人に16人」。この数字を円グラフで見せられると、なんだか安心してしまいませんか。先日、Xで子宮頸がんワクチンについての投稿を見かけ、思うところがあって記事を書きました。実はそのとき、投稿のキャプチャ画像をそのままChatGPTにアップロードしてみたのです。すると返ってきたのは、単なる内容の要約ではありませんでした。思わず「なるほど」とうなってしまうほど鋭く、いくつもの論理的なすり替えを指摘してくれたのです。公認心理師として仕事をしていると、こうした「思考のワナ」はSNSのあちこちに潜んでいると感じます。今日は、ChatGPTが教えてくれた内容に、私なりの解説を加えてご紹介したいと思います。


① 小さく見える数字には、ワナがある


まず一つ目に指摘されたのは、「10万人に16人」という数字の見せ方についてでした。

仮にこれが「1年間に10万人中16人が発症する」という意味だとすると、16÷100,000で0.016%になります。円グラフを小数点1桁で表示すれば、たしかに「0.0%」としか見えません。ですが、これはリスクがゼロになったわけではなく、単に丸めた結果、数字が見えなくなっているだけなのです。

私はこれを見たとき、「1年間に交通事故で死亡する確率は非常に小さいから、円グラフにすればほぼ100%が無事。だからシートベルトは必要ない」と言っているのと、構造としてはまったく同じだと感じました。極端に思えるかもしれませんが、論理としては同じことをしているのです。

さらに見落とされがちなのが、「10万人に16人」というのは通常、1年間あたりの罹患率だという点です。これを「一生のうちにかかる確率」だと錯覚してしまうと、リスクは実際よりずっと小さく見えてしまいます。国立がん研究センターの2023年のデータでは、日本人女性が生涯のうちに子宮頸がんと診断される確率は約1.3%、およそ79人に1人とされています。「年間0.016%」と「生涯で79人に1人」では、受け取る印象がまったく違ってきますよね。

心理学の世界には、数字の見せ方ひとつで判断が変わってしまう「フレーミング効果」という現象があります。今回のケースは、まさにこのフレーミングの力を使って、リスクを実際より小さく感じさせている典型例だと言えるでしょう。

② 話が、静かにすり替わっていく瞬間


二つ目に気づかされたのは、議論の途中で論点がそっとすり替わっていく箇所がいくつもあったことです。

まず、「病気が珍しいのだから、ワクチンを打つ必要はない」という主張。これは一見もっともらしく聞こえますが、予防が必要かどうかは発生率だけで決まるものではありません。発症率、病気の重さ、予防効果、副反応、費用や負担。これらをすべて天秤にかけて、はじめて「打つ価値があるかどうか」が見えてきます。狂犬病や破傷風のように、発生頻度は低くても予防する価値が高い病気は他にもたくさんありますよね

厚生労働省によると、9価ワクチンは子宮頸がんの原因となるHPVの型のうち、80〜90%をカバーするとされています。スウェーデンで約167万人を対象に行われた研究でも、若い年齢で接種した女性たちの浸潤性子宮頸がんが大きく減少していたことが報告されています。議論すべきなのは「0.016%しか発症しない」という数字ではなく、「接種によって将来のがんがどれだけ減り、その利益と副反応をどう比べるか」なのだと思います。

もうひとつ気になったのが、「恐怖を煽っているから、ワクチン推進の主張は間違っている」という論法です。説明の仕方が不安をあおりすぎていることと、ワクチンに効果がないことは、まったく別の話です。「この医師は怖い話ばかりする。だから『喫煙は肺がんのリスクを高める』という説明も間違いだ」とはならないのと同じですよね。話し方や動機への批判と、主張そのものの真偽は、分けて考える必要があります。

そして、「コロナワクチンの状況と全く同じだ」という例え。COVID-19ワクチンとHPVワクチンでは、病原体も感染経路も、発症までの期間も、対象年齢も、臨床試験のやり方も違います。「飛行機事故があったから、自動車も同じように危険だ」と言っているようなもので、共通点が「ワクチンである」ことだけでは、結論を重ねることはできません。

さらに、「河野大臣や武見大臣と同じ」という指摘や、「製薬会社の手先のように見える」という表現。心理学では、発言の中身ではなく発言者の属性で正しさを判断してしまうことを「連座の誤謬(genetic fallacy)」と呼びます。政治家の姿勢に問題があったとしても、その政治家が支持したものが自動的に間違いになるわけではありません。利益相反があるかどうかを確認することは大切ですが、「利益相反があるかもしれない→研究が間違っている→ワクチンに効果がない」という飛躍は、論理としては成立していないのです。WHOも、HPV感染や前がん病変、子宮頸がんそのものを予防できるというデータをもとに、接種を推奨しています。見るべきなのは発言者ではなく、データなのだと、あらためて感じました。

③「推進派」の側にも、フェアさが求められる場面


ここまで読むと、「じゃあワクチン推進側の言い分は全部正しいのか」と思われるかもしれません。ですが、ChatGPTの指摘は、ここでも興味深いものでした。

画像の中にあった「全員、接種しましょう!」という強い呼びかけ。これは、推進派が実際にそう主張していたというより、反対派の投稿の中で「推進派はこんな極端なことを言っている」という形で示されていた表現でした。相手の主張を、実際よりも断定的で極端な形に置き換えてから叩く。これは「藁人形論法(ストローマン)」と呼ばれる、よくある論法のひとつです。読み手の感情を煽るには効果的かもしれませんが、フェアな議論とは言えません。

そのうえで、あらためて医学的に丁寧な伝え方を考えるなら、「全員、接種しましょう!」と断定するよりも、「対象年齢では接種による利益が不利益を上回ると評価されており、接種が推奨されています。効果と副反応を理解したうえで判断してください」という説明のほうが、誠実だと言えます。厚生労働省自身も、接種は強制ではなく、効果とリスクを理解したうえで判断するものだと明記しています。

また、男性へのHPVワクチンの説明として、子宮頸がんの円グラフだけを見せるのは不十分だという指摘も、なるほどと思いました。男性にとっては、肛門がんや陰茎がん、中咽頭がん、尖圭コンジローマの予防という、別の利益があります。HPVは、女性だけの感染症ではないのです。

数字の裏側にある「思考のクセ」


ここまでの内容を、公認心理師という立場から少し整理させてください。

今回の投稿でくり返されていたのは、「確率が小さく見えること」と「予防する価値が小さいこと」を、同じものとして扱ってしまう混同でした。数字を丸めてしまえば、リスクは簡単に見えなくなります。けれど、病気は一生を通じて起こりうるものです。今の日本の統計では、子宮頸がんの生涯リスクはおよそ79人に1人。この数字は、円グラフの中には現れてきません。

そしてワクチンを評価するときは、「病気になる人が何%か」だけでなく、「ワクチンによって何人を救えるのか」「副反応はどの程度なのか」を、同じものさしで比べる必要があります。同時に、「専門家が言っているから正しい」も、「政治家や製薬会社が関わっているから間違っている」も、どちらも科学的な考え方とは言えません。私たちが見るべきなのは、いつだって人物ではなくデータなのだと思います。

まとめ


今日お伝えしたかったことを、あらためて三つにまとめます。

一つ目は、小さく見える数字にはワナがあるということです。円グラフで0.0%に見えても、それは丸めた結果であって、リスクがゼロという意味ではありません。年間の発症率と、一生のうちにかかる確率は、まったく別の話です。

二つ目は、話は静かにすり替わっていくということです。発生率の低さ、説明の仕方への批判、他のワクチンとの安易な比較、発言者への攻撃。こうした論法は、どれも「ワクチンに効果があるかどうか」という本題からは、少しずつずれています。

三つ目は、フェアな目線を持ち続けるということです。批判する側だけでなく、推進する側の伝え方にも、改善できる部分はきっとあります。どちらか一方を"敵"にしてしまうと、見えなくなるものがあるのだと思います。

SNSで流れてくる情報に、心を揺さぶられることは誰にでもあります。それでも、一度立ち止まって「この数字は、何と比べているんだろう」「この話は、途中ですり替わっていないだろうか」と考えてみる。その小さな習慣が、あなた自身を、そしてあなたの大切な人を守る力になります。あなたには、その力がちゃんと備わっています。

長文にもかかわらず、最後までお付き合いくださりありがとうございます。これからも、いい意味で"ちょっとだけマニアックな"情報を届けていけたらと思います。

参考

・国立がん研究センター「最新がん統計」 ・厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A」 ・World Health Organization「HPV vaccination」 ・The New England Journal of Medicine「HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer」

#フェイクニュース #ファクトチェック #HPVワクチン #メディアリテラシー #認知バイアス


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