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なぜ真面目な人ほど、詐欺メールに引っかかってしまうのか

「自分はネットリテラシーが高いから、詐欺メールなんて引っかからない」——そう思ったことはありませんか。

実は、その自信こそが落とし穴になることがあります。最近発表されたある調査で、私たちが日常的に使っているサービスを装った詐欺が、過去最多の勢いで増えていることがわかりました。

今日は、公認心理師という立場から、「なぜ人は詐欺メールに心を動かされてしまうのか」を、心理学の視点で一緒にひもといていきたいと思います。


最も狙われているのは、私たちが信頼しているブランドだった


チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズの脅威インテリジェンス部門であるチェック・ポイント・リサーチ(CPR)が、2026年第2四半期のブランドフィッシングレポートを公開しました。

このレポートによると、なりすましの標的として最も多く使われたブランドはMicrosoftで、全体の2割以上を占め、2位に大きな差をつけて首位を維持しているとのことです。2位はLinkedInで、前回の調査から順位を大きく上げています。続いてGoogle、Apple、Amazonといった、私たちが毎日のように目にするサービスが並びます。上位5つのブランドだけで、詐欺全体の半数以上を占めているというのですから、驚きますよね。

そしてもうひとつ、私が特に気になったのが、ChatGPTが今回初めてトップ10入りしたという事実です。しかもかなりの勢いでランクを上げての初登場でした。

ChatGPTやPayPalを装う手口が、想像以上に巧妙だった


具体的な手口も見てみましょう。ChatGPTを装った事例では、「サブスクリプションの支払いに失敗した」という内容のメールが送られ、記載されたボタンを押すと、本物そっくりの偽の決済ページに誘導される仕組みになっていました。そこでクレジットカード番号や有効期限を入力させ、情報を盗み取ろうとする流れです。

PayPalを装った事例では、正規のログイン画面をほぼ完全に再現した偽サイトが確認されています。唯一の違和感は、ロゴのわずかなゆがみだったそうです。AIで生成された素材が使われた可能性がある、という指摘もありました。ほかにも、有名アパレルブランドの偽ストアや、Apple IDの偽ログイン画面など、手口は多岐にわたっています。

こうして並べてみると、私たちが「知っているから安心」と思っている情報こそが、逆に利用されていることに気づかされます。

「心が動かされる」には、ちゃんとした理由がある


ここからは、心理学の視点でお話しさせてください。私は、詐欺メールに気持ちが揺れてしまうことは、決して意志が弱いからではないと考えています。人の心には、誰にでも共通して働く仕組みがあり、それが巧みに利用されているだけなのです。

ポイントは、大きく3つに整理できます。

ひとつめは、損失を避けたいという気持ちです。行動経済学の分野でよく知られるプロスペクト理論では、人は何かを得る喜びよりも、何かを失う痛みのほうを強く感じるとされています。「支払いに失敗した」「アカウントが停止される」という言葉には、この「失うかもしれない」という恐れを刺激する力があります。

ふたつめは、権威や信頼への従いやすさです。私たちは幼いころから、信頼できる相手の指示には従うようにできています。見慣れたロゴや、普段使っているサービス名を目にすると、脳は無意識のうちに警戒を緩めてしまうのです。これは弱さではなく、社会生活を送るうえで自然に身についた反応だといえます。

みっつめは、時間的な圧力です。「24時間以内に」「今すぐ」といった言葉は、じっくり考える余裕を奪います。まるで、川の流れが速いところほど足元をすくわれやすいのと同じで、立ち止まって考える時間がないと、人は普段よりも判断を誤りやすくなるのです。

この3つが重なったとき、たとえ普段は慎重な人であっても、一瞬心が動いてしまう。それはとても自然なことだと、私は臨床の現場でも、また企業向けの研修でお話をする中でも、繰り返し実感してきました。

「気づけたこと」こそが、あなたの力


大切なのは、心が動きかけたこと自体を責めないことです。「うっかりしていた」「自分が甘かった」と自分を責める言葉を使うのではなく、「巧妙な仕掛けに気づけた自分」を、まずは認めてあげてほしいのです。

その上で、実践できることも3つお伝えします。

まず、少しでも「急いで」「今すぐ」と感じたら、一呼吸置くこと。心が急かされているときこそ、あえて手を止める。それだけで、冷静さは戻ってきます。

次に、メール内のリンクではなく、必ず公式サイトやアプリから直接ログインし直すこと。本物と偽物を見分けるのが難しくなっている今、リンクを経由しないことが一番確実な自衛策になります。

そして、ロゴや文面のわずかな違和感を軽視しないこと。今回のPayPalの事例のように、AIによって精巧に作られた偽サイトでも、細部にはどこかしら不自然さが残ることがあります。「なんとなく変だな」という直感は、あなたの脳が過去の経験から導き出した、立派な判断材料です。

まとめ


今回お伝えしたかったことを、あらためて整理します。

・2026年第2四半期は、Microsoftを筆頭に、身近なブランドを装った詐欺が過去最多クラスで確認されている ・ChatGPTのような生成AIサービスも、初めてなりすまし被害の上位に入ってきている ・詐欺に心が動くのは、損失回避・権威への信頼・時間的圧力という、誰の中にもある自然な心理が利用されているから ・自分を責めるのではなく、「気づけたこと」を評価してあげることが第一歩 ・迷ったら一呼吸置く、リンクを経由しない、違和感を大切にする、この3つだけで防げることは多い

だまされそうになった経験があっても、それはあなたが弱いからではありません。むしろ、そこまで巧妙に作り込まれた仕掛けに気づけたなら、それは十分に誇っていいことだと、私は思います。今日お伝えした3つの視点を、ぜひ心のどこかに置いておいてください。あなたなら、次はきっと落ち着いて対応できます。

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。今日の記事が、皆さんの明日以降の一歩を考えるきっかけになればうれしく思います。

出典:Web担当者Forum「フィッシングなりすましが最も多いブランドは? 『ChatGPT』が急上昇で初のトップ10入り【CPR調べ】」(2026年7月31日) https://webtan.impress.co.jp/n/2026/07/31/53062

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