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成長投資系補助金の不採択計画書を添削して見えた「国が応援したくなる計画書」への改善ポイント8つ🌷

先日、大規模成長投資系の補助金に申請され、不採択となった事業計画書を詳しく添削差し上げる機会がありました。

もちろん、ここでは企業名や業種、投資内容、売上規模など、個別企業を特定できる情報については一切触れません。

今回お伝えしたいのは、

「この会社の計画書のどこが悪かったのか」

という個社分析ではありません。

むしろ、計画書を細かく読み込んでいく中で見えてきた、

「大型の成長投資を伴う補助金では、どのような計画書が弱く見えやすいのか」

という共通論点です。

計画そのものは魅力的。
経営者の成長意欲も高い。
投資内容も具体的。
売上目標も大きい。

それでも、採択されるとは限りません。

そこには、大型の成長投資系補助金ならではの「もう一段深い説明」が求められているように感じます。

今回は、不採択となった事業計画書を添削する中で特に重要だと感じた8つのポイントを整理します。

1.「やりたいこと作文」から抜け出す

最初に感じたのが、この問題です。

・新しい拠点を整備したい
・新しい設備を導入したい
・新規事業を伸ばしたい
・売上を大きくしたい
・人を増やしたい

どれも、企業としては正しい成長戦略です。

しかし補助金審査では、

「それを御社がやりたいことは分かりました」で終わってしまう可能性があります。

大型の成長投資系補助金では、その先まで説明する必要があります。

つまり、

「なぜ今、この投資なのか」

「なぜ自社だから実現できるのか」

「なぜこの投資規模が必要なのか」

「なぜその成長目標を達成できるのか」

「なぜ国が公的資金を投入してまで応援する意味があるのか」

というところです。

私はこれを、計画書で答えるべき「5つのなぜ」と考えています。

自社が何をしたいのかだけでなく、

「この会社への投資が、なぜ政策として合理的なのか」

まで説明する。

ここが一つ目の大きなポイントです。


2.大きな売上目標ほど「数式」にする

成長投資系補助金では、

「5年後に大幅な売上成長を実現する」

といった計画が多くなります。

しかし、大きな数字を書けば書くほど、

「本当にそこまで伸びるのか?」

という疑問も強くなります。

そこで重要になるのが、売上を分解することです。

例えば、

売上 = 顧客数 × 成約率 × 平均単価 × 購入回数

ストック型サービスなら、

売上 = 契約企業数 × 月額単価 × 12か月 × 継続率

といった形です。

さらに、

既存事業
新規事業A
新規事業B
新規事業C

のように事業別に分解します。

すると、

「将来これくらい売れます」

ではなく、

「この顧客母数に対して、この割合で提案し、この割合で成約し、この単価で販売するため、この売上になります」

と説明できます。

大きな売上目標ほど、

「経営者の意思・勢い」ではなく、「積み上げた結果」

として見せる必要があります。

3.「設備を買う理由」ではなく「設備が利益を生む理由」を書く

大型投資の計画書では、設備や建物について非常に詳しく説明されていることがあります。

ところが、

「その投資が、いくらの利益を生み出すのか」

になると急に説明が弱くなるケースがあります。

例えば、

投資額

生産能力・対応能力の増加

案件数の増加

成約数の増加

売上増加

粗利益増加

キャッシュフロー増加

ここまでつながっているでしょうか。

設備のスペックを10行説明するより、

「この設備によって年間○件多く対応できる」

「そのうち○%を受注する」

「平均単価○円なので売上が○円増える」

という方が、投資の意味は伝わります。

補助金申請では、

「何を買うのか」

の説明に力を入れがちです。

しかし審査員が本当に確認したいのは、

「なぜその投資によって会社が成長するのか」

ではないでしょうか。


4.大型投資ほどNPV・DCF・投資回収まで考える

ここは、特に大型投資になるほど重要です。

仮に会社にとって過去最大級の投資を行うのであれば、

「金融機関から借りられます」

だけでは十分ではない可能性があります。

借りられることと、投資として合理的であることは別だからです。

そこで検討したいのが、

・投資回収期間
・フリーキャッシュフロー(FCF)
・NPV(DCF法)
・投資後の返済余力
・現預金残高
・有利子負債
・EBITDA

などです。

特に重要なのは、

「計画どおりに進んだ場合」だけを計算しないことです。

例えば、

・売上が計画より10%低かった場合
・20%低かった場合
・稼働開始が遅れた場合
・人件費が上昇した場合
・金利が上昇した場合

まで確認しておく。

そして、

「多少計画が下振れても、この投資は成立する」

というところまで説明できれば、大型投資に対する安心感はかなり変わります。

大規模投資で求められるのは、「攻める経営」だけではありません。

「リスクを理解した上で攻めている経営」

だと思います。


5.市場調査よりも「すでに起きていること」を書く


計画書では、

「DX市場は今後拡大する」

「人手不足が深刻化している」

「〇〇市場は年率○%で成長している」

といった市場データがよく使われます。

もちろん必要です。

ただ、審査員は同じような市場データを何十社分も見ている可能性があります。

そこで差が出るのが「一次情報」です。

例えば、

・既存顧客から相談を受けた件数
・実際に問い合わせが増えている内容
・現在の体制では対応できず断った案件
・失注した案件
・顧客から実際に言われた言葉
・テスト販売の反応
・既存営業で見えてきた新しいニーズ

です。

「市場が伸びています」

よりも、

「すでに顧客から相談が来ています。しかし今の体制では対応し切れていません」

の方が圧倒的に強い。

市場調査によって考えた事業なのか。

それとも、

「現場から必要に迫られて生まれた事業なのか」。

この違いは、計画のリアリティに大きく影響します。

6.自社の成長で終わらせない

ここは非常に重要だと考えています。

企業側からすれば、

売上が増える。
利益が増える。
雇用が増える。
会社が大きくなる。

これは当然、良いことです。

しかし国側から見れば、

「その会社だけが大きくなることに、なぜ補助金を投入するのか」

という問いがあります。

したがって、その先を描く必要があります。

例えば、

自社への補助

新たな事業基盤の構築

顧客へのサービス提供能力向上

顧客企業の生産性向上

顧客企業の収益改善

雇用・賃上げ

地域企業への発注増加

地域経済への波及

という流れです。

重要なのは、

「自社が成長します」

ではなく、

「自社が成長することで、周囲にこれだけの変化を起こします」

まで書くことです。

補助金を、

「一企業への資金提供」から、「その企業を起点に政策効果を広げる投資」

へ見せ方を変える。

大型の成長投資系補助金では、この視点がかなり重要だと感じます。

7.SWOTより「自社にしか書けない情報」を増やす

SWOT分析、PEST分析、5フォース分析。

事業計画ではよく使われます。

ただし、分析フレームそのものが計画を強くしてくれるわけではありません。

例えば、

「少子高齢化が進んでいる」

「DX需要が拡大している」

「競争が激化している」

「円安・物価高で・・・」

という情報は、競合企業でも書けます。

一方、

「過去1年間で既存顧客から○件相談を受けた」

「そのうち○件は現在の体制では対応できなかった」

「既存顧客のうち○%が新サービスの対象になる」

という情報は、その会社にしか書けません。

計画書を強くするのは、きれいなフレームワークよりも、

「自社しか持っていない事実」です。

競争優位性についても同じです。

「地域密着」

「一気通貫」

「高品質」

だけではなく、

何年かけて蓄積したのか。
何社との関係があるのか。
どのようなデータが蓄積されているのか。
競合が同じ設備を買っても再現できない模倣困難な源泉のは何なのか。

ここまで落としたいところです。


8.プレゼンでは「経営者しか話せない話」をする

成長投資系補助金では、書面だけでなくプレゼンテーションが重要になるケースがあります。

その際に避けたいのが、「計画書の読み上げ」です。

審査員は、基本的な内容をすでに読んでいるはずです。

プレゼンで聞きたいのは、

「なぜ経営者はこの判断をしたのか」という部分です。

例えば、

「従来型の事業だけでは、この先の成長に限界があると判断した」

「お客様との会話が、商品相談から経営相談へ変わってきた」

「案件は来ているのに、今の組織では取り切れない」

「過去の経験から、この事業の必要性を痛感した」

といった話です。

こうした内容は、生成AIにも市場調査会社にも書けません。

経営者本人しか話せないからこそ価値があります。
プレゼン資料の行間から滲み出る経営者ならではの表現が自然に出てくるはずです。

プレゼンでは、何をするのか。
よりも、

「なぜ、この経営判断に至ったのか」を伝える。

これが、書面との差別化になると考えています。

不採択計画書を直すとき、文章を増やす必要はない

今回、かなり詳細に事業計画書を確認しましたが、最終的に感じたことがあります。

それは、

「文章を増やせば強くなるわけではない」

ということです。

むしろ必要なのは、

・抽象表現を減らすこと。

・数字に変えること。

・一次情報に変えること。

・因果関係をつなぐこと。

です。

特にPowerPoint形式の計画書であれば、1ページに情報を詰め込み過ぎても伝わりません。

私は、

「結論を1つ」

「根拠となる数字を3~5個」

「その数字から導いた経営判断を1つ」

くらいまで絞った方が、読み手には伝わりやすいと考えています。


むしろ、様式の中で自由書式のページをこのような具体的な情報で埋めてあげるのです。


最後に。「大きな夢」より「大きな夢が成立する理由」


大型の成長投資を行う企業に、夢がないことはほとんどありません。

「もっと大きな会社にしたい」

「地域を代表する企業になりたい」

「新しい市場に進出したい」

「社員の給与を上げたい」

その想い自体は、とても大切です。

ただし、補助金審査ではその想いを、

顧客数
 ×
成約率
 ×
単価
 ×
継続率
 ↓
売上
 ↓
粗利
 ↓
キャッシュフロー
 ↓
投資採算
 ↓
雇用・賃上げ
 ↓
地域・社会への波及

までつなぐ必要があります。

言い換えれば、

「このような会社になりたい」

から、

「この条件がそろっているから、この会社は実際にそこまで成長できる」

への転換です。

そして最後に、

「だからこそ、この成長を国が支援する意味がある」

まで一本につなげる。


成長投資系補助金の事業計画書では、この「経済合理性」「政策的意義」の両方を、数字と一次情報で裏付けられるかどうかが、大きなポイントになるのではないかと考えています。


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