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安全で優しいAIへ―日本のAIの可能性―

きっかけは実父の認知症の改善でした

はじめまして。稲場真由美です。

私はこれまで、人と人とのコミュニケーションについて研究し、
「性格統計学」というメソッドを考案し、発信してきました。

同じ言葉を伝えているのに、相手によって受け取り方がまったく違う。

ある人には励ましになる言葉が、別の人にはプレッシャーになる。
ある人には丁寧な説明が安心につながり、別の人にはまわりくどく感じられる。
ある人には結論から伝える方がよく、別の人にはまず気持ちに寄り添うことが必要になる。

人は、同じ言葉を同じようには受け取りません。

だから、伝える側がどれだけ正しいことを言っていても、相手に合った伝え方でなければ、届かないことがあります。

逆に、ほんの少し言葉の順番や表現を変えるだけで、相手の表情がやわらぎ、関係が変わることもあります。

私が長年取り組んできたのは、そうした「伝わり方の違い」を見える形にすることでした。

父が認知症になったとき


実父と一緒に(病院で「医療安全のためのコミュニケーション研修」の登壇時に撮影)

約10年前、一人暮らしをしていた高齢の父が、認知症になりました。

当時の父は、要介護3レベルの状態でした。

娘として、私は大きな不安を感じました。
これからどう支えていけばいいのか。
どんな言葉をかければいいのか。
何をしてあげることが、父にとって本当に助けになるのか。

そのとき、私は自分が考案してきたメソッドを、父との会話に使ってみました。

父の性格に合った声がけをする。
父が安心しやすい言葉を選ぶ。
父が受け取りやすい順番で伝える。
否定ではなく、父の気持ちに沿って話す。
こちらの正しさを押しつけるのではなく、父に届く言葉を探す。

すると、父の状態に変化が見られるようになりました。

もちろん、会話だけですべてが解決するわけではありません。
医療や介護、生活環境、周囲の支えも大切です。

けれど私は、その経験を通して、会話の力を強く実感しました。

父は、要介護3レベルから、要支援1まで改善しました。

そのとき私は、心から思いました。
人に合った声がけには、これほど大きな力があるのだと。

その後、父は享年87歳で旅立ちましたが、
父との日々は、私に「会話には人を支える力がある」ということを教えてくれました。

この経験を、もっと多くの人に届けたいと思った

高齢の親を持つ人は、全国にたくさんいます。

認知症の親にどう声をかければいいかわからない。
つい強く言ってしまう。
何度も同じことを聞かれて疲れてしまう。

良かれと思って言った言葉が、相手を不安にさせてしまう。
親のためにしているのに、親子関係が苦しくなってしまう。

そうした悩みを抱えている人は、少なくありません。

私は、自分の経験を通して、相手に合った声がけを知ることが、
介護する人にとっても、介護される人にとっても、
大きな助けになると感じました。

だから、この考え方を世の中に広めたいと思いました。

けれど、実際に広めようとしてみると、簡単ではありませんでした。

「同じ話を何度も何度も繰り返す」
「話し始めると、話が長い」
「時間がない」

40、50代の働き盛りの子どもたちは、
高齢の親にしっかり向き合う余裕がないのが現実です。
そういう私もそうだったのですから。。。

「性格に合わせると言われても、どうすればいいのかわからない」
「忙しい介護の現場で、一人ひとりに合わせる余裕はない」
「家族だからこそ、冷静に対応できない」

などの壁がありました。

人に合った声がけが大切だと頭ではわかっても、
それを日常の中で実践するのは簡単ではありません。

相手の性格を理解すること。
その人に合った言葉を選ぶこと。
状況に応じて言い方を変えること。
疲れているときにも、それを続けること。

これは、人間だけで担うには、とても大変なことです。

AIなら、できるかもしれない

そこで私は、あることを考えるようになりました。

AIに性格統計学を覚えさせることができれば、
高齢者にも寄り添った会話ができるのではないか。

AIやロボットは、24時間いつでも話を聞いてくれる。
何度、同じことを繰り返し話しても、根気よく聞いてくれる。
本人が嬉しい言葉で応答してくれる。
自分のことをわかってくれる。

そんなAIがあれば、人と人との関係を支えることができるのではないか。

これが、私がAIに興味を持った大きなきっかけでした。
当時のAIは、まだまだ発展途上で
到底私が考えていることは夢のまた夢の段階でした。

けれども実現したいことのイメージは明確でした。

ユーザの性格に最適化した対話AIが完成

その9年後の2024年、
ChatGPTと連携した対話AIが形になりました。
ロボットはユカイ工学が開発したBOCCO emo。
性格統計学に基づいて、ユーザーに合わせて話し方を最適化する対話AIの誕生でした。

サービス名は、AI見守り対話サービス「MaMo.」(マモ)。

MaMo.は、BOCCO emoをとおしておしゃべりできる仕組み

それまで道のりは甘くはありませんでした。
技術の壁もありました。
資金の問題もありました。
理解されない苦しさもありました。

それでも、私はこのテーマを手放すことができませんでした。
なぜなら、父との経験を通して、
会話が人を支える力を知っていたからです。

ちなみに、この9年間のエピソードは改めてお話しさせていただきますね。
語れば、あまりに紆余曲折がありすぎるので。。。

大阪・関西万博に出展

そして2025年には、大阪・関西万博にも出展することができました。
さらにNHKの全国放送でも「シニアとAI」というテーマで特集されました。

父との会話から始まった問いが、10年かけて社会に向けて形になった瞬間でした。

「AI制御層」との出会い

世界では、AIの巨大なモデルをつくる競争が進んでいます。
ChatGPTやGeminiをはじめとする
AIモデルを賢く速くする競争でしのぎを削っています。

当時2024年、
私は、性格タイプ別に最適化した会話ができる対話AIを開発する段階で、
ある重要なことに気づきました。

ChatGPTやGeminiなどのモデルに膨大な知識を学ばせることはしても、
私が考案した「性格統計学」のメソッドを個別に学ばせることはできない、
ということ。

月額20ドルで契約したChatGPTは、自然に会話できるのに、
自分でChatGPTのAPIを契約して、自社で対話AIを開発しようとすると、
全然自然に話してくれない。

えっ?どういうこと?
それじゃあ、昔のAIと同じってこと?

何か新しいことにチャレンジするときは、
困難がつきものなのはわかってはいるけど、
衝撃でした。またか。。。

でも、その中に大きなチャンスが隠れていたのです。

数ヶ月後に私は、「AI制御層」という存在に気づきます。

AIモデルそのものを賢くするだけではなく、
AIにどの情報を渡し、どのルールで考えさせ、
どのようにその人に合った言葉として届けるのか。

そこに、日本のAIの可能性があるのではないか。

長くなってしまいましたが、この話はまだまだ続きます。
更新していきますので、お読みいただけますと幸いです。


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